誇れる相棒
ー トビー視点 ー
ギデオンさんから、クロエの「報告石」による報告内容を聞かされた俺は、居ても立っても居られず、東都市の大門前で二人の帰りを待機することにした。
今回のクエストで対峙したのは、『人質スライム』という精神攻撃を仕掛けてくるモンスターだったらしい。
それをツバキが単独で討伐したとのことだが……戦闘での外傷はなくても、あの真っ直ぐすぎる彼女が精神的なダメージを負っていないか、心配だった。
門の前を落ち着きなくウロウロしていると、街道の向こうから二人を乗せた馬車が向かってくるのが見えた。
「おーい!」
俺は大きく手を振り、二人を出迎える。
馬車から降りてきた二人の荷物を預かりながら、任務の疲れを労う。
……やはり、ツバキの様子がおかしい。いつものように「おっさん!」と騒ぎ立てることもなく、うつむき加減でひどく元気がない。
「かなり厳しいモンスターが相手だったと聞いた。でも、よく全員生還させたな!」
俺は少しでも元気づけようと、何の気なしにツバキの頭をポンポンと撫でてしまった。
「……っ!」
ツバキがビクッと肩を跳ねさせ、驚いたようにバッと後ずさる。
(あ、やっちまった。子ども扱いして怒らせたか?)
俺が身構えた瞬間、ツバキは自分の頭を両手で押さえながら、こちらを睨みつけて早口で捲し立ててきた。
「お、おっさんに教えて貰った通りにやったのに……! 誰も死なないように、アタシが全部斬ったのに、また『バケモノ』扱いされたぞ! おっさんの嘘つきっ!!」
俺がクロエに視線を向けると、彼女が小さくため息をつき、西都市で起きた顛末をかいつまんで説明してくれた。
なるほど。それで、こんな変な時間に追い出されるように帰ってきたのか。
「……まぁ、ツバキは間違ってないさ。君が泥を被ってくれたおかげで、西都市の連中は生きて帰れた訳だしな」
俺の言葉に、ツバキはまだ納得がいかないように口を尖らせる。
「でも、レオ……ピカピカ男には、凄い怒られたぞ。あいつが間違ってたのか?」
――言いかけた名前を、咄嗟に飲み込んだ。
名前を覚えるのが苦手なこいつが、一度はちゃんと名前を呼ぼうとしたのだと察した。それを拒絶された傷の深さが透けて見えて、俺は胸が痛くなった。
「そういう訳でもない。レオンハードさんも、お前と同じくらい必死だったんだ。……どっちも正しかったよ。だから、二人とも傷ついたんだ」
俺が静かにそう言うと、ツバキは理解できないというように難しそうな顔をした。
「ハッキリしないおっさんだな。……それに、アタシは傷ついてなんかいない!」
「ああ、そういうことにしておこう」
強がるツバキに、俺はもう一度だけ、今度はしっかりと目を見て伝えた。
「誰に何と言われようが、皆を生きて帰らせたツバキを、俺は誇りに思うよ」
「…………そうかよ」
ツバキは耳の先を少しだけ赤くして、ぷいっとそっぽを向いてしまった。
けれど、その背中は馬車から降りてきた時よりも、ほんの少しだけ緊張が解けているように見えた。
「改めて、おかえりなさい。二人とも」
東都市の夕暮れの中、俺は二人の帰還を心から歓迎した。




