表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東の狂犬は、万年Eランクにしか懐かない  作者: 揚げ太郎
【第2章】バケモノと呼ばれた少女
17/28

赤い地獄の産声

ー レオンハード視点 ー

一晩経って、私もだいぶ冷静さを取り戻していた。

昨夜はつい声を荒らげてしまったが、ツバキ殿も現実的な可能性として「すでに皆が死んでいる」という事実を提示しただけなのだ。

もちろん、そのような最悪の事態もリーダーとして覚悟せねばならないのだろう。それでも……私は最後まで、彼らが生きている可能性に賭けたい。

調査クエストの集合場所に集まった冒険者たちを見渡す。

ツバキ殿も、遅れることなく来てくれているようだ。

「それでは、これより消失した村の調査を開始する。変異種との対峙も想定される。皆、気を引き締めて臨んでくれ!」

数組のパーティに分かれ、森の奥へと歩を進める。

私たちのパーティは、ボウマン、セリア、そしてツバキ殿を加えた4人の戦闘特化編成とした。

村が近づいてきた道中、街道を塞ぐように群れる大量のスライムを発見した。

村の周辺にいてもおかしくない低級モンスターだが、いかんせん数が異常だ。念のため、我々のパーティが先行して対処することとした。

ボウマンが強固な盾で敵のヘイトを集め、私がメインアタッカーとして敵の数を減らしていく。セリアは後方からバフ・デバフの魔法で戦況をコントロールし、私の剣に属性付与のアシストを行ってくれる。これが我々の基本戦術だ。

今回は、そこにツバキ殿の遊撃が加わっている。

(……しかし、ツバキ殿は本当に強いな)

恐ろしいまでの速度と、正確無比な剣の技量。実際に背中を預けてみて、その異常なまでの戦闘能力を肌で感じた。

スライムの大群は、数が多いという以外はおかしな点もなく、我々は難なくこれを殲滅した。

村まで間もなくという所で、念のため短い休憩を挟むことにした。

剣の血を拭っていると、ツバキ殿が目を輝かせてこちらへ近づいてきた。

「お前ら、口だけじゃなくて本当に強いんだな! アタシびっくりしたぞ!」

その裏表のない素直な称賛に、私は思わず目を丸くした。

「ボウマンが前に立ってくれるおかげで、敵の動きが凄く把握しやすいな! セリアの魔法もすごい! 補助魔法があるのとないのとじゃ、あんなに違うんだな! レオンハードの剣も流石の強さだ!」

さらに驚いたことに、彼女はあれほど覚えようとしなかった私たちの名前を、ハッキリと口にしたのだ。

「ツバキ殿……ようやく、私たちの名前を覚えてくれたんだね」

「ああ! アタシは、強い戦士の名前はちゃんと覚えられるんだ!」

屈託のない笑顔で胸を張る彼女を見て、私は自然と頬が緩むのを感じた。

昨夜は、彼女とは一生理解し合えないかもしれないと絶望しかけたが、そんなことはない。彼女はただ、戦士として不器用で頑固なところがあるだけなのだ。そう思い直した。

やがて、目的の村に到着した。

――だが、人の気配が全くない。

それどころか、肌にまとわりつくような異様な雰囲気を感じる。モンスターの気配か?

耳を澄ますと、微かに『人のうめき声』のようなものが聞こえてきた。

「……生存者がいるかもしれない!」

私は希望を胸に、気配のする広場の方へと駆け出した。

しかし、そこに生存者は一人もいなかった。

広場の中央に陣取っていたのは、巨大な一匹の『スライム』だった。

だが、普通のスライムとは全く異なる。その半透明な身体は、おびただしい血を吸ったように真っ赤に染まっていた。

そして何よりおぞましいのは、その蠢く赤い粘液の中に、生きているのか死んでいるのかすら分からない『何人もの人間』がドロドロに溶けかけながら取り込まれていたことだ。

「あ……あぁ……たす、け……」

村に響いていたうめき声。

それは生存者の声ではなく、スライムの体内で消化されかけている人間たちが発する、悲鳴にも似た『鳴き声』だったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ