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東の狂犬は、万年Eランクにしか懐かない  作者: 揚げ太郎
【第2章】バケモノと呼ばれた少女
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西都市からの要請と、不機嫌な案内人

ツバキとコンビを組むことになり、早数ヶ月。

行動を共にする中で、この規格外の少女について色々と分かったことがある。

まず第一に、結構おしゃべりである。

俺の名前すら覚えず、口を開けば人の神経を逆撫でする癖に、妙によく話しかけてくるのだ。

「なぁ〜、おっさんは何処の辺に住んでるんだ?」

「……いい加減、トビーって名前覚えろよ。ギルドから徒歩圏内の、冒険者向けエリアの借家に住んでいるよ」

「おー! あのボロい家が並んでるエリアか! おっさんに丁度いいな!」

本当に、常に一言余計である。

第二に、根は真面目である。

戦闘狂の彼女のことだ、どうせ雑用クエストなんてすぐに音を上げて放り出すだろうと思っていたが、意外にもサボることなく継続してこなしている。

黙っていれば結構な美少女であるツバキが手伝いに来ると、街の依頼人も心なしか悪い顔はしない。どいつもこいつも現金なやつらだ。

そして第三に、甘いものが好物らしい。

「おっさん、この街に甘味屋ってないのか?」

「……その質問、何回目だよ。甘味は贅沢品だ。貧乏冒険者の俺が食べることはほぼないから知らん」

「ちぇっ! 疲れた時に甘味が欲しいんだけどな〜」

「クロエに聞けよ。ギルド職員はそれなりに稼いでるから知ってると思うぞ。たまに美味そうな菓子を食べてるの見るし」

「…………別に、そこまで欲しくないからいい」

――どうやら、クロエのことが心底苦手らしい。

ある日、俺はギデオンさんにツバキと一緒に呼び出された。

ギルド長室に入ると、そこにはクロエも居た。

「トビー、ツバキ。時間をとらせて悪いな! さっそく本題なんだが、西都市からツバキを派遣してほしいとの要請を受けているんだ」

「西都市? あの、エリート冒険者が集まるエリアからですか?」

「その通りだ。どうやら変異種モンスターが関わっていそうな案件でな。オークの変異種を単独討伐したツバキに、ぜひ助力を願いたいそうだ」

それを聞いたツバキはパァッと明るい顔になり、フンスと得意げに腕を組んだ。

「西都市のやつらは分かってるな! 仕方ない! アタシが手を貸してやろう!」

相変わらず調子に乗りやすいやつだ。

しかし、俺には一つ疑問があった。

「あの、俺がここに呼ばれた理由はなんですか? 西都市に行ける冒険者は、最低でもCランク以上って決まりが……」

俺の問いに、ギデオンさんが苦い顔をする。

「その通りだ。私個人としては、ツバキのストッパーとしてトビーについて行って貰いたかったんだが……やはり西都市への派遣となると、Cランク以下の同行は許可が下りなくてな」

(あ、やっぱり)

「トビーにお願いしたいのは、出発までの間に、ツバキへ『パーティ行動の基本』をレクチャーして欲しいのだ。つけ焼き刃とは言え、やらないよりかはマシと思ってな」

なるほどなぁ。

そりゃあ、今の協調性ゼロのツバキをエリート集団の西都市に放り込むのは、ギルド長としても不安しかないだろう。

「いつも面倒なことを押しつけてすまない」

ギデオンさんにそう深く頭を下げられてしまっては、俺も断れない。ツバキへのレクチャーを了承した。

「そして、西都市までのツバキの案内人は……クロエに行ってもらう」

「げっ……!」

咄嗟に出たツバキの悲鳴に、クロエがジトッとした冷たい目を向ける。

「よろしくね。お侍さん。……道中で、また誰かを置いてけぼりにしないようにお願いするわ」

「うっ……」

室内に流れる、極寒の冷ややかな空気。

ギデオンさんが、こめかみを抑えている。

「……と、とりあえず! 派遣日までの1週間でレクチャーできることはやってみます。ツバキ、行こう」

俺もこのいたたまれない空気に耐えきれず、ツバキの首根っこを掴んでそそくさと退散するのであった。

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