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退魔の英雄  作者: 明太子
外界之魔陰
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66 真の事

毎日投稿十三日目。

最近「空の境界」を久々に読み返したんですけど、やっぱりきのこ先生凄い......


では楽しんでください!!

 夏休みに登校する。と言う行為に鬼川祐は慣れていた。別に休みのない運動部に、属している訳では無い。

 決定的な理由を立てるとすれば、補習と言う二文字に帰結する。

 私服姿の祐と時雨は、黒の中に溢れた二つの白点であった。存在自体が異常であり、決して黒には成れない。

「──────虎丸居るかぁ?」

ガラリと扉を引いた祐は、開口一番に虎丸涼を呼ぶ。

 夏休みであり、部活中と言う二重条件の元に残った教師はくるりと目を返す。

「何だ鬼川か。お前夏休みだからって私服で来るなって何度言えばわかる!?」

頭髪の薄い数学教諭は、結露に塗れたグラス片手にそう諭す。しかしながらそれを強制するような言葉は口にしない。何せしたところで意味がない事を、彼は重々理解しているからだ。

「なぁ先生。虎丸知らねぇか?」

「涼"先生"だ!!.....ったく礼儀も知らんのかお前は。──────涼先生は今パソコン室で情報の補習をしてる。用が在るならそっちに迎え」

聞き分けのない子供を、ほっぽるように手を払う。そう、と祐は小さく呟き戸を閉めた。

 

 廊下を叩く上靴の音は、軽快に反響する。足幅の違う二つのそれは、二重音声の様であった。

「どうして彼女に会いに行くんですか?監視カメラの映像は意味が無いと言っていたじゃありませんか?」

遅れて時雨は首を傾げ、そう祐に問う。途端くるりと祐は踵を返す。

「そりゃ監視カメラの映像を見に行くためだよ」

「──────ですから。それは意味がないのでは?」

意図を理解できないその発言に、時雨は眉を顰めた。

 意味がないモノと理解しておきながら、その意味のないモノを見る。

 余りに意味がなく、余りに不必要な行動。だが祐はそこに意味を見出していた。


 補習を受ける人間は、相も変わらずのメンツであった。

 金髪、ピアス、煙草、酒、パチンコ。とこの街の技術力の前ですら反抗するような、単なる不良の集まり。

「大西。虎丸居るか?」

そんな不良の頂点らしい、大柄の男に祐は平然と声を掛ける。

 あぁ。と明らか返事とは思えない、威嚇紛いのそれと共に大西は振り返った。ひらりと祐が手を振ると、大西は途端に貌を和らげる。

「おぉ!!鬼川じゃねぇか。久々だな.....今年は補習を免れたんだってな。あぁ涼さんなら、あそこで寝てるぜ」

教室の奥側を指すと、大西はけたりと口角を上げる。

 自習。と大々的に書かれた黒板の下。まるで死に体と化した虎丸涼が、鼻提灯を引っさげて気絶していた。

「おーーーい虎丸。起きろーーー」

恐らく一日は風呂に入っていないような、しっとりとした頭に手を乗せる。指を立てシャンプーを泡立てるような、細かな運動を繰り返すと漸くに虎丸は反応を示した。

「.......何だ?質問なら、機会にしろって言っただろうが......こっちは寝不足なんだ。頼むから寝かせて.....何で鬼川がここに?」

輪郭が不明瞭に揺らぐ世界で虎丸は、白髪と言う情報だけで祐を判別した。よう、と手を上げると彼女は獣のような欠伸をする。

「ちょっと見せてもらいたいモノが在ってね。いきなりだけど、この街の監視カメラってハッキング出来る?」

「お前は私を犯罪者にするつもりか?」

いいやと、祐は笑いながらに首を振った。

 眠たげな顔とは裏腹に、身体が勝手に動くように虎丸はキーボードを叩く。その姿は電源の入った機械の様であった。

 本調子ではないような虎丸だが、数秒の操作の後画面は無数の映像を映しだす。等分された画面の一つ一つの映像は、俯瞰風景のようである。

「はい。──────それで何処のが見たいんだ?女風呂とか言うならすぐ消すけど」

「相変わらずとんでもないな....えぇっと十三番街の二十三地区にある小通り頼むよ」

言葉の最中だというのに、虎丸の指は動き続け祐が口を閉じたと同時エンターキーを叩く。六十四等分されていた映像は一気に四つへ減る。

 最早驚くことを辞めた祐はその画面を睨んだ。

 先程まで居た風景と一致する、最適なそれを選別する為。

「........これ頼む」

右下のそれを指さすと彼女はカーソルを気だるげに合わせた。画面を覆い尽くす映像の中には、当然の如く日常が投影されている。

「それでこれを見て何がしたいんだお前は?」

欠伸紛いの質問を前にして祐は黙り込む。呆れたように虎丸は時雨に、視線を移す。だが時雨はお手上げと言わんばかりに首を傾ける。

「二日前の朝二時あたりに映像を戻して欲しい」

「はぁぁぁ.....はいはい」

祐に負けず劣らずの溜息を残す。彼女は再びキーボードを叩く。

 一時画面が鏡と化すと、夜間の映像が映し出される。右上には七月十一日、二時零分と刻まれる。

 学生以外が活動を主とする商店街と言えど、人通りは無かった。音のない映像だというのにその静謐振りが伝わってくるほどである。

 右上の時間だけが進む中、画像の様に映像は変化を見せない。

「これじゃ私の気が参るからちょっと八倍速にさせてもらうぞ」

操作を終えたのかすら分からない映像の不変ぶりは気味が悪かった。

 



 ──────それは突然に起こった。



 晴天の霹靂にさえ勝るような気味の悪さ。校舎の中の私服以上の異常。

「──────おいおい。寝起きに何てモノを見せるだ鬼川」

震えるよな虎丸の声。息を呑む時雨の音。それは殆ど同時に起こり、同時に静まった。

「まさかここまでドンピシャとは俺も思わなかったよ」

画面の風景は変わらない。ただ異常な物体が画面の中央を占めていた。

 斬り堕とされた腕。

 斬り堕とされた脚。

 斬り堕とされた首。

 本来の定位置を放棄した臓器。

 本来の定位置を放棄した多量の血液。

 その物体は人間であったモノであり。材料だけを見てカレーと言えない様、それは人間ではなかった。

「こりゃ巷で有名な怪事件って奴か?」

「いや違うよ虎丸──────これは恣意的かつ人為的に起こされた。ただの殺人だよ」

祐はモニターのケーブルを抜く。画面は低質な鏡へと変わった。

 くるりと踵を返し、祐は背中越しに手を振るう。

「すまなかったな虎丸。あんなモノ見せちまって......あとサンキュウな」

前の扉を開き祐は、場所を後にする。


 二人で歩く廊下は先程以上の静寂を纏っていた。

 足音と吹奏楽のそれだけが二人の鼓膜を刺激する。

「祐は分かっていたんですか?あの映像が現れることを」

「いや殆ど賭けに近かったよ。もしかしたら出るかもな。っていう程度のね──────けどどうやら俺は運が良いらしい。一発で当たりを引けた」

まんざらでもないような台詞を吐き捨てると、祐は小さく息を吐く。

 だというのにそれは静謐を容易に割って見せた。

「これで噂は解消できたね。相手は間違いなく人間であり、魔術師であると」

祐は嬉々として頬を上げた。眼は薄く引き伸び、不気味に嗤っている。

「そして犯人は、殺しに快楽を求めていると」




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初見でしたら第零話から読んでもらえると助かります。

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