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だれも悪者にしない

「これ以上手に負えません」


医療チームが諦めたその時、


「んなわけない......蘇生術があるじゃないですか」


医療班はピクリとする。


蘇生術があることを知っているのは治癒術を使えるごく一部の人間のみ。

そのごく一部の人間も、蘇生方法を完全に同意できないため、たとえ仲間が危機的状況でもその言葉を発することはなかった。


「それはそうですが、だからと言って今回できるわけではありません」


この言葉で一時は取り乱した憂斗も、落ち着きを取り戻した。


「はぁ、そうですよね......そんなこと分かってます。でも、蘇生方法はあるのに華椰葉が死ぬだなんて......」



昨日の医師の見解だと、華椰葉は事務員を庇ったらしい。

多分事務員はそのとき既に死んでいたのに、どういう理由かわからないが庇ったって言っていた。

そうでもないと、華椰葉がやられるわけない。

だからその"庇った"っていう言葉で、華椰葉の怪我に納得がいった。



そのとき、

急いで駆けつけた朝霧先生と泊が部屋に入ってきた。

「華椰葉......」


ついこの間までは笑顔で笑いかけてくれていたのに。

静かになった部屋で皆立ち尽くした。


朝霧先生は華椰葉の手を握りしめた。






「おい、華椰葉は本当に死んだのか?」


「先生、お辛いですがその事実を受け止めるしかないんです」

真面目なことを言う泊。


「いや、脈がある」


先生の思い違いだろうとその言葉を聞いて泊は更に辛い顔をした。

しかし憂斗は違った。

少しの希望を信じるかのように華椰葉の脈を感じるために手首を掴んだ。


「っ!」


憂斗は目を大きく見開き、

「脈がある! ゆっくりだけど確実に続く脈が」


するとベッドサイドモニタは動き始めた。


「これはもしや」




すると、






「あれ、みんな......先生も。どうしたんですか」






華椰葉の意識が戻った。




真っ先に抱きしめたのは憂斗だった。

「ありがとう、戻ってきてくれて本当にありがとう」

声を震わせながら想いを伝える。


嬉しそうにその姿を見る朝霧先生と、驚いて魂が抜けている泊がいる。


「ゔっ、ちょっと苦しい......」


「あ、ごめん。」


「ううん、私、どのくらい気失ってた?」


「気失ったどころか一回死んだよ、華椰葉は」


「ちょっと先生! 目覚めたばかりの華椰葉には衝撃的すぎですよ」

「あーすまない」




すると華椰葉が考え込み、


「自己治癒術を......"死"においても応用できたってこと...ですか?」


と質問をした。




「あぁ、そうだな珍しいよ。というより初めてだ。これは今ここにいる私たちしか知らない。どうなっているかわかるまで秘密にしておけ。医療チームも元日からありがとう。今日はもう帰って大丈夫だ」


そう言うと彼らは一礼をして部屋を出た。

すると憂斗は彼らを追いかけるように急いで外に出る。


「あの! さっきは蘇生術のことを安易に口に出して申し訳ありませんでした。確かにあなたたちがいないとこの忍術界は成り立たないのに......あの時蘇生術は得策ではなかったのかもしれません」


「憂斗さん、こちらもお力になれずすみませんでした。私たちも華椰葉さんのことを助けたい気持ちでいっぱいのはずなのに、自分たちが忍者でなくなることが怖くて踏み込めませんでした。自己治癒術の訓練であんなに私たちに優しくしてくださっていたのに......」


その言葉を聞いて華椰葉の優しさを誇らしく思った。

あの時死なずに帰ってきてくれたことによって、俺自身も医療チームも誰ひとり悪者になることはなかった。


「さすがだなぁ」


ガラガラ


「どこ行ってたんだ」

「ちょっと話してただけです」



「それにしても、自己治癒で蘇るのは驚きだ」


「まさか、私もこんなことができるなんて思いもしませんでした」


「でも、次もこれを必ずできるとは言い切れない。だから気を抜かないように。そして、まずは死なないように訓練をもっと積んだ方がいいだろう」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



1月4日


「先生! なんで華椰の目が覚めたのに連絡一つくれなかったんですか!」


新年初めの授業からみゆりが怒っていた。


「あぁ、すまない! こっちも嬉しくてそんな暇がなかった」


「これだから朝霧先生は」





華椰葉はその日の午後に父親に呼ばれて実家に帰っていた


「この間の任務内容の報告かなぁ」





「久しぶりだな、華椰葉」


「お久しぶりです。お父さん」


「今日呼んだ理由はわかっているだろうが、先日の件の報告を頼む」


「はい。伊賀家と一色家の関係性についてですが、私は伊賀家への侵入に失敗したので資料の確認はできませんでした」


「なんだと! なにも知らないのにここに来たというのか!」


「いいえ、そこである情報を手に入れました」


「はぁ、さっさと言え」


「一色家は元々忍術の家系だったそうです。これはお父さんも知らないはずですから遠い昔の話でしょう」


父親は少し考えつつ、

「だから伊賀家と何かしらの関係があってもおかしくないということか」


「はい。ひとつ聞きたいことがあるのですが、なぜお父さんはこのような調査を私に課したのですか」


悩む様子もなく、

「それは言えない」


「わかりました。あと、もうひとつ。一色家には忍術無効化を使える女性がその時代にもいたらしいです」


その言葉を言った途端、

父親はハッとした顔をした。


「その情報はどこからだ」


「こちらも先程と同じ情報源です」


「その情報に信ぴょう性はあるのか」

「はい」


「......そう言い切るのならばわかった」


何がわかったというのだろうか。


「報告は以上です。では」


部屋を出ようとした途端


「待て、華椰葉」


「何でしょう」






「忍術学校をやめなさい」





それはあまりにも突然だった。


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