運命なんだ
「え?」聞き返すタカヒロ
「昨日のお昼に、退院されましたよ。」
「退院・・・ですか?
元気になったって事、ですよね? 」
「そうです。数値も安定されていたし後はお薬を飲んで貰うくらいでしたし、、
最後 会われなかったんですか? 」
「いや、四日前に伝言を書きまして・・・
返事がその、珍しく来なかったもので、具合が悪いのかと気になりまして。」
「四日前、、 えぇ確かに預かりました 」
新人ナースと美山は俯いた
「美山さん 渡してくれたのよね? 」
「.....」
「美山さん?あの伝言をあの日に頼みましたよね?」 美山に確認をする
「ああごめんなさい山村さん 会議があって美山に頼んだもので。」と婦長は隆の方を向き、そう告げた
「美山さん、あれから広沢さんから預かってないわよね?」
「あのー、申し訳ありません。忘れてまして
その、、、 」美山が口を開いた
続けて新人のナースが横から言う
「あの、私 片付けをしまして分からずにその、 たぶん伝言の紙を シュレッダーにかけてしまったみたいで
申し訳ありません。」
「え!どうして報告をしてくれなかったの? 」婦長は驚いた
そして隆が呟く
「だから返事が来ねえ訳だ。」
タカヒロが興奮気味に言った
「酷くないですか?無責任じゃないですか!」
「山村さん申し訳ありません。 私が預かっていながら私が悪いんです。」深々と婦長は頭を下げた
隆は再び口を開く
「いや 忙しいのに頼んだ俺が一番悪いんですよ。
だから婦長さん、若い看護婦さんたちを叱らないでやって下さい
こんなジジイの伝言ゲームに付き合って下さっただけでも有り難いですよ。
・・・タカヒロ行くぞ」
隆はタカヒロの腕を持ち軽く会釈をした後、受付に背中を向けた
「待って!!」
タカヒロは腕を振り払った
「広沢さん、、 広沢律子さんの住所教えて下さい! 」
「タカヒロいいんだ。いいんだよ 」
「山村さん ごめんなさい
個人情報なので、、教えられないんです」
「は?あんたらのせいで会えなくなったんだろ?責任取れよ!」
タカヒロの荒っぽい言葉を初めて聞く隆
「タカヒロ!目上の人にそんな口を利くんじゃねえ!! 」
隆の低い声が大きく響いた
婦長が申し訳なさそうに答える
「広沢さんの了解を得る事が出来れば 住所は教えられます
私から広沢さんに連絡しましょうか?」
隆は言う
「結構です
すいません。 ほんと迷惑かけちまった。
失礼します 」
タカヒロは 納得出来ないでいた。
「じいちゃんなんで?教えて貰わないと会えないじゃん」
隆は一人、エレベーターに向かう
追いかけるようにタカヒロも渋々、付いて行く
「なんで?」半泣きになるタカヒロだった。
「ずっと逢いたかったんだろ!」
「タカヒロ、きっとな運命だ。
お前が律子と会ったのも運命なら 、
俺が律子と再び繋がれたのも運命だ。
だが、こうして会えないのもそれも、また運命なんだ
俺らはもう会っちゃいけないんだろ。
会ってしまうと俺はどうなるかわかんねえ
心臓がドキドキして 死ぬかもしれねえんだ。」
少し笑いながら話してみる
「もう少し生きたいからな俺は。
、、だからもういいんだ。」
「僕はじいちゃんから、そしてりっちゃんから昔の事を聞いた。聞きながら何度も泣きそうになった。
だからこそ、このままなんて絶対ダメだ。
会わないほうが良いに決まってるなんて誰が決めたんだよ!じいちゃんが自分で決めてしまったら本当に二度と会えなくなるよ!
・・・・・・」言葉に詰まるタカヒロだった。
「タカヒロ、ありがとな。お前の言うとおりかもしれねえ。分かった。
ただ今はな、、どうして良いか正直わからねえ。今はなー。」