若葉の頃<7>
「軽音学部の皆さん 体育館に集まって下さい 」
放送が入る
当日リハーサルだった
楽器のチューニングの関係で軽音部は当日のリハーサルとなった
「15分ですので 時間厳守でお願いします。」 部長の律子に言う
______________リハーサルが始まり
それぞれの楽器のチューニングも終る
「じゃ、 軽く通しと、繋ぎ部分メインで行くわね。」 律子がメンバーに告げた
隆は軽く下野を見るが、下野は下を向いたのだ。
隆は無表情でリハーサルに集中し、
下野は律子の言う通り通常のテンポで通した
そして、問題なくリハーサルは終了した 。
下野が隆に近付く
「隆、あのさ、、」申し訳なさそうな表情の下野
「分かってるよ。 今のがお前の答だろ
気にするな。」
「・・・かあちゃん来てて。初めてなんだ 俺の為に来るなんて 今迄になくてよ。
出来ねぇんだ。
悪い、、 隆、 やっぱヤバいんじゃないかと、、 」
「そうだな。
お前の言う通りだ。かあちゃんを泣かしたらダメだよな。」
下野は隆の返事に少しだけホッとした
「隆! 本番頑張ろうぜ! 」
下野は右拳を突き出した。
隆は左手でギターを抱えると右手はポケットにしまった
「後でな!」笑顔で隆はそう言うと、下野に背を向けた
下野は唇を噛み締め、項垂れた
二人の様子を少し離れたとこから見ていた律子。
下野の方へ律子が近付きこう言った
「下野、ちょっとつきあって!」 「え?」
律子は体育館横の水道の所へ下野を連れて行く
「そこにバケツあるでしょ。それに水汲んで。」
「え?」
「いいから、早く!」 「う、うん」律子の言うがまま下野は蛇口をひねる
勢いよく水が出で、バケツはあっと言う間に一杯になる。
「それ、頭から被んなさい。半分残して。」
「え?なんだよ。正気かよ?もうすぐ本番だぜ?びしょ濡れになっちまうよ。」
「あんたね、男でしょ?約束を守れない事に落ち込んだりさ、隆に遠慮したりさ、そんな気持ちでライブが成功すると思ってんの?ドラムはバンドの要なんだよ!あんたのリズムが気持ちで狂ったら大変なのよ。
頭、冷やしなさいって言ってんの。」
「けど・・・・」
「私が先にやるわよ。」律子はそう言うとバケツを持ち頭から半分だけ水を被った。
衣装のTシャツも綺麗に結ったポニーテールもびしょ濡れになった
「りっちゃん・・・・ わかった。」律子の半端ない行動にビックリした下野だった。そして
下野も続いて頭から残り半分のバケツの水を被る
バシャッ!
「うわっ パンツまでいっちまった・・けど、なんかスッキリしたかも。気持ちいいや!」
「結構濡れたわね。」律子は下野のTシャツの裾を優しく絞ってやる
自分のTシャツも軽く絞ると
「今日は暑くなるし大丈夫よ。・・・悔いの残らないように・・やろ!ね!
じゃ出番は11時45分。宜しく!」
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メンバーが二人を見て驚く
「どうしたんだお前ら?」
「華道部の子とぶつかった~」律子は答えを用意していたかのようにすんなりと答える
下野は 慌てて「そ、そう、花もバラバラになって大変だったよな~」と合わす
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各クラスの展示物にも人が増え始め、外の模擬店も賑わって来た
「ご来場の皆様へ お知らせ致します。9時30分より体育館にて、2年生、演劇部、バトン部、軽音楽部によります舞台が始まります。2部は軽音楽部、3年生の舞台が始まります。体育館へお越し下さい。」
体育館には暗幕が張られ、人の熱気でムンムンとしていた。出し物が次々と進む
「次は軽音楽部の皆さんです。軽音楽コンクールでは優秀な成績を修められています。
では、お願いいたします<ビートルズ・メロディです!」
キュイ~ン エレキの歪む音が静かな体育館に鳴り響く
dadadadadadda!!!リッケンバッカーを抱えた律子とギブソン・レスポールの隆がダブルギターで入る
dododoo dododo!!!! 下野のドラムが続いて響く
「AH~O~~~!!!」ボーカルの河本が叫ぶ
「HUU!!HU!!!!」オーデイエンス3年生が立ち、そして叫び一瞬で会場が一つになる
一曲目の<Revolution>の選曲は見事に当たった
2年、一年も総立ちになり先生、保護者も手拍子をし体も揺れ出す
メンバー紹介を挟み曲が進むと同時に舞台もそして観客の熱も上がる
暗幕を引かれた暗い会場の中の スポットを浴びたメンバーは皆、表情も光っていた
ラストの曲が終わるとアンコールの手拍子が鳴り止まない
律子は舞台袖の生徒会会長に<お願い>のポーズをとる
生徒会会長は渋い顔をしながら時計を見ようとした
OKの返事を貰う前に
ドラムの下野が
スローテンポでたたき出す、
律子がテンポを聴きながら ある曲のサビのワンフレーズ弾き出した
律子のフレーズに続きキーボードがイントロ部分を弾いた
アイコンタクトだけで繋がる最高の仲間達
会場がざわめいた
<LET IT BE>だった
河本がマイクを掴み叫ぶ
「一緒に歌おうぜ! 」と
誰もが知るその歌はもちろん盛り上がりを見せた
共鳴し響き合う会場
オーディエンスである三年生は殆どが啜り泣いた 最後の文化祭、 思い出の詰まったこの会場、横にいる友
全てが揃いすぎているシチュエーション。
生徒会会長も渋い顔しながらも感動に浸っていた
しかしラストがせまる。緞帳を降ろす指示を出した
ところが緞帳係りが 手で大きくバツ印をする
会長が近寄る
「早く下ろせよ!」
「ダメなんです」
「は? 」
「広沢さんから<合図が入るまで幕は下ろすな>と 打ち合わせであって 、、、」
律子が事前に言っていたのだ
隆の今から行うであろう危険なサプライズの為に。____________




