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高校生がクラス召喚された!?でも俺だけ別ゲーだった。  作者: Rafale
第9章「シャングリラ作戦第3段階」
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第4話「ラストバトル」

第9章第4話「ラストバトル」

…………………


「お前とまじめにぶつかり合うのって、初めてじゃないか?」


「…確かにそうかもしれませんね。ただ__」


「ただ、なんだ?」


「お兄様が逃げていただけではないですかッ!」


 始まりは、定石通りの展開であった。今後赤の広場になりそうなデカい広場に陣取り、お互いの隙を探しつつ、どうでもよい会話をしながら初撃を探る。そいて、相手の隙を見つけた瞬間、スピード重視の高速発動術式を叩きつける。


 あわよくば、それだけで決めてしまおうという強い意図によって概念そのものが強化された一撃は___


「甘い!」


 __定石通りであるからこそ分かり切っている。余裕がある以上、防護ではなく回避を優先する。複合魔道戦闘術は魔術以外のあらゆるものを利用する流派。別に魔術しか使わないと入っていない。


「__な!?」


 ___バァキィィィンンン!!!


 例えば、スタングレネードとか。使えるものは何でも使う。それだけ魔術以外に頼れば魔力の消耗を抑え、継戦能力を高められるから。妹がいかに優れた戦闘魔術師であろうと、三半規管その他知覚器官がズタズタにされていれば立っていることすら難しい。このまま、HK416Cを構え、躊躇なく引き金をしぼる。


 __だが、流石に同年代最強の一角に立つ我が妹も複合魔道戦闘術の者と戦う意味を分かっていたらしい。条件発動型の真空シールドが空気圧で銃弾をはじいていく。


 ちきしょう。視界を塞いでも銃弾が通用しないとか遠中距離戦はほぼ不可能じゃないか……。





 あまりやりたくなかったが……。贅沢を言ってられる状況ではない。今はまだ、出鼻をぶん殴った影響で若干有利だが、ほっとけばどんどん追い詰められていく。……今やろう。



 残弾13発。……8発…5発…2発…リロード!


 弾倉にまだ1発残っているが気にせず、新しいマガジンをぶっさす。古いマガジンは地面に転がしておく。片手で射撃をしながら、スモークグレネードを手に取り、魔術で強化した歯でピンを抜き、投げつける。


「何!? 閃光の次は煙幕? そんなに姿を見せるのが恥ずかしいの? ばっかじゃない! 今度はこっちからよ!」


 散弾の様に拡散する8つの単純魔力弾が発砲炎を頼りに此方に打ち込まれた、最初から外れる軌道であったもの、ひねりとスライディングでもので何とか回避できたが、遅れてやってきた9つ目の単純魔力弾が地面すれすれを飛翔し、クリーンヒット。


「グアァァ!!」


 クッソ! こちらの戦闘パターンを呼んできている。ちくしょう。状況は悪くなる一方だ。覚悟を決めるしかない。ナノマシンに中枢神経系への干渉を指示、興奮物質をドバドバ放出させて、人為的にコンバットハイを作り出す。


「ハハ! ハハハァァァァ!!」


「やっば…。怒らせすぎたかも…」


 かみしめた下唇から滲む己が血の味かすら甘美に思えるほどに、繊維が高揚しているのがはっきりと自覚できる。これがナノマシンの力であるというのであれば、人間としての尊厳を捨て、ナノマシン投与手術を受けて本当に良かったと、心の底からあふれ出る感謝の気持ちでいっぱいだ。…たとえそれが、反乱防止コードという名の洗脳であっても。


 状況を確認しよう。まずこちらから。Hk416とMP7A2、SIG P320コンパクト。弾がHK416とMP7A2がそれぞれ3マガジンプラス1発。SIG P320コンパクトが2マガ+1発で合計203発だったが、HK416は1マガジンを使い切っている。残り173発。手榴弾がフラグとフラッシュが2発づつ。切り札のM34が1つ。それから、投げナイフが2振りとコンバットナイフ1振り。


 銃が効かない今、ただのおもりでしかない。銃が使えなくなった時に必要なのは、敵に向かって一歩踏み出す、ほんの少しの勇気だ。


「…ウォリァァ!!」


「…っな!?」


 頭の中で、何かがパチンと弾けた様な音がした。いわゆる『スイッチが入った』と言うモノだ。2振りの投げナイフを左右からフックの様に投げつけ、妹が迎撃・回避に全力を注いでいる隙に真正面から接近した。幸いにしていまだ煙幕弾の効果は続いていた。気流操作で煙幕を拡販しないように注意すれば比較的簡単に接近できる。


 目は口程に物を言うというが、格闘戦になると上級者ほど相手の目を見るようになる……。相手の目線の動きから、次の攻撃を予想しようと必死に目線を負うのだ。これは格闘技に限らず、サッカーのPKにおいてKPがどこを守るかを決める際にも有効だという。他にも、テニスやバレーなど、どこへボールを落とすかを相手の目の動きからとらえるのだという。


 ともかくそれだけ目の動きは重要なのだ。つまり、目線でうそをつけば、簡単にフェイントに引っかかる。これは上級者ほどひっかかかる格上殺しにもなりうるテクニックの一つだ。


 それを、やったが、フェイントにかからなかった。ここから導き出される答えはそれほどの技量やセンスがない事。或いは、フェイントに引っかかったうえで、間に合わせる事が出来るほどの反射神経を持っていること。そのどちらか。ここは一つ賭けて見ることとする。


「おりゃ! おりゃ!」


 上段(顔面)に2発。素早く打ち込み、ガードが上がったところで、中段(腹部)に1発。着弾の瞬間にねじ込むおまけつきだ。苦痛で顔をゆがめたのがよくわかる。すかさず追撃の一撃を顔面から首へと下がった左腕に強烈なストレートを叩き込み、骨にひびを入れる。


「グァァ!」


 ヤバい手首が! などと思っている暇はないぞ? そろそろやってくるであろう自暴自棄な反撃が来る前に半歩下がり、下段回し蹴りで横転を狙う。


 ……だが、器用にもその場でジャンプをし、回し蹴りを大縄跳びのごとく飛び越える。さらに、この一瞬で治療魔術を行使。けがを治したようだ。



 これで、状況は振り出しに…。いや、此方の手の内が若干とは言え、バレた以上は少し不利になったか。だが、2点。相対的にこちらが優位になった点がある。1つ目は銃という重しにしかならない余計なものを捨てたこと。2つ目はいくら魔術で直したとはいえ、ついさっきまで実際に負傷していたのだ、幻肢痛のような痛みが続く。むろん、痛みを無視するしかない。そして、いくらやられても居たくないという顔をする。だが、痛くないわけないし、痛みを無視したところでストレスがたまる。


 そう、ストレスがたまる。戦闘時はそれだけで高ストレスにさらされる。そこに痛みを我慢するという新たなストレッサーが追加された余計に疲弊する。もともと、狭くなっていた視野や聞こえにくくなっていた聴力はさらに低下し、元々半分以下にまで低下していた頭の回転もさらに下がる。


 だが、容赦はしない。(いいや)、容赦などできるほど余裕があるわけではない。比較的ガードの甘い、下段に連続で攻撃を行い、慣れてきたところで、上段に切り替え、まずは軽くジョブを入れ、ストレート、フック、アッパーにつなげていく。頭部を揺さぶり、ただでさえ低下している頭のパフォーマンスを下げ、魔術詠唱など到底不可能な状況を作り出す。


 __とにかく相手のルールで戦うな。自分のルールに書き換えろ。これは戦いに限らずあらゆる事に共通することだ。所謂弱者の生存戦略(非対称戦)であるが、それは強者の有り余る力を活用して追従を許さず引き離さんとする戦略も、自分のルールで戦うという面は同じだ。つまるところ、格闘技やスポーツのルールのみならず、敬遠戦略においても通用するわけだが、一つ問題がある。自分と相手の得意分野が分からないと意味がないことだ。


 それはつまり『敵を知り己を知れば、百戦危うからず』というわけだが、その点において、凛は詰めが甘かったといえよう。そもそも、近接戦を下げるべきだった。こちらが煙幕を展開した時点で下がるべきだったのだ。視界を塞いだということはそれをする理由があるということ。煙幕弾の使用用途は、攻撃支援要請以外では、後退支援か前進隠蔽のどちらかが9割になるのだから、接近されるという事態は想像できたはずなのだ。


 此方が弱者の生存戦略を活用することが分かっているのだから(まさか、中距離法撃戦に発展するなど考えていないはずだ)それに乗らず、強者の生存戦略を徹底すればよかったはずだ。それをしなかったのが敗因と言えるかもしれない。


 そろそろ、欲しくなるだろう。気持ちいぐらい劇的な逆転劇と言うモノが。そして、それは大抵、大振りと相場が決まっている。


 __ほら来た。怒りに身を任せたパンチは所謂やくざパンチというものだ。それは、腰が入っておらず、ロシアン・フックの様に肩を回すわけでもない正真正銘、大振りの無駄攻撃だった。ここは、無理に格闘戦をすることなく、一歩引く。


 絶妙なタイミングで引いたことで、ヤクザパンチは空振り、そのまま無防備に体をさらしてしまう。だが、此方も引いたことで格闘戦の間合いからは半歩外れてしまっている。ホルスターからP320サブコンパクトをドロウし、引き金をしぼる。直後、.40S&W弾が銃口から飛び出し、凛の肩に正確に着弾。度重ならる上段攻撃により魔術演算能力を根こそぎ奪われていたリンガ魔術防御を行うこともできずに負傷する。肩は攻撃の起点となる重要なパーツだ。それを負傷すれば、戦闘能力は大きく低下することとなる。


 そして、ついに耐え切れなくなったのか、膝から崩れ落ちてしまった。いいのかなぁ?格闘技の経験者相手にこの距離から膝を付いてしまって。


 襟をつかみ、斜め前に引っ張り、肩と首に俺の腹が入るように密着する。


「っやば! フロントチョーク…!」


 悪いが、お前よりもさらにヤバいやつがいるから、さっさと終わらせてもらうな…?


「フロント・ネックチャンスリー・ドロォォォォップ!!!」


ダァァン!!


「私は…負けた、のですね。お兄様……」


「さすがわ……お兄様……です」


 負けたのに、どこか満足げな笑みを浮かべ、凛は気を失った。


 終わってみればあっけなかったな。街一つ吹き飛ぶかも。と言われていたが、都市区画が10個ほど滅ぶだけで終了した。……いやまて。最初の方で数発撃たせた以外は、此方が圧倒し、攻撃すらさせなかったのになんでこんなに被害がでかいんだ…?


 ま、まぁ…これで、一応の決着はついたな。うん…。ろくに魔術を使っていないから白黒ついてないとか言われないといいが……


 それと、あの邪神はどうすべきか…? まぁ、今のところ動きはない。起きるまで放置でいいだろう。腰の多目的ポーチから取り出した2つの手錠で両手両足を拘束する。これで、飽きてすぐ暴れるということはないだろう。



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