第19話 放送にあるまじき行為が行われたとお感じになったとしても、それらは全て当方の演出によるものです。
■シーン2 本番
・カット9(00:04:09.04~00:04:26.19)
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2カメ:ヤリスの手持ちGoPro
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(F.I.)
レースのカーテンが掛かった窓。
「ゲストの山田さーん。用意はいいですかぁ」
「オッケーでーす」
山田は音声のみで姿は映らない。
カメラを振ってソファベッドの前に立つマーチ。Yシャツから素足の恰好で、もじもじしている。
画面は足元から気持ち仰角で正面を上がっていきバストショットまで。
フレームの右横から槍須が入ってきてマーチの肩を抱き寄せる。左手は自撮りでGoProを持つために伸ばしている。
「はい。こちらが本日の挑戦者、マーチちゃんです。衣装はさっきのまま。なにも足さない、なにも引かない(笑)」
そう言って、脇に回した右手でマーチの右胸を軽く持ち上げて落とす。シャツの下でノーブラの胸が揺れている。
「このままだと僕の腕がちょっとつらいので、カメラ切り替えまーす」
・カット10(00:04:26.20~00:04:45.01)
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1カメ:ソファベッド真正面の固定カメラ(シーン1とは別の位置)
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マーチとヤリスがソファベッドに座る。裾が跳ねないよう両手で押さえるマーチ。肩は抱かれたまま。
「はい。それでははじめる前にちょっとだけインタビューをしてみましょう。マーチちゃんこんにちは」
「…こんにちは」(マスク越しで少し声がこもっている)
「マーチちゃん、はじめてのレンタルジョーバ、緊張してますかぁ?」
無言で小さく頷くマーチ。ヤリスは肩に回していた手を外し、少し距離をとってGoProをマーチに向ける。
「今、目の前にはレンタルジョーバが準備万端で用意されてるんですが、どんな気持ちかな?」
・カット11(00:04:45.02~00:04:52.07)
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2カメ:ヤリスの手持ちカメラ(ターゲットの左横から)
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マーチの横顔。右下方をちらりと見てからすぐ目を逸らしてもじもじするマーチ。少し表情がこわばっている。
「……少し……こわいです」
・カット12(00:04:52.08~00:05:03.16)
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インサート
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ジョーバ静止画。
「レンタルははじめてですからね。でもこんな立派なジョーバ見たら、どきどきしたりしませんかぁ?」
「……」(マーチ)
・カット13(00:05:03.17~00:05:37.03)
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2カメ:ヤリスの手持ちカメラ(ターゲットの左横から)
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「なんならちょっと触ってみましょうよ」
無言のままおそるおそる右下方に手を伸ばすマーチ。
「どう?」
「…すごい大きい。…あと、硬い」
「山田さんのジョーバ、大きくて硬いそうです」
「光栄です」(山田の声、音声のみ)
GoProの画面は胸元から下がっていき、シャツの裾押さえているを両手が中心に。
「期待で濡れてきちゃったりしてませんか?」
「……」
「その方がうまく乗れるってオーナーの山田さんも言ってます。あと汚しちゃっても構わないって。そうですよね、山田さん」
「はい。存分に濡らして汚しちゃってください」
山田の声は相変わらず音声のみ。
カメラは上がって、緊張しているマーチの顔をほぼ正面から。
・カット14(00:05:37.04~00:05:53.21)
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1カメ:ソファ真正面の固定カメラ
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「それでは、おまちかね。いよいよ本番です。マーチちゃんも立ち上がって位置について」
ヤリス、立ち上がったマーチの手を引いて。カメラの方に寄りつつ左側にフレームアウト。マーチもそれに続く。画面は無人のソファベッド。
「はい。マーチちゃん、位置につきました。山田さんもジョーバのスタンバイオッケーですね」(音声のみ)
「さっきからずっとスタンバイ状態でーす」(音声のみ)
・カット15(00:05:53.22~00:06:59.23)
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2カメ:ヤリスの手持ちカメラ(膝辺りの位置からの仰角)
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フレームやや左側にこちら向きで立っているマーチ。
「それではマーチちゃん、ジョーバを跨いでください」
緊張したままのマーチが左足を上げてカメラを跨ぐ。一瞬だけ覗いたシャツの内側は、逆光の陰になって奥がよく見えない。
「そのままゆっくり座ってみましょう。ポジション間違えると動き出したとき振り落とされちゃうそうですから、慎重に。山田さんもサポートよろしくお願いします」
「大丈夫でーす。今、向きの調整してますが、座り位置はここでばっちりでーす」
「はい。ではマーチちゃん、正面の手綱バーをしっかり握ってから腰を下ろしていきましょう」
ゆっくりと腰を下ろすマーチ。フレームには腹部から上、やや左前方を向いたマーチの馬乗り姿の上半身。
「そこでちょいストップ。こっちで微調整しまーす」(山田の声、音声のみ)
「あ、あん」
「あ。マーチちゃんもいい感じで準備オッケーですね。このままいきましょ。ゴーゴー」(山田の声、音声のみ)
「山田さんからも最終オッケー。さ、マーチちゃん、一気に座っちゃいましょう」
躰を落とすマーチ。
マーチの背中が反り返る。顎が上を向き、声が出る。
「オッケーでーす。ベスポジいただきました。最高です!」(山田の声、音声のみ)
「はい、山田さんのオッケーいただきました。では、スイッチオン」
・カット16(00:07:00.00~00:07:01.22)
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インサート
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ジョーバのコンソールのアップ。電源を入れる指。(明らかに別撮り)
ぐいんぐいんというジョーバの作動音スタート(かなり大きい)
・カット17(00:07:01.23~00:13:35.03)
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2カメ:ヤリスの手持ちカメラ(膝辺りの位置からの仰角)
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両腕をまっすぐに伸ばしフレーム外の何かに掴まっての馬乗り状態で、下から突き上げられるように上下に動くマーチ。
ジョーバの作動音にマーチの喘ぎ声が被さっている。
ぐいんぐいんぐいんぐいん…
あ、あ、あ、あん、あ、…
カメラ、下からマーチのバストショット~顔のアップ。
マスクの下、空気を求め大きく口が開いているのがわかる。額やこめかみに汗がにじんでいる。目は閉じたまま。マスクがずれて、鼻は完全に外に出ている。
喘ぎ声の他にも、なにか湿り気を帯びた別の音や頬を叩くような音が、ジョーバ動作音のリズムに同期して被っている。
回り込み、律動を続けている背中のアップ。汗がにじんで肌の色が映っている。
逆の動きでカメラが戻る。苦しそうな表情、額の汗が粒になり、流れ始めている。
マスクは半分以上下がり、すでに口元の一部が見えている。もはや顔出しと言っても過言ではない。
ジョーバの動作音、湿り気のある摩擦音、ビンタに似た破裂音、そしてマーチの口から漏れ出している喘ぎ声、それらが画面で上下動する上半身のリズムと被さって、渾然一体となっている。
汗が流れ落ちる喉元から胸元のアップへ。
シャツの前面も汗で透けはじめている。上下動が激しいため胸がぶるんぶるんしている。濡れたYシャツ越しに胸の先端のピンクが一瞬。
作動音はそのまま、喘ぎ声はやや激しさを増している。
ぐいんぐいんぐいんぐいん…
あっ、あああっ、はぁ、あ、はっ、…
GoProのフレームはジョーバに乗りこむときの仰角位置に戻っている。
「少し、モード、変え、まーす」(やや苦し気な山田の声、音声のみ)
マーチの動きが上下動から前後左右動に変わる。
マーチの喘ぎに「だめ」「いや」「いっちゃう」といった叫びが加わる。
マスクはもう顎まで落ち切っていて全く顔を隠せていない。
ヤリスがマーチに話しかけた。
「マーチちゃん、どう、気持ちいい?」
「はっ、はっ、い、いい、すご、すごく、い、こわれ、あ、あ、こわれ、ちゃう」
「もう何言ってるかわかりませんね。山田さん、もうちょっとジョーバのレベル上げましょうよ」
「は、がんばって、みます」(苦し気な山田の声、音声のみ)
さらに激しくなるマーチの動き。すでに片手はバーから離れて中空を掴み、背中はエビのように反りきっている。
切なげに長く続く喘ぎ声が彼女の限界突破を知らせた。
「マーチちゃん、イっちゃった?」
「ヤリスさーん、ジョーバも限界です」
「わかりました山田さん、ジョーバももうイっちゃっていいですよ」
マーチの動きが大きく深いストロークの上下動になった。
再度登り始めた感のマーチの喘ぎ。
速度を増した上下動。マーチの声も再び最高潮に。
再登山から二分ほど続いた激しい上下動も、最後の突き上げでジョーバが停止し、ひと呼吸おいたスローモーションのようにマーチは手前に崩れ落ちた。作動音も遅れて停止する。
ジョーバ本体がフレームインしないよう気を付けた横移動で、崩れ落ちて速い呼吸を繰り返している素顔のマーチのアップ。
「マーチちゃん、レンタルジョーバ体験のご感想は?」
薄目を開け、息を切らせながらマーチが応える。
「…い、よかった、かも」
「いい汗かいた?」
「…かいた。…めちゃくちゃ」
「相当動かされてたみたいだけど、どんな感じ?」
「…もう、だめ。こわれちゃった、かも」
「うひゃー、そこまで言わせちゃったかー。じゃあさ、山田さんが来る前にやってた運動とどっちが良かった?」
「……こっち、…かな」
「え、マジ?!」
「…さいごまで、イケた、から」
「マジかよ~。傷つくなぁ」
ぼやくヤリス。演技ではなさそう。
「ま、いいや。次のときに思いっきりいじめちゃえばいいか」
「…いつもの、も、いい、よ」
「はいはい。で、どうマーチちゃん、このレンタルシリーズだけど、不定期で続けてもいいかな?」
「……」
「いいよね?」
「……ん」
「オッケーでいいね?」
「…………ん」
「はい、オッケーいただきましたぁ」
フレームを動かし、倒れこんでいる濡れ透けYシャツのマーチの背中を背景にした自撮りモードにする。
「このレンタル○○シリーズは、今後も不定期で進めたいと思いまーす。企画持ち込みも大歓迎ですので、視聴者の皆さん、よろしくお願いしまーす」
フレーム内右下に企画投稿用フォームのQRコードを表示。そのあたりの虚空をしきりに指差すヤリス。
「マーチちゃんも思い切り汗をかいた運動には大満足してたみたいですね!
それではこれで、ヤリスちゃんねる特別編『マーチちゃん、レンタルジョーバに大挑戦』を終了しまーす」
「チャンネル登録もよろしく! あと、最後までご視聴いただいた方だけに、期間限定の画像DLリンクを教えちゃいまーす。画像はもちろんマーチちゃんがメイン。今回の放送のオフショットとかを五枚セットでお届けします。そっちのQRコードはこの後表示するチャンネル登録ご案内画面にくっついてますので、是非ともよろしく。ちなみに応募期限は放送開始日から一週間後の二十四時とします。ご応募お待ちしてまーす」
カメラをゆっくりパンし、カーテンの窓で止めて画面移動停止。
(F.O.)
・カット18(00:13:35.04~00:14:15.06)
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3カメ:マンションの玄関ドアに固定したスマホカメラ
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開け放たれたドアフレームに切り取られたリビング。
正面にジョーバ。立っているヤリス、左下あたりに顔を向けている。
忙しく動いているため、時々見えなくなる。
画面中央にF.I.で注意書きを静止画表示。
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本映像では法令やYoutubeのレギュレーションに抵触する行為等は一切行っておりません。
仮に何か放送にあるまじき行為が行われたとお感じになったとしても、それらは全て当方の演出によるものです。
くれぐれもお間違いのないようお願い申し上げます。(ヤリス)
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(音声のみ)
「ちょ、山田さん、いつまで挿れてんの。ほら早く抜いて。って、なにこれ、中から溢れ出してるじゃん。山田さん着けてくんなかったの? え、作動中に破れちゃったって? 聞いてないよそんなの、先に言ってよー。あーもーこんなに出しちゃってー。ベンチの上、どろっどろのどろだよ。ほらぁ、こっちだってまだ中から流れ出てくるしぃ。山田さん溜め過ぎ。ちゃんと責任取ってよね。」
・カット19(00:14:15.07~00:15:00.00)
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インサート
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フレームはチャンネル登録のご案内の静止画表示
生画像(無修正)DL応募フォームへのQRコードが入っている。
(音声のみ)
「てかおっぱい揉むのももうおわり。言っとくけどそのおっぱい、オレんだから。レンタル時間はもうおしまいですよ。え、生おっぱい舐めてないって? もう、がっついてんなぁ。ちょっとくらい大きいからって……。おい山田、なに自慢気に笑ってんだよ。マーチもマーチだよ。おっぱいいじられキスされて悦んでんじゃねぇよ」
「ん。んふ、はぁん。……あっ」
「あっ、おい山田この筋肉野郎、なにもっぺん挿れてんだよ。え、勃っちゃったからしょうがないって? だいたいお前、今度はハナっから着けてねぇじゃねぇか。え、さっきよりいいって? ちくしょー。マーチ、デカチン挿れられてよがってんじゃねぇよ、このバイ」
(音声C.O.)
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[追記]
公開から四十八時間で二百万を超える驚異的な視聴回数を叩き出したヤリスちゃんねる第22回だったが、約七十二時間後に当局からのアカウント停止処分宣告を受け、同時にヤリスちゃんねる全番組の配信が停止となる。第22回の最終の累計視聴回数は約四百二十万回。
停止理由は「過度な性描写喚起による公序良俗違反」とのこと。
むろん槍須サイドからの「当局は即座に明確な基準ラインを示すべき」との請求はあったものの、当局からは「基準を公表する予定はないが、本作は当基準値をはるかに上回っていた」との回答のみ。
他のSNS等を巻き込んだ論争の果て、公開から二週間後、単なる生脱ぎ等軽度な番組を含むほぼ全てのグレーゾーン番組が同様の措置を受けるという大粛清が行われるに至った。のちに言う「ヤリスぎ事変」である。
一方、同時期に猥褻動画配信者の起訴事件があったことから、捜査の手を恐れた槍須サイドが有料配信コンテンツの陳列停止(アーカイブの削除)、関連SNSでの告知配信削除、さらに海外サーバ経由の裏コンテンツ販売サイトの閉鎖など、速やかな証拠隠滅行動を実行。第22回公開停止後二十四時間でヤリスちゃんねるの関連頒布活動は、表も裏も完全に沈黙した。
[追々記]
第22回公開から半年後、ヤリスちゃんねるリターンズ公開開始。




