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悪姫恋聖  作者: ねじるとやみ
エピローグ
82/82

・楽園

「アミアちゃん、今日の収穫はどう?」


「今日は大漁だぞ。

昨日仕掛けた罠がうまくいったよ」


アミアは網一杯の魚介類を見せる。

アミアの小さな身体は獲物で隠れる程だった。

日はまだ高く、

薄着から覗く二人の肌は程よく焼けている。


「そっちはどうだ?」


「収穫出来そうな野菜があったのと、

果物をいくつか。

後は豚が罠にかかってたからそれも。

今日はエリエちゃん達が来る日だしね」


「そうだな、腕を振るわないとな」


観察者と対話したあの日、

ミルミが連れてきたのはこの島だった。

大きさ的には数十キロメートル程の小さな島だが、

海、川、山、湖、森、草原と豊かな自然があり、

綺麗な水も天然の温泉もあった。

生物は命の危険が無い野生動物しかおらず、

人間、妖魔、超越者はアミア達以外いない。

ミルミ曰く、

この島は子供の頃に流行った教育用玩具で、

唯一親にねだって買ってもらった物だと言っていた。

ここは閉じた世界で、生態系も完結し、

観察者の観察範囲に入っていないとも。

どこまで本当かは分からないが、

寝食生活出来て安全な場所だと分かったので、

当座はここで暮らす事にしたのだ。


「あれから1年かあ。

アミアちゃんは髪は伸びたよね。

背は殆ど変わらないけど」


「リンリは胸も尻も大きくなったよな」


髪はリンリの希望で、

背中までは伸ばすようにしていた。

そして身体の成長の方はもう諦めた。

リンリの方は更に女性らしい身体つきになったが、

羨ましくは感じなくなった。

より愛しいと思うようになったからだ。


「エリエちゃんのお腹、

また大きくなってるかな?」


「もうすぐ子供が生まれるんだよな」


島に来て、超越者としての能力を持ち続けるか、

人間に戻るかをミルミに聞かれた。

どちらにするかをミルミは自由に出来るらしい。

アミアとリンリはとりあえずは人間に戻してもらったが、

エリエは悩まず超越者を選び、

その力を使ってミルミの子を妊娠していた。

詳しい方法は聞いていないが、

超越者にとって性別は些細なものらしい。

そんな夜の情事の事もあり、

最初は4人で同じ小屋で暮らしていたが、

アミアとリンリは島の反対側に自分達で家を作り、

そこで暮らす事にした。


なるべく自給自足にしたのだが、

道具や服などの生活用品を1から作るのは難しいので、

そこら辺はミルミに譲ってもらった。

今はアミアとリンリで役割分担を決め、

殆どの衣食住を自給自足出来ていた。

不便なところもあるが、

それも生きる為の楽しみになっている。


ミルミとエリエは超越者の力で、

自由に欲しい物を取り出し、

好きな食べ物を作り出した。

そもそも超越者は食事も不要なのだが、

エリエが習慣で食事をし、

それにつられてミルミも食べるようになっていた。



「邪魔するぞ」


「こんばんは」


日が沈み、二人で食事の準備をしていると、

ミルミとエリエがやって来た。


「うわー、大きくなったねー」


リンリはエリエのお腹を見て声を上げる。

確かにエリエのお腹は胸より大きく膨らんでいた。


「歩くのも結構大変なんですよ。

まあ、超越者の力を使えば、

苦じゃないんですが」


「油断すると危ないからな。

力はあくまで保険ぐらいに考えておけ」


「ミルミもすっかり親の顔だな」


アミアはテーブルの上に料理を並べる。


「子供を作った事は無いからな。

とりあえず経験はしておいて損は無い」


「わたくしの次はミルミが産む予定なんですよ。

順番に10人位は産もうかと」


「大家族だね。

そっかー、それもいいかも」


リンリはそれを想像しているようだ。


「二人も早く超越者になればいいのに。

見た目だって好きに変えられますよ」


エリエは小さな少女の姿になる。

ただ、そのお腹の大きさは変わらない。


「やめんか、子供がいるうちは」


「そうですね、すみません」


エリエはそう言うが、

あんまり反省しているようには見えない。

徐々にエリエに主導権を奪われているのが分かる。


「子供はいいけど、

そうなると生活が大変になるしね。

当分は二人でいいよね?」


「そうだな。

産むにしてもリンリが成長しきってからかな」


「まあ、超越者にならんでも、

女性同士で子供を産む方法はある。

そこら辺は二人の好きにすればいい」


ミルミが言うには人間を辞めずとも、

子供は産めるという。

人の寿命で老いて死ぬか、

超越者になって長く生きるかを決めるのは、

もう少し考えようとアミアは思った。


「うむ、料理の腕は上がってるようじゃな」


「こっちのスープはどちらが?」


「スープはアミアちゃんで、

肉とかを焼いたのは私だよ」


「まあ時間は十分あるからな、

四苦八苦した結果だ」


食事を食べながら談笑する。

ミルミに関してはたまにあっちの世界に戻ってるようで、

月に1度集まった時にその話を聞く。

色々問題はあるようだけど、

もう心配はしていない。

全ては向こうの世界の仲間に託したからだ。

そして今のアミアの心配事は、

明日の魚が捕まえられるかだった。



「楽しかったね」


「そうだな」


エリエ達が帰り、二人で浜辺に座る。

食後にここでくつろぐのが日課になっていた。

二人きりで寂しいと思う事は無いが、

たまにエリエ達と会う事は、

楽しみの一つになっていた。


「もっと色んな人と一緒に暮らしたかったか?」


「ううん。

私は、アミアちゃんといられれば、

それだけで幸せだよ」


「あたしもだ。

愛してるよ、リンリ」


「私も愛してる」


裸になって、浜辺で何万回目のキスをする。

月夜は2人を優しく照らす。

アミアとリンリは飽きる事無い日常を謳歌していた。



【FIN】

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