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悪姫恋聖  作者: ねじるとやみ
第6部 決意
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8.確認

リンリ達が救出作戦に旅立って2日、

王都は特に敵の襲撃も無く、

アミアもたまに訓練を見に行く位で、

基本は暇だった。

王女と話せば手伝える事は山のようにあるのだが、

以前の返事をしていないので顔を合わせ辛い。

テルテのように機械に興味も無いので、

部屋で考える時間が増えていた。


「コンッコンッ」


部屋がノックされたので出ると、

そこにはテルテがいた。


「珍しいな」


「ちょっと根を詰め過ぎたから気分転換に」


椅子を薦めて、対面のベッドに座る。


「最近はどんな感じなんだ?」


「魔術師のサリサって子が機械武者に興味があって、

色々教えてたんだ。

うち以上に飲み込みが早くてビックリしてる。

もうすぐここで一番詳しくなるよ」


テルテは楽しそうだ。


「それで、アミアはどうしたいんだ?」


「随分抽象的な質問だな。

王国との関わり方か?

それともリンリとの事か?」


「どっちもだよ。

デレンの屋敷に行く前にリンリから話があったんだ。

時間が経てばうまく行くかと思ったけど、

そうでもないみたいだしな」


テルテの言いたい事は分かるが、

結局アミア自身が煮え切らない所だ。

何と言っていいか分からない。


「王国の事は、出来れば離れたいと思ってる。

縁もあるし、仲良くなった人も多い。

でも、いつまでも命がけで守りたいとは思わない。

ただ、リンリはそうは思ってないみたいだ。

あたしはリンリと離れるつもりは無いし、

かといってこのままだと危険だと思ってる。

なんで、何も決まらず、平行線だ」


「リンリと共にこの国を守る、

っていう選択肢は無いのか?

両想いなんだから、

ここで一緒に暮らすのもいいと思うぞ」


「正直、心は揺れている。

リンリが望むなら、それもありかと。

でも、違うんだ。

リンリの好意はあたしの好意とは違う。

リンリには善意の気持ちが有って、

あたしへの好意もその一部だという気がするんだ。

だから、素直に納得出来ない」


とりあえず頭の中の考えを言葉にする。

自分達を見てきたテルテになら、

ある程度は伝わるだろうと考えて。


「リンリの気持ちについては、

考え過ぎだと思うぞ。

アミアもリンリも違う人間だ。

考え方だって感じ方だって違う。

どちらかが少し妥協すれば、

うまく行くとうちは思うんだけどな。

あと、王国の件に関しては、

アミアの考えに同意だ。

今後も危険は増えるだろうし、

それは王国が抱えるべき問題だと思う。

アミア以外の戦力も増えたし、

西側の戦力も集結させれば、

復興も出来るだろう」


「テルテには話しておくか。

実はあたしはクルク王女の従妹にあたるらしい」


アミアは王女との関係を説明した。


「なるほどなあ。

それじゃあ離れたくなるのは分かるよ」


「クルクの事は嫌いじゃないし、

親類が生きていた事は嬉しい。

でも、あたしにとっては今更なんだ。

姉さんは死んでるし、

両親はもっと前に死んでる。

王族の血が流れていようがあまり関係は無い」


「まあ、アミアの好きにすればいい、

ってうちは思うよ。

うちもしばらくしたらここを離れるつもりだし」


初めて聞く話だった。


「どこへ行くつもりなんだ?」


「今興味があるのは機械武者のエネルギー、

焔玉の事だ。

だから、その作成者に会いたいと思ってる。

前にラーラが言ってたと思うけど、

『禁じられた光』っていう物が、

ラーラが持っていた資料に載ってたんだ。

それは大昔に使われたエネルギーらしく、

うちが探してるお宝の一つなんだ。

で、焔玉の製造方法とそれが関係してるのでは、

とうちは睨んでる。

王国に敵対するつもりは無いけど、

うちは自分の興味を優先するつもりだ」


「そうか。

どこにいるか分かってるのか?」


「巫女で知ってる人がいないか、

以前聞いたんだけど、

詳しくは分からないって。

ただ、今回救出作戦が成功すれば、

知ってる人がいるんじゃないかと」


テルテの考えは立派な気がする。

恋愛感情に流されて、

自分の将来すら考えていない事に比べると。

ただ、テルテと共に出ていく気も無かった。


「一人で行くのか?」


「そのつもりだ。

この件はアミアも関係無いし、

付き合わせるつもりも無いしな」


「そうか。

まあテルテならそう簡単に死なないだろう」


「誉め言葉と受け取っておくよ。

てな感じだからさ、

アミアも好きにすればいいと思うよ。

リンリはさ、もっとアミアが強引に行けば、

言う事聞くと思うぞ。

うちは二人が結ばれる事を祈ってる」


「ありがとう。

考えてばっかりだけど、もう少し考えてみるよ」


テルテは手を上げて出ていった。

アミアはそろそろ覚悟を決めないと、

と思うのだった。



『起きて下さい、敵襲です!』


深夜、

トリリトの魔法の警告でアミアは起こされる。

急いでローブを羽織り、走って応接室へ行くと、

既に数人が集まっていた。


「銀色の正体不明の鎧と、

これは悪魔鎧デビルアーマーだ。

デレンの研究成果は敵に渡ったみたい」


ラーラがドゼビムの形見の水晶を見ながら言う。

覗き込むと銀色の鎧の集団と、

後方に悪魔鎧が3機見えた。


(予想が当たったか)


悪魔鎧とはアミアは直接戦っていないが、

エリエとラーラが戦い、苦戦した相手だ。

それが3機なのだから、かなり手強い。


「どんな状況ですか?」


クルク王女もやってきて、

簡単に作戦会議を行う。


「敵が城まで来るのに15分ほど、

内訳は銀色の鎧が200機、悪魔鎧が3機だ」


アミアが得た情報を説明する。


「悪魔鎧は以前は魔力を与えて肥大化させましたが、

同じ方法が効くかは分かりません」


ラーラが補足する。


「双子は既に2重適合して正門前で待機してる。

覚醒出来るのはあたしだけなので、

あたしが悪魔鎧の相手をしよう。

残りのメンバーは以前と同じく、

左右に分かれて銀色の鎧を魔導機で破壊して欲しい」


アミアはなるべく戦力が均等になるように分ける。

クルク王女は対となる不死鎧が無いので、

城に待機してもらう事にした。

ドドはこの後声をかけて、

出来れば参戦してもらうつもりだ。



『それじゃ、銀色の鎧の方は、

トリリト、トルルトの二人に任せた』


『はい』


『任せとけ』


以前は苦戦したようだが、

今回は一度戦った事のある相手で、

テルテとドドも加わったので任せる事にする。

ドドは戦い易いのか鎧サイズで参戦している。

アミアは覚醒し、正面の銀色の鎧を蹴散らしつつ、

悪魔鎧まで近付こうとした。


(確かに人が動かしてない動きだな)


銀色の鎧の反応はそれなりに速いが、

動きは単調で、よく見れば躱しやすい。

アミアにとって敵では無かった。

そして正面の悪魔鎧が警戒して構える。


(やってみるか)


アミアはハルバードを構え、軽く打ち込む。

正面の悪魔鎧は手を盾にし、それを防いだ。


「代表者と話がしたい。

条件が良ければそちらに付いてもいい」


アミアは接近したところで声に出して言う。

相手が反撃したので、

一旦距離を取り、相手の行動を窺う。

悪魔鎧は3体とも一時的に攻撃の手を止めた。


(さて、どう出るか)


もちろんアミアは本心では言っていない。

悪魔鎧は悪魔と融合した鎧で、

デレンが使っていた時は悪魔の意思で動いていた。

今回も同じか、中に誰か乗っているかは分からないが、

言葉が通じるのは確かな気がする。


「お前らは敵だ。

破壊する以外の選択肢は無い」


中央の悪魔鎧がそう言い、

3体で再び攻撃を仕掛けてきた。

声は男性に近く、悪魔のものと思われた。


(なるほど)


アミアは戦いに集中しつつ、

敵が取った答えについて考える。

もしアミアが寝返ったなら、

城の制圧は楽になる筈。

それを即座に否定したのは、

敵が独自に考え判断したか、

誰かが作った筋書きにアミアの裏切り、

というのが存在しないか、か。

敵の猛攻に考えが中断され、

アミアは後で考える事にした。


(さて、3対1か)


魔法生物を使った防御と、

悪魔と鎧を合わせた再生速度、

メレンの融合体より手強いかもしれない。

ただ、リンリは魔法生物を無力化しつつ、

フラーネを倒したという。

リンリに出来て自分に出来ない訳は無い、

と思いたい。


(まずは1体)


ハルバードは背中に付け、両腕から光の刃を出す。

左から攻撃してきた1体に光の刃で斬り付けるが、

表面の装甲は斬れても、

その内側の魔法生物で攻撃が止まり、

内側までダメージが入らない。


(くっ!)


他の2体が背中と右足を攻撃し、

魔法生物特有の痛みがアミアを襲う。

しかし、以前の戦いで感じた痛みなので、

前より意識ははっきりしていた。


(包み込むように潰す!)


リンリは無意識で出来ていたようだが、

アミアは頭で考えないと魔法が使えない。

が、イメージは明確になってきた。

再び攻撃してきた1体に対し、

刃で斬り付けると同時に、

その内側に魔法を発動する。

すると中の魔法生物が弾け、

刃は内側の悪魔の心臓へと突き刺さった。


(よしっ!)


破裂すると聞いていたので、その1体から離れると、

確かにその悪魔鎧は破裂した。

しかし休む間もなく、残り2体は猛攻をしてくる。


(次は2体同時に!)


アミアは集中し、今度は考えずに、

感じるままに相手の心臓を狙う。


(そこ!)


2体の攻撃をカウンターで狙い、

魔法を発動しつつ両手の刃を左右に突き出す。

それぞれ心臓を貫き、破壊する事が出来た。


『悪魔鎧は片付けたぞ』


『こちらも、もう少しです』


魔導機の魔法で大半の銀色の鎧は片付き、

トリリト達は残りを片付けている所だった。


(何となくだが、

ミルミの言ってる事が分かった気がするな)


今回の敵の戦力も前回の襲撃よりは強大だが、

王都に残ったメンバーで対処出来るものだった。

アミアはミルミの言う筋書きの存在を、

ある程度信じられると感じていた。



『ただいま、アミアちゃん』


『おかえり、ご苦労様』


4日後、リンリが連れてきたのは巫女達以外に、

大量の機械武者と市民達だった。

市民は東の国の褐色肌の人と、

隷属させられた元王国民が混じっていた。

住む場所を分けないと大変だな、

とアミアでさえ感じられた。


正門の中でクルク王女が待っていた。

各代表者は鎧を降り、その場で挨拶をする。


「皆さんご苦労様でした。

ラハン様ですね。

初めまして。

私は王女のクルク・デクスビアと申します。

私達はあなた方を歓迎致します。

ただ、全ての市民が喜んで受け入れる、

という事は難しいです。

しばらくは距離を取って生活して頂きます」


「デクスビア殿、かたじけない。

拙者はトワの国の元大将、ザンザ・ラハンと申す。

今は流浪の身、領民の寝る場所を頂ければ、

それで十分です。

戦力は拙者も含め、存分に使って頂ければ」


「分かりました。

すみませんが、城は基本的に男子禁制ですので、

今後の事は町でお話しさせて下さい」


「了解した。

それでは、また後程」


ザンザは従者に案内され、

町の外れの方へと東の国の民と共に移動した。


「ナナ様、ご無事で何よりです」


「クルク王女こそ、

迅速な対応ありがとうございます」


二人は再会を喜び合う。

そんな中、アミアは違和感を感じ、

シルシに話しかけた。


「シルシ、その子は?」


「・・・町で拾った。

ボクから離れない・・・」


シルシの横には更に小さい子供が、

縋るようにくっついていた。

赤茶色のボサボサの髪だが、

顔はとても可愛らしい。

上目づかいでアミアの方を見ている。


「帰る途中で休むのに町に寄ったんだけど、

妖魔に占拠されてて人はいないと思ったんだ。

そしたらシルシちゃんがこの子を見つけて。

唯一の生き残りだったみたい」


「そうか。

どうするんだ?」


「・・・責任もって育てる・・・」


その子もシルシの言葉に頷く。

シルシにも妹が出来たみたいなのかと思い、

まあ城に置く分には何とかなると思った。

実は悪魔や超越者だった、なんて事は無いだろう。


『後で話がある』


その時頭の中に声が響き、

視線を感じた方を見るとミルミが立っていた。


『あたしもだ』


アミアもミルミと話したいと思っていた。

各自、城に移動を開始すると、

ミルミの姿は消えていた。

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