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悪姫恋聖  作者: ねじるとやみ
第6部 決意
73/82

7.救出作戦

それは急な連絡だった。

アミア達が王都に戻ってから2日後、

クルク王女の元に大巫女ナナから、

魔法の手紙が届く。

王女から説明されたのは、

以下のような内容だった。


『東の国の大将ラハンの領地に向かったが、

既に領地は東の国に襲われており、

道中でラハン率いる軍隊と領民に出会った。

他の友好的な二人の大将の領地も襲われ、

似たような状況のようだ。

敵軍が追ってきているので、

占拠している元王国のカルダの町まで移動したが、

休んでいたところを敵に囲まれた。

敵は機械武者、悪魔、妖魔、銀色の鎧の混成軍で、

領民を率いて脱出するのは不可能。

王都から援軍を寄こして欲しい』


アミア達は応接室に集められ、

その対応を話し合う。


「まず、罠である可能性があるのでは?」


アミアは言いにくい事を最初に話す。


「もちろん可能性はあります。

ただ、私はナナ様を信じておりますし、

この魔法の手紙はナナ様から私に直接送られ、

偽装出来るものではありません。

罠だとしても、カルダの町に敵がいるのは事実で、

そこに元々居た王国の民を助ける意味でも、

行く事に価値はあります」


「クルク王女の決意は分かった。

ただ、前回の王都への襲撃もあり、

ここに守りを残す必要がある。

どう戦力を分けるかが重要だと思う」


アミアは以前の王女の誘いに対し、

まだ返事をしていない。

しかし、今は場を仕切る事にした。

敵が存在しているのなら、

傍観しているつもりは無い。


「わたくしは他の巫女達が心配です、

是非行かせて下さい」


「わらわも興味がある。

戦力には入らないが付いて行くぞ」


エリエとミルミが意思を表明する。


「分かった。

クルク王女は城に残って欲しい。

ここでやる事も多い筈。

あと、覚醒出来る者を一人は城に残したい。

リンリ、行ってきてくれるか?」


「私?

指揮官として、

アミアちゃんが行った方が良くないかな?」


「いや、単純戦力としてはリンリの方が高い。

指揮官はニギニにやってもらう。

シルシも一緒に行ってフォローしてくれ」


そうは言ったものの、アミアの本心としては、

救出に行った隙に敵が攻めてくる可能性があり、

そちらの方が重要な気がしたからだった。


「わたしが指揮官ですか?

リンリさんとかエリエさんの方が適任では?」


「いや、

リンリとエリエは主力として敵に突っ込むので、

ニギニの方が適任だ。

魔術師とも連携が取れてきたそうだし。

後は魔術師から4名、選出はラーラに任せる」


「了解した。

まとめ役としてフレフと3人を付けよう」


「では、合計8名が救出、

残りが王都の防衛で。

何か意見があれば言って欲しい」


とりあえず救出の方が戦力が高いが、

アミアは自分が残る事で何とかなると踏んでいる。

いざとなればドドもいる。


「うちも東の国には興味があるけど、

救出作戦向きじゃないから、

それでいいと思う」


「クルク王女、それでいいですか?」


「はい。

では救出部隊の皆さん、

準備が出来次第出発して下さい。

巫女と町の人の事、よろしくお願いします」


クルク王女の声で解散となった。



アミアが部屋に戻ると、

リンリが後ろから付いて来ていた。


「アミアちゃん。

本当に私でいいの?

こういうのアミアちゃんの方が得意だと思ったけど」


「リンリには本当の事を言っておく。

救出作戦も重要だけど、

あたしは城の防衛が今は一番重要だと思ってる。

地下の鎧を見ただろう?

あれが失われたら大損害になる」


「じゃあ、アミアちゃんはクルク王女の依頼を、

受けるつもりって事?」


痛い所を突かれた。

結局リンリの事も、王女の話も、

どちらも悩み、何も解決していない。


「いや、まだ決めてない。

だから、決める前に壊されるのは嫌なんだ」


「アミアちゃんは私と一緒に居たいんだよね?

何とか一緒にいる事は出来ないのかな」


「覚醒出来る人を全部救出部隊には回せないし、

かといってエリエ一人では不安だ。

エリエを外すわけにも行かないし、

今回はしょうがない。

心配じゃないとは言わないけど、

向こうにはナナもいるし、

救出作戦自体は成功すると思ってる」


「それは、そうなんだけど・・・。

前の私の返事、まだ怒ってる?」


リンリは自分の判断をそう捉えたのか。

煮え切らないのは確かだが、

今はそれは別として考えていた。

いや、その態度自体がいけないんだな、

とアミアは理解する。


「ごめん、怒ってはいない。

ただ、それについても考えたいと思ってた。

だから、今は真面目に作戦の事を考えて、

割り切って進めてた。

リンリの気持ちを考えずに」


「ううん、怒ってないならいいよ。

それに、

そうやって考えてるアミアちゃんは好きだし。

真面目に考えて決めた事なら、

私は応えられるように頑張るよ」


リンリの少し寂しそうな表情に、

本当に自分は駄目だな、とアミアは思う。

そして、急に心配になってしまった。

だが、中途半端な自分に、

決めた事を覆すほどの力は無い。


「じゃあ準備があるから。

アミアちゃんも王都の方、お願いね」


「ああ、行ってらっしゃい」


アミアは無力感を感じながらリンリを見送った。


===========================================================================


(なんか気乗りしないなあ)


目的地までの移動中、

度々リンリはそんな事を思う。

巫女や市民を救う目的自体にやる気はあるのだが、

別に自分で無くてもいいと思ってしまう。


『ミルミ様、速過ぎたりしませんか?』


『大丈夫じゃ。

エリエのペースでよいぞ』


そして戦いに行くとは思えない、

この二人の会話がそれを助長する。

エリエはアイシンの手の上にミルミを乗せ、

ミルミはそこでくつろいでいる。


『ミルミちゃん、

なんか仲良くなり過ぎてない?』


『わらわはエリエの事を評価しておる。

それだけじゃ』


『わたくしはミルミ様を愛しております』


ミルミがエリエを避ける態度を取らなくなり、

ただのカップルに見える事が度々ある。

そもそもミルミが普通に姿を現し続けてるのも謎だ。


『ミルミちゃんも戦ってくれればいいのに。

私は戦ってるところ見てないし』


『お主らは強くなったじゃろ。

もうわらわが戦う必要など無い筈じゃ』


内心ずるいと思いつつも、

その言葉は飲み込んでおく。

今なら二人がかりでミルミも倒せるのかな、

と考えてみる。

巨神討伐の時の超越者との戦いは、

とにかく大変だった。

ドドが回復してくれなければ勝てなかったし、

それを考えると今でもミルミに勝てそうに無い。

覚醒状態は以前より使いこなせるようになったが、

だからといって自分が強くなったかは、

いまいち実感が無かった。



『もうすぐ町です。

速度を落として、

敵を警戒しつつ近付きましょう』


出発から1日経った昼過ぎ、

町が近付いたのでニギニの指示で一旦速度を落とす。


『魔法で敵の配置を確認します』


魔術師を仕切っているフレフが魔法を使う。


『町周辺の現在の敵の配置が分かりました。

情報を連携します』


『ありがとうございます。

凄い数ですね・・・』


ニギニはフレフが送った情報を見て驚く。

全容は機械武者が約80機、

悪魔が約20体、妖魔が約100体、

謎の鎧が約100機の合計300体だった。

町を全方向囲んでおり、

正門がある南側に機械武者の部隊、

東西に謎の鎧が分かれて配置され、

裏門がある北側は悪魔と妖魔が陣取っていた。


『突破して一旦町に入るか、

それとも中の部隊と連携して戦うかですね』


『町に入るのはリスクが高いですし、

入る事のメリットも余り無いです。

こちらが部隊を分けて、南北から敵を陽動し、

町から挟撃してもらうのがいいと思います』


エリエの話をニギニが受けて答える。

アミアや他の候補生が認めてる通り、

ニギニは立派に隊長をこなしているように見えた。


『・・・敵が陽動に乗らなかった場合は?』


『その時は端の敵から削っていけば、

こちらが有利に動けます。

南側の方が戦力は低めなので、

南にわたしとシルシちゃん、

あと魔術師二人に付いてもらい、

北はリンリさんとエリエさん、

魔術師二人でお願いします。

魔術師の魔導機は遠距離からの援護を主体で』


『了解しました。

わたくしはそれでいいと思います』


他のメンバーも異論は無く、作戦が決定する。

ミルミの姿はいつの間にか消えていた。

隠れて様子を見ているのだろう。


『じゃあ、

わたくしが念話が通じる位置まで行き、

町の巫女に念話で作戦を伝えます。

町の防衛に戦力を残しつつ、

敵が陽動に乗ったら合図して、

挟撃して貰えるように。

魔法の手紙をクルク王女が送ってるので、

準備は出来てる筈です』


『お願いします。

では皆さん、エリエさんが連絡取れたら、

作戦開始です』


シルシとニギニは鎧を乗り換え、

2重適合をしてから、作戦開始前の配置に付く。

リンリは特に意見も出さず、

成り行きに任せる形になっていた。


(謎の敵はいるけど、

エリエちゃん一人でも何とかなったんじゃないかな)


戦闘前だというのに、そんな事を考えていた。



『ナナ様、エリエです。

救出に参りました』


『エリエ、ありがとう。

他の方もありがとうございます』


ナナと念話が通じ、先ほどの作戦を話す。

超越者がいた場合、念話も漏れるが、

その情報がナナの手紙に無く、

現状もその姿は見えない。

そもそも超越者がいれば、

町は簡単に陥落していただろう。


『話は分かりました。

部隊を分け、挟撃出来る準備をしておきます』


『ニギニさん、準備完了です』


『はい、それでは作戦開始です』


ニギニの合図で作戦が始まった。

リンリとエリエはそれぞれ覚醒し、

悪魔と妖魔の混合部隊に斬り込む。

背後からの攻撃を想定していなかったようで、

それは敵を混乱させ、

見事にこちらの陽動に乗ってくる。


リンリは特に悪魔を狙って攻撃し、

反転して敵をおびき寄せると、

魔導機が敵の集団目掛けて範囲魔法で一掃する。

南側も同様の事をしているので、

東西にいた謎の鎧も動き出し、

その半数と思われるものが北側にやってきた。


『エリエちゃんもういいかな?』


『もう少し全体を北へおびき寄せましょう』


エリエのアイシンと合わせて、

デュエナを後退させる。


『ナナ様、北側は陽動出来ました。

挟撃して下さい』


『了解です』


町の裏口が開き、

そこからナナのクオンと他の巫女の神装、

そして機械武者が数機出て来るのが分かる。


『南側も陽動出来ました。

挟撃をお願いします』


『カレカ、お願いします』


『任せて下さい』


巫女のカレカが南側は率いているらしく、

そちらも挟撃を始めたようだ。


『じゃあ、私は謎の鎧を攻撃する』


『はい、西側をお願いします。

東側は悪魔を片付けたらわたくしが行きます』


リンリはニギニに話を聞いた、

銀色の鎧の相手を始めた。

人型、獣型、鳥型と聞いた通りの形だ。

が、覚醒したデュエナには、

大した相手では無い。

光線を弾き、獣型を踏み潰し、

飛んでくる鳥型を突き刺す。


(これなら悪魔の方が強いかな)


そんな事を思った時だった、何かの気配を感じ、

デュエナは横に飛びのく。

するとデュエナがいた場所に、

特大の光線が抜けていった。


『初めて見るタイプの敵がいます』


リンリが念話で伝える。

光線を発射したのは見た目は似ているが、

銀色ではなく、紅い輝きの鎧だった。

全身つるつるなのは変わらないが、

頭の形状が尖っている。

指揮官機かもしれない。


『てやぁーー!』


デュエナは全力で周りの敵を吹き飛ばしつつ、

紅い鎧を光の剣で斬り付ける。

すると相手は左腕から大型の光の剣を出し、

それを防いだ。

そして敵は即座に右腕から光線を出す。

デュエナは躱して再度攻撃を繰り出すが、

防がれ、当たった箇所も急速に再生される。


(攻撃自体は単調だけど、

強いな、これ)


とりあえず1機しかいないのが救いだ。


『東側は全部同じタイプでした。

南側はどうですか?』


『・・・こっちもいない。

もうすぐ片付く』


全ての敵の中でも紅い鎧は1機だけのようだ。


「紅い鎧の人。

誰か乗ってるんですか?」


リンリが気になって声をかけてみる。

銀色は無人機らしいが、

こっちに乗ってないとは限らない。

が、反応は何もなく、攻撃をしてきた。


(やっぱり無人なのかな。

周りの戦闘も終わってきたし、

片付けちゃわないと)


リンリはデュエナで敵の攻撃を躱しつつ、

どう攻めるか考える。

左手が射撃で右手が剣なのは変わらない事が分かった。


(なら)


高速で旋回し、まずは右手を斬り落とす。

相手は反応して左手で斬りつけてくる。

デュエナは左手に光の剣を出し、それを防いだ。

そして右手の剣で胴体を斬り払った。

やはり繭の中は空だった。

しかもその状態からも再生を始めている。


(紅いのは特別なんだ)


振り回す相手の右手の剣を避けつつ、

更に細切れにすると、

ようやく敵の再生が止まった。


『南側は全ての敵を排除出来ました』


『北側も完了です』


エリエの方も排除が出来たようで、

リンリが紅い機体を倒したタイミングで、

戦闘は終了した。

アミアの予想通り苦戦という程では無かったかな、

とリンリは思った。

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