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悪姫恋聖  作者: ねじるとやみ
第6部 決意
69/82

3.魔女の館

アミア達の目の前には、

大きな庭付きの屋敷が広がっている。

妖魔に荒らされた跡などは無く、

元々妖魔が寄り付かない場所だったのか、

デレンが妖魔を追い払っていたのかもしれない。


「一応監視対策の魔法を使ったけど、

屋敷に入った時点でバレちゃうから、

逃げられないように早めの行動をお願いね」


ドゼビムが注意を促す。


「あたしとリンリで最初に突入する。

エリエ達は周りを監視しててくれ」


「「了解」」


リグムとデュエナはなるべく静かに、

素早く移動し、屋敷の庭を突破、

建物の大きな扉の前まで移動する。


『入れるかな?』


『多分ロビーまでは行けるだろう。

そこからは状況次第かな。

じゃあ、開けるぞ』


リグムが扉をゆっくり引くと、

鍵はかかっておらず、扉は開いていった。


『何かいるな』


センサーに妖魔らしき反応が出る。

中を見ると、大きなロビーがあり、

正面には大きな扉、その左右に2階への階段、

左右の壁には小さな扉がいくつか並んでいる。


『上!』


リンリが叫び、天井から何かが落ちてくる。

みると紫色をした、スライムのようなものだ。


『スライムか?』


アミアは試しに炎の魔法をぶつける。

一瞬それは燃え上がったが、

すぐに火は消え、形状に変化はない。


「それは魔法生物ね。

普通の攻撃も魔法も効かないわ。

わたしとラーラで対応するから下がってて」


いつの間にか背後に来ていたドゼビムが説明し、

リグムとデュエナは左右に寄って、

ドゼビムとラーラの魔導機が前に出る。


「あたしが封じるから、ラーラが潰しなさい」


そしてドゼビムは魔法を唱えた。

魔法生物の周りに魔法の膜が出来る。

魔法生物は動こうともがくが、

膜のせいで動けないようだ。


「超重力」


そしてラーラが重力系の魔法を、

魔導機を介して唱える。

すると、膜ごと魔法生物は潰れ、

そして溶けだした。


「こんなものまで用意してるなんて、

デレンは禁忌の領域にいるわね。

それか、凄い協力者がいるのかも」


ドゼビムの言う通りなら、

一連の黒幕と繋がっている可能性が高い。

アミアは逃げられては困ると、

急いで正面の扉を開ける。

そこは更に広いダンスホールのようで、

3階まで吹き抜けで天井が見えた。

ただ、人も生物の気配もない。


「これ以上は鎧に乗ったままだと探せないな。

一回降りて手分けして探すか?」


「待って。

魔法で調べてみる」


ラーラの魔導機がやってきて、

魔導機から魔法を唱える。

風の流れが可視化して、

右側の扉の方へ流れていくのが見えた。


「こっちだ」


ラーラの魔導機が先導して動く。

扉を開けると、そこは倉庫のように、

物が積み重なっていた。


「離れてて」


ラーラの魔導機がまた魔法を唱える。

すると、その部屋の壁が爆散した。


「意外と大胆だな」


「時間が惜しいんで」


すぐさま魔導機が先導して部屋に入る。

天井の大きさ的にギリギリだ。


「これかな」


壁にレバーのような物があり、

それを引くと、床がスライドし、

地下への石階段が現れた。


「正面に外からの入り口があったね」


リンリに指摘されて前を見ると、

確かに搬入用の鎧が通れる扉があった。


「時間短縮だよ。

すまないが先導お願い」


「分かった」


またもやリグムとデュエナで階段を降りていく。

石階段の壁には所々に魔法の明りが灯り、

ここにいるという確信が持ててくる。


「また敵か」


広くなった地下の部屋には、

神聖鎧とも不死鎧ともつかない、謎の鎧がいた。

足は4本あり、その上の胴体からは、

8本の腕が伸びている。

頭部は無く、角のようなものが1本立っていた。

広い石造りのフロアの主人のように、

中央に陣取っている。


『よく来たねえ。

ちょうど新しい実験体が欲しかったところだよ』


そして、以前フラーネと戦った時に聞いた、

老婆の声がした。

魔法で声だけ出しているようだ。


「デレンね、お久しぶり。

ゆっくりお話は出来るかしら?」


『あんたは相変わらずだね、ドゼビム。

わしはあんたに興味は無いよ。

覚醒のサンプルなんて滅多に無いんだ、

大人しくしてて欲しいね」


交渉は無理らしい。


「聖教団や邪教団の町を襲わせたのは、

お前だな、デレン」


『邪教団はそうだけど、

聖教団の方はちょっとした事故さ。

まあ、知った事じゃないがね』


「王女の命により、

あなた達を討ちます」


『出来るならね。

さて、いいデータが取れそうだ』


嬉しそうなデレンの声の後、

奇妙な鎧は動き出した。


「うちが相手をする。

アミア達は逃げられる前に捕まえて」


テルテの提案にアミアは少しだけ迷う。

が、テルテには勝算があるんだろう。


「分かった、任せたぞ」


シウンが動いた事で、それに敵の鎧は釣られる。

アミア達はテルテのシウンを置いて、

更に先にある地下への階段へと進んだ。


===========================================================================


(言ったはいいけど、どうしようかな)


テルテはカッコつけ過ぎたと後悔していた。

シウンはとにかく相手の攻撃を避けるので精一杯だ。

敵は腕に剣や槍など、様々な武器を持ち、

リーチも攻撃スピードもある。

スピード型のシウンだが、狭い地下では、

その特性は活かせず、逆に相手の8本の腕は、

とっかえひっかえシウンを攻撃し続ける。

焔玉をこの距離で使えば、

シウンにもダメージが来るし、

かといって格闘で勝てる気はしない。


(動き的に人が操ってるんじゃないんだよな。

だったら)


テルテは以前悪魔と戦った時にも使った、

ダミーの風船を複数展開する。

ただし、今回は中に焔玉が入っている物は無い。

相手の鎧は近くにある風船から、順次攻撃していく。

その間にシウンは敵との距離を取る。

気になっているのは4本の足だ。

上半身に複数の腕があるので、

バランスを取る為に4本必要なのだろう。

足を2本減らせば動きは止められる筈。

問題はどうやって上半身の攻撃を躱して、

足を攻撃するかだ。

腕が複数あるので、

風船を攻撃している隙をついても、

即座に別の腕に攻撃されるだろう。


(そうだ!)


テルテはある事を思い付き、

左腕からワイヤーを発射する。

ワイヤーの先の分銅が鎧の足の一本に絡まったのを確認し、

シウンは素早く右回りで鎧の周りを回る。

敵の鎧はワイヤーには気付いたかもしれないが、

近くの風船を攻撃する事を優先し、

ワイヤーとそれを引くシウンへの行動は起こさない。

グルグルと周りを回る事で、

ワイヤーは絡まり、シウンはワイヤーを切り離す。

脚部の異常に気付いた鎧がそれを切ろうとするが、

既に遅く、絡まった足ではバランスが取れずに、

横に倒れた。


「いただき!」


シウンは登り階段の方へ移動し、

ギリギリの位置から焔玉を発射する。

起き上がろうともがく鎧は、

それを防げず、直撃し、爆発した。

シウンは上階へ一旦逃げて爆風を避け、

治まった後、様子を見に行く。

相手はぎりぎり動ける感じだった。


「一応とどめを刺しておくか」


シウンは刀を抜き、鎧の胴体を真っ二つにする。

繭の中は空洞で、

魔法か何かで制御しているようだった。

テルテは調べてみたい欲求を何とか抑えて、

先に進んだみんなに追い付けるよう急いだ。


===========================================================================


「よく来たねー。

待ってたよ二人とも」


アミアは目の前の2体の存在に吐き気を催す。

地下2階の広場にはフラーネの神聖鎧だったモノと、

メレンの不死鎧だったモノが待ち構えていた。

ただし、その姿は緑色の悪魔と溶け合い、

所々から紫色の液体が流れ出ている。

下半身は触手になっており、

辛うじて上半身から覗く鎧の頭部と、

武器を持つ鎧の腕が元の鎧を感じさせた。


『鎧と悪魔を魔法生物を使って融合させたんだと思う。

魔法生物の特性もあるかもしれないから注意して』


ラーラが説明する。

そんな事も出来るのかとアミアは恐怖を感じた。


「メレン団長、なんでそんな姿に・・・」


「まだ団長と呼ぶか、お前は。

足りなかったんだよ、自分は。

力さえあれば、こんな事にはならなかった。

だから、2重適合して、それでも足りなくて、

ようやくお前達に対抗出来る力を手に入れたんだ。

力が満ち溢れているのを感じる。

もう、誰も自分を馬鹿になどしない」


「こいつは壊れてるよ。

アタシは違う。

自ら望んで取り込み、強くなった。

そして、お前らを倒す事で、完成する」


二人とも壊れていた。

完全じゃない2重適合を更に改造されたのだろう。

アミアの仇を討つという気持ちは薄れ、

ただ、解放してやりたいと思った。


「リンリ」


「うん」


「ここはあたしとリンリでやる。

みんなは先に進んでくれ」


「「了解」」


エリエのアイシンを先頭に更に地下へと進んでいく。

フラーネもメレンもアミアとリンリ以外は、

最初から眼中にないようで、特に手出しもしなかった。


「青いの、もう負けないからねー」


「悪姫、そもそもお前さえいなければ、

こんな事にならなかったんだ」


フラーネはデュエナの前に、

メレンはリグムの前へと進んでくる。


『リンリ、この組み合わせでいいか?

あたしは姉の仇はリンリが取ってくれればいい』


『私も聖女様の仇はアミアちゃんに任せるよ』


リンリも特に拘りは無いので、

そのままリグムはメレンだったモノと対峙した。

そして、リグムを覚醒させる。


(早く終わらせてやる)


リグムは光の刃を伸ばし、

それで鎧の繭がある部分に突き刺した。

元が不死鎧なら、弱点も変わらない筈だ。

しかし、相手はそれでは止まらず、

即座に触手と両手の武器と魔法の、

連続攻撃が来る。

リグムはそれを防ぎつつ、一旦距離を取った。


「痛いじゃないか。

そんな攻撃じゃ死なないけど、

痛覚は残ってるんだよ」


メレンは複数の触手を金属状に変化させ、

その先端をリグムへと飛ばす。

リグムはそれを回避し、弾いたが、

一つが腕をかすった。

大したダメージでは無い筈だが、

その痛みは強烈だった。


(魔法生物で加工してるのか)


受けた傷の回復もいつもより遅い。

相手の攻撃速度はそれ程でもないが、

手数は多く、連続して受けるとマズイと気付く。


『リンリ、攻撃には魔法生物の効果が混ざってる。

受けないように気を付けて』


『分かった』


アミアは伝えながら、攻撃を避け、

どう攻めるかを考える。

そして、龍神ドドがハマった罠と、

先程のドゼビムの魔法生物攻略を思い出した。

同じ魔法は使えないが、似たような事は出来る。

アミアは光の網を思い浮かべ、

それをメレンの周りに展開する。

そして、一気に包み込んだ。


「何をする、この、この」


メレンがもがけばもがくほど、

光の網は食い込み、身体が傷付いていく。

動きを封じる事は出来た。

後は、魔法生物と同様に圧殺すればいい。

アミアは巨大な光のハンマーを作り出した。


===========================================================================


リンリは予想より苦戦していた。

アミアに言われて攻撃は受けないよう気を付けたが、

それでもデュエナの手足には細かい傷が出来、

そこから体力が失われていく感覚がある。


「どうした、小娘。

お前はアタシと違って不良品の烙印を押されたんだ。

だから、聖教団なんかに売られた。

アタシはあんたと違って完璧なんだ」


フラーネの言葉にリンリは傷付かなかった。

自分でも不良品だと自覚していたから。

救世主なんて呼び方の方が間違ってると。


「そうだよ。

でも、私はあなたよりは強い。

あなたも完璧なんかじゃない」


リンリにとって完璧なのはアミアのような存在だ。

色んな事を考え、悩み、それを解決する。

目の前の存在にそんな力は無い。


「うるさいなー、いい加減死んでよー」


フラーネから複数の刃が飛んでくる。

回転する刃は軌道が読みづらく、聖槍で弾くが、

一部が追い付かずにデュエナを傷付けた。


「ボンッ!」


そして破裂音が響いた。

音の方を見ると、メレンの融合体が破裂していた。

そして、その衝撃でリグムが吹き飛んでいた。


「馬鹿だねー、油断して自爆に巻き込まれて。

アタシは自爆なんかしなくても、

あんたを倒せるけどねー」


そして伸びた触手と、鎧の腕が、

空中のデュエナへと飛んでくる。

それを斬り、弾き、躱すが、

手数が多く、キリが無い。


(アミアちゃんを助けなくちゃ。

自爆も出来ないようにしてやる)


手数が足りないなら、増やせばいい。

デュエナの背中から4本の腕が生える。

2本の腕で聖槍を振り、

一本の腕で聖剣、一本の腕で刀、

さらに2本の腕にはそれぞれ光の剣を持つ。

リンリの意思に従い、

それらは敵の攻撃を次々と弾き、切り捨て、

徐々にフラーネの融合体へと近付いていく。

全力だろうフラーネは、

その猛攻に対処しきれない。

魔法生物の力で、それを防ごうとするが、

即座に魔法の力で、その部分は潰され、

無効化された。


「本当に何なんだよ、お前は。

なんでそんな事が出来るんだ!」


融合体は細切れにされていき、

残ったのは元々の神聖鎧、

セレグスの胴体部分だけだった。


「自爆はさせないよ」


リンリは光の剣を2本突き刺し、

それを瞬時に浄化した。

フラーネは声も出せずに消えていった。


「アミアちゃん、大丈夫」


覚醒を解いたデュエナは、

壁に倒れているリグムの方へと走り寄る。


「ごめん、油断した。

でも、ダメージは大したこと無い。

魔法生物の影響で、少し動けなかっただけだ」


アミアの言葉にリンリはホッとした。

リグムはゆっくりと立ち上がり、

身体についていた魔法生物を取り払う。


「エリエ達が心配だ、追いかけよう」


「待って、テルテちゃんも来たよ」


「大物でもいたのか?

なんか色々飛び散ってるな」


テルテのシウンも地下2階に降りてきた。


「ああ、フラーネとメレンを倒したところだ。

あたし達も下へ急ごう」


3機は合流し、更に地下へと急いだ。

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