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悪姫恋聖  作者: ねじるとやみ
第2部 大断層
22/82

8.魔犬との死闘

川の東側は西側に比べて妖魔の数があからさまに多かった。

悪魔たちも川より東には行っていなかったと考えられる。

それでもオーガが主流の群れなどが多く、デュエナ1機で何とかなっていた。

敵が多いとどうしても移動に時間がかかり、川を越えてから2日が経っていた。


『魔法で一掃しますから動かないでください』


デュエナが戦っているのは霊体の妖魔だ。

まだ日は落ちていないが高い木が生い茂る暗い場所だったのと、

高位の霊がいる事で集団で襲ってきたようだ。

リッチーが一応率いる形を取っており、レイスやゴーストが突進して襲ってくる。

特に霊体に対して強い神聖鎧なので、攻撃に対してのダメージは無いに等しいが、

数が多く、武器の届かない位置を飛んでいる為、魔法を使う必要がある。

テルテも霊体に効く聖水を持っているし、アミアも魔法を使う事は出来るが、

ここで使ってしまうといざという時に使えないので、リンリを頼る事になる。


『霊よ天に帰れ!』


浄化の魔法を空に向かって放ち、

その光の筋が出来たところにいる霊体が消滅していく。

最初の攻撃でリッチーが浄化出来たので、

一部の霊体は束縛から解き放たれ、散り散りになっていく。

残った霊体も浄化の魔法で消滅させ、何とか敵を追い払う事が出来た。


「神力の残りは大丈夫か?」


「まだ60%は残ってるので、大丈夫です。

このまま一気に東側の絶壁まで行きましょう」


リンリはアミアが戦えない今、危険を長引かせない為に、

自分が無理してでも進むべきだと思っていた。



「見えました、東側の絶壁です!」


先導したデュエナから喜びの声が聞こえる。

川を越えてから3日、大型妖魔に出会う事なく絶壁まで移動出来たのは幸運だろう。

日はすでに沈み、辺りは肉眼では見通せない。


「じゃあ少し周りを調査して、今日の休憩地を決めよう」


アミアも少し気を緩める。


「そうだな、リンリには感謝だな」


テルテも嬉しそうにいい、ルミルもそれに呼応して楽しそうに飛ぶ。


「と、待ってください。

壁の方に大型の妖魔の反応です」


やはりそんなにうまく行く筈がなく、そこには最後の難関が待ち構えていた。


「よし、うちが偵察してくる。

あんたらはちょっと待ってな」


テルテは恩返しという感じで飛び出していく。

テルテの能力を信じており、

デュエナだと見つかって戦闘になる可能性が高いと思うので、

二人はテルテを黙って見送った。


「ありゃケルベロスだ。

高さも鎧ぐらいある」


数分後テルテが戻ってきた。

大型の妖獣ケルベロスは二人とも知っていた。

3つの首を持ち、俊敏な運動性と、強力な火炎で攻撃してくる。


「すまんが、ケルベロスに効果があるものの知識はないな。

ヒュドラほどの頑丈さは無いだろうけど、炎のブレスはヒュドラ以上だ。

魔法への耐性も高いだろうし、

どうやってその素早さに対応するかが問題だろう」


テルテが知っている情報を話す。


「リグムが使えれば素早さとリーチで牽制し、

2機でならうまく仕留められたと思うが、デュエナ1機だと厳しいと思う」


「まだ神力も20%残ってますし、エネルギーも40%あります。

装甲もほぼ再生しました。

残ってる予備の武器を使って投擲で牽制して、相手の攻撃のカウンターを狙えば、

私でも倒せると思います」


アミアの言葉にリンリははっきりと返す。


「・・・リグムの発射装置も持っていけ。

壊しても構わないから思うようにやってみろ」


アミアは少し考えてからリンリを送り出す。


「はい、頑張ります!」


リンリは威勢よく答えた。



(私が何とかしなくちゃ)


リンリは祈りながらデュエナを進める。

荷物などは置いていき、右手に聖剣、左手に大型の盾、

足にはリグムが付けていた魔法の発射装置を付け、

背中には拾った剣や短剣、槍を積んでいる。

進んでいくと視界にケルベロスを捕らえた。

相手もこちらに気付いたようで、警戒しつつゆっくりと歩を進めている。


『魔法発動、ブレス耐性、射撃性能向上』


硬化の魔法を使うと運動能力が落ちるので、

今回はブレス対策と、牽制の投擲の精度を上げる魔法を先に唱える。


(攻撃開始)


ケルベロスとの距離が15メートルになったところで動きを止め、剣を地面に刺す。

背中から軽めの短剣を取り出し、相手に向かって投げる。

ケルベロスは警戒していた為、その攻撃を避け、

こちらの背後に回り込むように円形に走り始めた。

デュエナは旋回せず、センサーで相手の動きを確認し続ける。

ケルベロスはデュエナの斜め後ろまで移動したところで、

向きを変え、突進してきた。


(そこ!)


左脚部の発射装置は鎧が動かなくてもケルベロスを捕らえ続けていたので、

ケルベロスが向きを変えた瞬間、デュエナの斜め後ろに短剣を射出する。

ケルベロスは攻撃を避けようとはせず、長い牙を使って走りながら弾く。

そのタイミングを狙い、振り返りつつ背中の長剣をケルベロスに投げる。

しかし、短剣を弾いた正面の顔以外がそれを見ており、

横に飛びのく事で剣を躱した。


(目がいいのか。

それを潰さないと)


『閃光』


閃光の魔法をケルベロスに向かって放つ。

相手は怯むかと思いきや、こちらへの突進を止めない。

背中の槍を投げてみるが、簡単にそれを躱す。


(目くらましも効かないか。

正攻法でいくしかないのかな)


地面に刺した剣を持ち、接近戦の体制に入る。

あと5メートル、というところでケルベロスは止まり、

3つの口から炎のブレスを吐き出す。

咄嗟に盾を構え、ブレスの直撃を防ぐ。

魔法と盾の効果で大きなダメージは負わないが、

高熱での連続攻撃は徐々に機体の温度を上げていく。


(このままではマズイかな)


発射装置の最後の一本の短剣をブレスを吐いている真ん中の口へと打ち出す。

さすがにブレスを吐いたままでは避けられないようで、

一旦ブレスを止めてそれを回避する。


(行くよ)


ブレスが止まったのを確認した瞬間にデュエナは走り出す。

再びブレスが吐かれる前に接近戦に持ち込まなければ。

ケルベロスも相手の接近に気付き、近接戦闘の体制に切り替わった。

真正面での激突を避け、右に回り込もうと駆け出す。


(だったら!)


相手の動きを止める為に、ケルベロスが進む先に爆発の魔法を放つ。

ケルベロスは目の前の爆発を避ける為にこちら側に方向転換した。

相手が剣の間合いに入る。


(行け!)


デュエナは長剣を振りかぶりケルベロスの真ん中の頭に振り下ろす。

が、ケルベロスは加速してそのままデュエナに体当たりを食らわせてきた。

振り下ろされた長剣は柄の方が頭に当たる形になり、

ぶつかられた事で威力は落ち、大したダメージは与えられなかった。

デュエナは反動で後ろに飛ばされる。

ケルベロスの攻撃はそこで止まらず、

吹き飛ぶデュエナに向かって右足の爪で切り裂こうとする。

反射的に盾を前に出し、それを防ぐ。

爪が盾を引っかいて不快な音が鳴り響く。


(やっぱり速い!)


デュエナの体勢を急いで戻す。

試しに数回軽く打ち込んでみるが、ギリギリのところで躱され、

その都度カウンターで攻撃してくる。

相手の隙をつかなければ攻撃は届かない。

しかし、相手は早く、目もいい。


『アミアちゃん、テルテちゃん、お願いがあります』


ケルベロスとにらみ合いながら、二人に念話を飛ばす。

一人で戦うと言ったが、何かあれば協力すると二人は言ってくれた。

二人に危険が及ばない範囲で出来る事を頼みこむ。


『了解、それだけでいいんだな』


『こっちは準備しとくから、タイミングになったら言って』


『二人ともお願いします』


念話でも会話しながらだと油断が出来る。

その間にケルベロスの爪と牙がデュエナのいくつかの装甲を剥ぎ取っていた。

リンリはデュエナを後退させつつ、目的の場所へとおびき出す。


『リンリ、準備が出来た。

今から移動させる』


『うん、お願い』


まずアミアが武装を外したリグムを遠隔で歩かせる。

遠隔で動かせる距離は決まっているので、アミアも離れられないが、

あくまで囮としての役目なので、危険は少ない筈だ。


デュエナとケルベロスは正面に対峙していて、

リグムはデュエナの左斜め前、ケルベロスにとって右側から近付く形だ。

ケルベロスは新たな敵の出現に警戒し、

挟まれないようにデュエナの右斜め前に移動を始める。


『テルテ、お願い』


『了解』


次にテルテがケルベロスの進行方向に神聖鎧を出現させる。

これはラーラがテルテに渡した幻影を映す魔法道具で、

デュエナの映像を取り込んであり、それを映しているに過ぎない。

ケルベロスはこうなると左の幻影と右のリグム、

正面のデュエナの3つを気にする必要があり、下手に身動き出来なくなる。


『冷気付与』


リンリは聖剣に氷の力を付与する。

炎を吐くケルベロスにとって氷は弱点だ。

警戒しているケルベロスに対して、まず左手の盾を投げつける。

ケルベロスはそれを左手で弾く。

そのタイミングで両手で構えた剣を突進で突き出す。

ケルベロスは片手を上げた状態で、

左右の顔はそれぞれ別の対象を警戒していたので、

正面の顔の牙でそれを弾こうとする。

牙に剣は弾かれて顔から逸れるが、勢いは失わず、

剣はそのままケルベロスの首へと突き刺さる。


「ウォォォーー」


ケルベロスが苦痛の雄叫びを上げ、一歩後ろに後退する。

相手が怯んだ時が攻め時だ。

デュエナは二刀、三刀と剣を叩き込み、ケルベロスの額、前足に傷を負わせる。


(この調子なら)


そう思った矢先、ケルベロスが突然走り出す。

幻影のデュエナが位置を動かない事に気付いたのだ。

一旦幻影の方に走ってから左回りで移動を始める。


(まずい)


果敢に攻撃してくるデュエナより、動きが鈍いリグムを潰そうと考えたのだ。


『アミアちゃん、後退して!』


『分かった』


アミアも敵の動きに気付いて後退を始めるが、

本来の速度を出せず、アミア自身も走る必要がある為、

ケルベロスとの距離が縮まっていく。


(だめっ!)


リンリの頭は真っ白になった。

速く、とにかく速く。

デュエナはケルベロスを上回る速度で突進する。

ケルベロスも急いで近付いてきたデュエナには対応出来ない。

ケルベロスとリグムが10メートルぐらいの距離まで近付いた時、

デュエナはケルベロスにぶつかった。

剣は構えられておらず、

とにかくケルベロスを止めようと全力で体当たりをした形だ。

しかし、それが功を奏した。

デュエナの右肩のアーマーがケルベロスの左の頭にめり込み、見事に潰した。

両者弾け飛ぶが、ケルベロスは苦痛ですぐに立ち上がれない。


「ウォォォーーン」


雄叫びが響くが、その目の前には体勢を立て直したデュエナが立っていた。


(とどめ!!)


デュエナは飛び上がり、上からケルベロスの背中を突く。

剣は身体を貫通し、地面に突き刺さった。

ケルベロスが最後のあがきでブレスを吹き出す。


『神聖防壁!』


ブレスはリグムを狙っていたが、

それが届く前に光の壁をリグムの前に打ち立てる。

ブレスはリグムやアミアには届かず、ケルベロスは息を引き取った。


『よかった・・・』


ケルベロスに乗っかっていたデュエナもゆっくりと倒れる。


「リンリッ!」


その様子を見ていたアミアは急いでデュエナの方へ走っていった。



「リンリ、大丈夫か?」


デュエナのハッチを外から開け、アミアはリンリを外に出す。


「す、すみません、神力が足りなくて、自分の魔力で魔法を唱えたら、

動けなくなっちゃって・・・」


「いや、それはあたしのミスだ。

ケルベロスのブレスに対して、先に魔法を唱えるべきだった。

リンリ、よくやったな」


アミアは抱きかかえながらリンリの頭を撫でる。


「えへへ。

ちょっとは役に立てたみたいで嬉しいです」


「ちょっとなんかじゃない。

リンリはあたし達を守ったんだ。

誇っていい」


アミアは胸の奥が熱くなる。


「すみません、ちょっと休ませて下さい。

少し休めば魔力が回復すると思いますから」


「ゆっくり休め。

あとはあたしとテルテで何とかする」


「はい・・・」


そう言ってリンリは倒れる。

アミアは荷物から布を取り出して地面に敷いて、リンリをその上に寝かせた。

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