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素人おっさん、転生サッカーライフを満喫する【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【中学生編】

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第98話【閑話】:エレナ・ヴァスマイヤーの話

《エレナ・ヴァスマイヤーの話》


 3年前、私は運命の人に出会った。

 その人は日本から来たサッカー少年。野呂コータという不思議な人であった。



『来週にコータ・ノロという凄い選手が、F.S.Vのテストを受けにいく。エレナ、楽しみにしておくんだぞ』


 事の発端は、3年前の4月。

 ゲードおじ様から、そんな国際電話がかかってきたのだ。


(えっ? うちのクラブに日本の選手が? しかもゲードおじ様の推薦で?)


 突然の連絡で、当時の私は混乱していた。

 何しろゲードおじ様は滅多なことでは、選手のことを推薦しない人。


 しかも友人であるF.S.Vのオーナーの祖父の方ではなく、なぜ孫娘の私に連絡を?

 たしかに幼いころから可愛がってもらいっていたけど。


(でも入団テストが楽しみだわ……)


 何しろゲードおじ様は、普通の人ではない。

 元々はドイツを代表するレジェンド選手。ドイツ代表としてワールドカップでも大活躍した、生ける偉人である。


(しかもゲードおじ様……ゲルハルト氏が推薦した選手は、全員が各国の代表クラスになっているという……)


 引退した後のおじ様は、世界中の若手選手を探すことを、生涯の趣味としていた。


 そして、その鑑定眼は業界でも伝説と化している。

 なんと、ほぼ100%の確率で、推薦した若手選手は大成するのであった。


 だから今回の推薦にも、私の中の期待が高まる。


(コータ・ノロということは、日本人よね?)


 近年では日本のサッカー選手も、ヨーロッパに進出してきている。

 彼らの多くのフィジカルは、それほど高くはない。


 だが日本人の選手は勤勉で、細かいサッカーを得意とする者が多い。タイプ的にもドイツのサッカーにも合っているであろう。


(でも期待半分で、観察しないとね……)


 母親が日本人である私は、一応はドイツ人のハーフである。

 だからといって日本人選手をひいきはしない。


(コータ・ノロ……使える選手なら、いいのだけど……)


 3年前の私にとって、サッカーはあくまでもビジネス。

 選手はF.S.Vを復活させるための、手段でしかなかった。


 だから眉ツバで、その入団テストを観察しに行くのであった。



 入団テスト当日。


「す、凄いわ……」


 クラブの2階からテストを観察した私は、思わず声を上げてしまう。

 何故ならコータ・ノロという少年は、想像以上だったのだ。


「あの子、あれでまだ本当に13歳なの? 信じられないわ……」

 

 入団テストのミニゲームで、日本の少年は圧倒的であった。

 たしかに最初の数分間は、周りの大人の選手との体格差に圧倒されていた。


 だが、たった数分のミニゲーム中で、その差を一瞬で修正していったのだ。


「彼の凄さを、試験官たちは、まだ気づいていない? 無理もないわね……あの動きなら……」


 コータ・ノロは意図的にサポートのプレイに徹していた。組んだチームを勝たせるために、バランサーとして動いていたのだ。


「この私でも、運よく気が付いた、コータ・ノロの凄さ……」


 私は誰にも負けない自慢の力があった。

 それはサッカー選手を抜く観察眼。

 幼いころから本物の選手を間近で見ているうちに、身についた力であった。


「これは面白い人材が、入ってきたわね……」


 不振に仰ぐF.S.Vを変えるキープレイヤーを、3年前の私は探していた。

 そんなキーマンに日本の少年は化ける可能性があった。


 今後の作戦として、まずはコータ・ノロを2軍の試合に出場させる。

 きっと彼は結果を出していくであろう。あのプレイスタイルは、今のF.S.Vに変革をもたらしてくれるであろう。


 特別アドバイザーである私は、それを影からサポートしていけばいいのだ。


 そして何年か経ったら、彼は1軍に昇格するに違いない。

 そうなったこっちのもの……特別アドバイザーである私は、1軍の大改革を行う。


「必ずF.S.Vに、あの時の栄光を復活させてみせるわ……」


 自分の手駒としてコータ・ノロのことを使わせてもらう。

 当時の私は、コータのことを物として見ていた。



 でも、コータは想像以上の人だった。

 2軍に入団した彼は、自らの影響力でチームを改革。2軍を強力なチームに変革したのだ。


 コータはそのまま2軍を、7部リーグの優勝まで導く。更にはそのまま交流戦で、F.S.Vの1軍を倒してしまった。


 信じられないことに彼はたった数ヶ月で、1軍に昇格したのだ。


 そして交流戦での出来ごとを、私は今でも忘れなかった。


(『ユリアンさん、ボクと勝負してください! ボクが勝ったら、妹さんと仲良くしてください!』……か)


 交流戦でコータはそう啖呵たんかをきって、私を守ってくれた。

 当時、私とユリアンお兄様と最悪の関係だった。

 そんな感情を乱した私を、あの人は助けようとしてくれたのだ。


「しっかりしてくれ、エレナ!」

「君はこの2軍の特別アドバイザーだろう? 今は目の前の試合に集中するんだ!」

「皆の顔を見てみて? みんなエレナの言葉を待っているよ!」


 試合中も、そんな言葉で私を叱咤しったしてくれた。

 私情を挟んでサッカー道を外れていた私を、コータは本気で叱ってくれたのだ。


(コータ・ノロ……コータか……)


 今思えばこの時から、私はかれ始めていたのかもしれない。


 最初はただの商品としての選手、コータ・ノロのことを。


 一人の男性コータとして、見つめるようになっていたのだ。



 そんなコータにある日、私は自分の過去の話をした。


 幼い頃はサッカー少女だったこと。

 将来を有望されながらも、練習中の接触事故で大怪我を負った過去を。

 その相手はユリアンお兄様であり、それで不仲になってしまったと語った。


(今思い出しても、3年前の私は、本当に酷くんでいたわね……)


 サッカー選手の夢を断たれた私は、サッカーマネージメントを勉強し始めた。

 不振に仰ぐF.S.Vを、経営面から立て直す!……その野望を胸に、死ぬ気で勉強に励んでいた。


 でも当時の私は、サッカーをちゃんと見ていなかった。

 選手を商品として見てしまい、大事なサッカーの初心をすっかり忘れていた。


 そんな私に対しても、その時のコータは優しかった。


「そういえばボクの夢は……世界でも有数な選手なって、自分の生まれた街のチームを、プロのクラブにすることなんだ」


 コータは自分の夢を教えてくれた。壮大な夢を持っていると。


 彼の故郷には専用スタジアムがなく、ベースボール文化しかない地方都市。そこに本物のプロクラブを作る。

 それも選手として自分の力で、絶対に成し遂げるつもりだと教えてくれた。


 そして悩んでいた私に、次のように言ってくれた。


「ボクたちの夢はきっと叶うと思うよ!」

「うーん、よく分からないけど……エレナを見ていたら、そうかなと……ボクも同じだからね!」

「エレナが困った時は、ボクは助けてあげるよ! あっ、でも、ボクはサッカーしか出来ないけどね」


 って……。


 そんな優しく、そして頼もしい言葉をかけられたのは、生まれて初めてだった。


 その時は、まさに目から鱗が落ちた。 


 今までは一人で全部やろうとしていた私。そんな孤独な私のこと、コータは助けてくれると言ってくれたのだ。


 あの太陽のように眩しくらい笑顔で、私に言ってくれたの。



 その日から、まるで別世界にいるような、素晴らしい毎日が始まった。

 光を与えてくれたのは、もちろんコータ。


 1軍に昇格したコータは、更に大活躍していく。

 まずは不振に仰ぐ1軍の内部の大改革に、彼は挑戦していった。


 ユリアンお兄様との得点勝負をきっかけにして、1軍の全選手に闘志を与えていった。

 自らの退団を賭けたコータは、チームメイトに多大な影響を与えていく。


 いつの間にか全ての選手は、コータのことを認めていた。

 そして自分たちが忘れていた闘志を、再び燃やすようになっていたのだ。


「それからのF.S.Vは、本当に凄かったわね……」


 F.S.Vはドイツ3部リーグで優勝。次の年には2部リーグでも上位に到達。


 そしてつい先日の3月下旬試合で、ついには2部で優勝したのだ。


「コータの影響力は、本当に凄かったわね……」


 彼は周りにいる者を変えてしまう、不思議な魅力があった。

 コータのお蔭でF.S.V全体が、信じられないほどの好成績を残している。


 彼が続々したヤングチームも、ヨーロッパ屈指のチームに成長。

 コータと練習していたU-15も、急激に成長を遂げていたのだ。


「きっと、みんなは……コータのあの魔法にかかったのね」


 彼は周りの者に対して、特別な指導はしていない。

 常に全力で、サッカーに取り組んでいただけだった。


 だがその全力の度合いが、桁違い。

 そのことは一緒にプレイした者なら、誰でも分かるであろう。


 コータは常に本気の全力……自分の命を削る覚悟で、サッカーを楽しんでいた。

 だから一緒にプレイした者たちは、影響を受けていたのだ。


「今思い出してもコータは、本当にサッカーバカだったわね。だってサッカー以外のことに関しては、本当にマイペースさんだったし……」


 プライベートでのコータは、本当に不思議な人だった。

 スケジュールはよく忘れるし、周りのことを見ていない。事件としてはドリブル通学しすぎて、隣町にいった事もあった。


「私もコータと話したのは、サッカーのことだけだったわ」


 彼は常にサッカーのことしか話してこない。他の年頃の男の子と、はまるで違う毎日を過ごしていたのだ。


「そんな中で毎年のクリスマスパーティーだけが、唯一の別の思い出かな?」


 コータが入団した初年度。

 勇気を出して彼を、クリスマスパーティーに誘ってみた。

 ヴァスマイヤー家で毎年開催される、ユリアンお兄様の誕生を兼ねたパーティーだった。


「あの時のクリスマスパーティーは、本当に楽しかったわ……」


 タキシードを着込んだコータは、いつも以上にカッコよかった。

 だから私も頑張って、大人っぽいドレスに挑戦した。もちろんコータに気に入ってもらうために。


「でも毎年のパーティーで、コータいつも食べてばかり。私のドレスのことなんて、気づかなかったわ。でも、そこがコータらしいけどね……」


 思い出して苦笑いする。

 コータの頭の中にあるのは、サッカーのことばかり。

 きっと食べることさえも、彼にとってはトレーニングの一つなのであろう。


「あとクリスマスパーティーといえば、コータの友だちの澤村ヒョウマ……彼とコータの関係は……」


 澤村ヒョウマと再会したコータは、いつもべったりしていた。

 見ている私の方が、ビックリするくらいに仲良しだった。


 更に「ヒョウマ君は凄いんだよ、エレナ!」と、自分のことのように、誇らしげに語っていた。


(もしかしてコータは同性愛のケがあるのかな?)


 最初は、そう本気で心配した。


 だって彼は中等部の年頃の男の子。

 クラスの他の男子は、いつも女の子を口説く話しかしていない。


 でもコータの口から、女性の話しを聞いたことは一度もない。

 だから当時の私は本気で心配していたのだ。


「でも、アオイに相談したら、私の勘違いだったわね……」


 コータにはアオイという妹がいた。

 2年目から母親と共に、ドイツに引っ越してきた少女である。


 アオイは最初、私のことを警戒していたみたいだった。

 でも後日。私の方から話しかけたら、素直でいい子。私たち二人は仲良しになったのだ。


「澤村さんとお兄ちゃんの関係か……そういえお兄ちゃんは小学生の頃から『ヒョウマ君! ヒョウマ君!』って本当に大変だったのよ。まあ、親友というよりは、兄弟みたいな感じかな、あの二人は?」


 アオイのその話を聞いて、ひと安心した。

 そっか……澤村ヒョウマはコータにとって、大事な親友だったのか。


 それなら、あの密着ぶりも納得がいく。同性愛の疑惑が消えて、一安心した。


「ねえ、エレナはコータお兄ちゃんのことが好きなの?」

「えっ……」


 話の流れで、アオイにそんな質問をされた。いきなりの質問で、思わず言葉につまる。


「私がコータのことを……そうね、たぶん好きかな? 自分でもよく分からないけど……」

「それならアオイと仲間だね! アオイもお兄ちゃんのことが大好き! あと、エレナのことも好き」


「それならコータに変な虫が付かないように、二人で協力していかないとね、アオイ」

「そうだね! お兄ちゃんは鈍感で、マイペースだからね!」


 そんな感じで、アオイと協力していくことになった。

“コータ不可侵条約”という名目で、定期的に街のカフェでお茶会もするようになった。


 本当に楽しいお茶会だった。

 アオイは私にとって生まれて初めて出来た、同性で同年代の友だちかもしれない。


「本当にコータと出会ってから、私の人生はワクワクとドキドキの毎日だったわ……」


 正直なところ学生をしながら、特別アドバイザーの仕事するのは大変であった。


 でも中等部のクラス内は、いつも笑顔のコータがいた。

 そしてクラブや練習場にいけば、いつも真剣な表情のコータがいた。


 その顔を見ているだけで、私はいつも力を貰えた。

 特別アドバイザーとして大人たちと会議していくのも、まったく苦ではなかったのだ。


(このままコータが、一生そばにいてくれたら……)


 本気でそう考えてしまうくらいに、彼はかけがえのない存在になっていたのだ。


「でも、そんなコータも、ついに帰国することに……」


 強制帰国の命令は、本当に寝耳に水の事件であった。

 私も必死で国の機関に交渉したけど、覆ることはなかった。

 今から3ヶ月前の私は、目の前が真っ暗になっていた。


 でも、そんな時でも、コータは前を向いていた。


「すごく簡単なことだったんだ、エレナ! F.S.Vが明日から3月下旬まで全勝すると、その時点では1部昇格のラインを越えるんだよ!」

「これでF.S.Vは間に合うよ、エレナ! ボクたちの夢が叶うんだよ!」


 彼は最後まで夢のための諦めずに、足掻いていた。

 自分の不幸よりも、私やチームメイトのために決意してくれたのだ。


 そんなコータの頑張りのお陰もあり、F.S.Vは2部リーグで最短優勝。念願だった1部昇格の夢が、ついに適ったのだ。


「F.S.Vに念願の優勝の日がきた……そしてコータとの別れの日も……」


 優勝から数日が経った、あの日。

 コータとの別れの日がやってきた。


 あの日の私は勇気を出して行動した。人生で最大の勇気だった。


「あれ? ドイツにそんな習慣あったっけ、エレナ? でも、これでお願いも完了だね。じゃあ、エレナまたね! 3年間、本当にありがとね!」


 コータとの最後は、そんな言葉で別れた。


(私が人生で一番勇気を出して、死ぬほど緊張しながらキスしたのに……)


 本当に人の気も知らないで、コータは最後まで鈍感な人だった。本当にコータらしい最後の挨拶だった。


「でも、これで頑張れるわ……」


 自分の唇に指を当てる。

 時間にしてほんの1秒だけ。

 でも確かにあの人の温もりを、この唇に感じた。


 だから、この力があれば私は負けない。

 たとえ4年も待つことになっても、心が折れることはない。彼を想う気持ちは、私に勇気を与えてくれる。


(よし!)


 気持ちを新たにしたことで、今日の仕事にさっそく取りかからないと。

 これから今まで以上に忙しくなるのだ。



 私はそのままロッカールームに向かう。


 今日はこれからドイツ2部リーグの試合が始まろうとしている。

 F.S.Vにとって優勝をした後の、初めての試合であった。


 試合前のミーティングに参加する。


『ではヴァスマイヤー特別アドバイザー。試合前に選手たちに、何かアドバイスありますか?』


 ミーティングの最後に、監督から話しを振られる。

 先日の優勝確定の後で、今日の選手たちは気持ちが緩んでいた。


 私はそれを引き締めないといけないのだ。


『皆さん聞いてくださいませ。確かにF.S.Vは残り7試合を全敗しても、優勝が確定しています。でも、そんな気持ちの試合をしていたら、“あの仲間”に笑われてしまいますわよ?』


 私は選手に真剣に問いかける。

 どんな時でも常に死力を尽くしていた仲間のことを、胸に思い浮かべながら。


『たしかに、エレナお嬢様……もしもコータのヤツが見ていたら、そうですな』

『ああ。アイツはサッカーだけに関しては、鬼のように厳しいからな!』

『はっはっは……違いない!』


 驚いたことに選手たちも、私と同じ人のことを思い浮かべていた。


 これなら大丈夫。

 残り7試合もF.S.V軍団は、モチベーションは最高潮に高いであろう。


『その気構えならよろしいですわ。では私から、あと一つだけ試練を与えますわ』

『試練だと、エレナ?』

『はい、ユリアンお兄さま。F.S.Vは残り7試合で、一度も負けないようにしてください。このF.S.Vの名を、世界中に響かせるように』


 私の出した試練は、かなりの難題であった。


 何故なら今のところF.S.Vは9連勝中。

 一度も負けなし、ということは……引き分けを挟んだとしても、16戦で負け無しを、実践しなければいけないのだ。


 でも、この試練には大きな理由がある。本当に大事な理由があるのだ。


『なるほど、エレナ。F.S.Vと選手の底力を見せて、私たちを代表復帰させるためか?』

『ご名答よ、お兄様。いくら各国のサッカー協会でも、そうなったら放置しておかないでしょう?』


 2ヶ月間の代表辞退の事件で、選手たちには辛い汚点を残してしまった。

 今後の彼らの代表招集には、大きなハードルが出来てしまった。


 だが16戦で負け無し……その偉業を実現した選手たちを、各国のサッカー協会は放置しておくであろうか?


 いや、出来ないであろう。

 必ず代表召集の再打診をしてくる。


 何故なら今のF.S.Vの選手のパフォーマンスは、それほどまで優れている。

 どの国の代表チームも、喉から手が出るほど欲しい勢いなのだ。


(そして、もう一つの秘密の理由……これが上手くいったら、日本にいるコータも少しは安心してくれるかな?)


 コータは帰国する日のまで、辞退したチームメイトのことを心配していた。


 だから代表招集のニュースを見たら、きっと喜んでくれるであろう。

 いつものあの笑顔で、大喜びしてくれるに違いない。


『エレナお嬢様も誰かさんに似て、無理難題を言うようになったな……』

『だが16戦で負け無し、への挑戦か……面白そうだな!』


『ああ、コータのヤツに笑われないように、オレたちだけでも伝説を作ろうぜ!』

『そうだな。コータが帰ってきたときに、驚かせてやろうぜ!』


 選手たちのモチベーションは最高潮に達していた。

 彼はロッカールームで雄たけびを上げる。

 そして誓い合うのであった。今はここにいない仲間のために、これから死力を尽くすことを。


(コータ、日本で観ていてね……私たちと一緒に戦おうね……)


 そんな選手たちのユニフォームには、小さな刺繍ししゅうわれていた。


“14”


 それは日本に帰国してしまった仲間の背番号。

 そしてF.S.Vの運命を変えてくれた小さな救世主の印。


 選手たちが自ら望んで、ユニフォームに刻んだものだった。


『じゃあ、行くわよ、みんな!』

『『『はい、ヴァスマイヤー特別アドバイザー!』』』


 こうしてF.S.V戦士たちは戦場に向かう。

 一人の日本人の仲間のことを思いながら。


(じゃあ、いってくるから……コータ)


 そして私も運命の人の温もり感じながら、戦場へ向かうのであった。







 これは余談である。


『前世の歴史で、ドイツにはF.S.Vというサッカークラブが、過去にあった』


 このことに当人のコータは気づいていない。

 31歳の時に転生する時点で、“F.S.V”というクラブが前世では存在していなかった歴史を。


 何故なら前世のF.S.Vは、コータが高校生の時に消滅していた。

 4部降格してスポンサーが撤退。F.S.Vはアメリカの企業に買収されてしまったのだ。


 だが歴史は大きく変わっていた。

 一人の日本の少年が、歴史を大きく変えたのだ。


 そして今世のF.S.Vはドイツ国内だけではなく、ヨーロッパを代表するクラブへと躍進していくことになる。



「おお、ブンデスリーガーで、F.S.Vは大躍進だな! エレナたち、凄いな! よし、ボクも日本で負けないようにしないと!」


 だが当人コータは気がつくことなく、相変わらずサッカーボールを追いかけていくのであった。












『中学ドイツ留学編』は無事に終わりました。


次話からは『最終章:高校生編』がスタートします。


日本に帰国してからのコータが大活躍していきます。


最後まで頑張って書くので、お楽しみに!



あと、たくさん方に読んでいただき、本当にありがとうございます。


ここまでの評価や感想などありましたら、すごく嬉しいです。お気軽にどうぞです。


今後も頑張っていきます!

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