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素人おっさん、第二の人生でサッカーライフを満喫する 作者:ハーーナ殿下@青森県弘前市
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第31話:選ぶべき問題

 春の連休に行われた、トレセンから戻ってきた。

 次の日は平日だったから、通常通り小学校に行く。
 そして放課後はいつものように、所属するサッカーチームの練習に向かう。

「ほら、これがU―15サッカー日本代表の人たちのサインだよ! 凄いでしょう!」

 練習の後、貰ったサイン色紙をチームメイトに見せる。
 色紙には将来のJリーガー候補のサインが、ズラリと書かれていた。
 サッカー観戦オタクのオレにとっては、自慢の宝物である。

「えっ? これは誰のサインだ、コータ?」
「オレも知らない人ばっかりだ……」
「コータが日本代表のサインって言ったけど……」

 だがチームメイトたちの反応は、かなり寂しいものであった。でも、この反応も仕方がないのかもしれない。

 何故なら現時点で中学生のU―15代表の人たちは、まだ無名に近い。
 普通のサッカー少年でも、A代表チームクラスじゃないと興味はないのであろう。

「えーと、コーチは? もちろん知っていますよね?」
「U―15代表か……コータ、渋いセンスしてるな」

 最後の頼みの綱であったコーチも、かなり反応が薄い。
 くっ。コーチはサッカーミーハーなくせに、好みが難しいんだよ。

 でも皆の反応が薄いのも、仕方がないかもしれない。
 何故ならU―15代表の人たちが有名になっていくのは、高校を卒業してJリーガーになってからだ。
 その未来を知っているオレが、興奮し過ぎなのかもしれない。

「それよりコータ。オレたちの方のサインが凄いぞ!」
「えっ? 誰のサインですか、キャプテン?」

 キャプテンたち6年生の3人が、鞄から何やらサインボールを取り出す。
 一体誰のサインなのであろうか?
 手に取って見せてもらう。

「こ、これは、もしや元日本代表のアノ方のサイン⁉ どうしてキャプテンたちが⁉」

 オレは驚愕した。そのサインに見覚えがあったのだ。
 だいぶ前に引退した日本代表の選手。オレも大好きだった偉大な選手である。
 そのサインボールを、キャプテンたちが持っていたのだ。

「昨日までの連休で、オレたちも小学生の県のトレセンに行っていただろう? そこに来ていたんだ」

 キャプテンたち3人の6年生は、県の方のトレセンに招集されていた。
 この元選手がスペシャル指導員で来ていたらしい。

 県トレセンに参加した小学生は、全員サインを貰っていたらしい。有名選手のサインに、全員が大喜びしていたという。

「くっ……キャプテンたちに、完敗だ……ガタッ」

 オレは膝を崩して倒れ込む。
 まさかこんな東北の田舎の県トレセンに、そんな偉大な選手が来るとは予想もしていなかった。

 ナショナルトレセンと全く同じ日程だったので、オレは情報も見ていなかった。
 知っていたらナショナルトレセンに行くか……きっと悩んでいたかもしれない。

「コーチ、次に有名人が来るトレセンがあったら、ボクにも教えてください! 絶対に参加出来るように、頑張ります!」
「本当はナショナルトレセンの方が、凄いんだけどな……相変わらず、コータは。そうだな、夏と秋の大会も頑張ったら、検討してやる」
「ありがとうございます、コーチ!」

 コーチから約束の言質はとれた。
 オレは気合いの声で返事をする。

 でも、コーチの言葉にあるように、オレは浮かれている場合ではない。
 何しろ5年生の年度は始まったばかりなのだ。

 これから夏のサマー大会や、秋にも大きな大会がある。また夏休みの強化合宿や、他県への遠征試合も多い。
 サッカー少年たちにとって、連休や週末は試合の漬けの毎日なのだ。また地区と県トレセンがあるかもしれない。

(そういえば、県トレセンに先輩たちが呼ばれるのは、今回が初めてだな……)

 県トレセンは、各県で個人的に上手い子どもを集めて、教育する機関である。
 ここだけの話、県トレセンに呼ばれるのは、結構難しい。
 その証拠にオレが入団した4年前は、県トレセンに呼ばれた先輩は、チーム内には一人もいなかった。

 つまりリベリーロ弘前ひろさきはチームの総合力が、4年前より確実に上がっているのだ。
 全国大会に初出場でベスト8。それからの、翌年は全国優勝。
 この2年間の実績は、まぐれではなかった。個々の実力がともなっていたのだ。

「さあ、コータ。親の迎えがくるまで、居残り練習していこうぜ!」
「オレたちも県トレセンで勉強してきたからな」
「いつまでも後輩にはデカい顔はさせないぜ」

 6年生の先輩衆は居残り練習を始める。
 これはオレが選手コースに入った時から、続いている習慣だ。また朝6時からの朝練も習慣化していた。

(オレは本当に歴代の先輩には、恵まれてきたな……)

 生意気な後輩であるはずのオレに、歴代の先輩たちは嫌な顔をしたことはない。
 いつも率先して自主練習していた。
 だから今の新4年生たちも見習って、自主的に練習してくれるのだ。

「先輩たち、ボクもトレセンの成果を見せますよ!」

 リベリーロ弘前が強くなってきたのは、やはり偶然じゃなかった。
 今後もチームは強くなっていくであろう。
 この練習の熱気が歴史となり、チームのカラーとなっていたのだ。

(いつも思うけど、やっぱり、このチームはいいな……)

 ナショナルトレセンも刺激があって楽しかった。
 でも自分のチームがやっぱり一番だ。
 このチームで今年も絶対に全国大会までいきたい。



 こうして月日は流れていく。
 オレは春も夏も関係なく毎日が、相変わらずサッカー漬けであった。

 小学生5年生になったことで、自分の身体もどんどん成長していく。
 これまで出来なかった技も習得していった。トレセンで磨いた技を、更に個人で昇華していく。

 またチームの方も順調に進んでいた。
 総合力が上がったことにより、夏の大会でも勝ち進んでいくことができた。
 もはや県レベルでの大会では、敵なしてで全優勝をしていく感じだった。

 今年は新しい試みとして、全国のいろんな大会にも参加していた。
 Jリーグのジュニアチームも参加していたので、苦戦もした。だが、かなり勉強になる大会だった。

 今のところのチームの主力はキャプテンたち6年生と、オレとヒョウマ君の5年生コンビ。あと女の子で4年生の葵である。

 でもオレたち以外の5年生たちも、レギュラー枠として成長していた。更に4年生たちも急成長も著しい。
 この分なら来年以降のチームの総合力は、更に上がっていくであろう。

 そして12月の全国大会に向けての、秋の10月の地区大会と11月の県大会。この3つ向けてチームも仕上げに入っていく。

 今年も狙うのは全国大会で優勝&連覇である。その為には途中で負ける訳にはいかないのだ。

 チームが一丸になって迎えた、春と夏の季節。オレたちは充実したサッカーライフで、過ごしていくのであった。



 更に季節は夏の終わり、晩夏になっていた。

「よーし、今日もお疲れさま!」
「「「コーチ、ありがとうございました!」」」

 いつものようにチーム練習をして、夜7時の終了時間がやってくる。
 この後は父親が自転車で迎えに来るまで、居残り練習をしていく。

「おい、コータ。ちょっと来い。あと、澤村もだ」
「えっ? はい、コーチ」

 オレとヒョウマ君は練習後に、コーチから呼び出しをされた。
 コーチはかなり神妙な顔をしている。

 いったいどうしたのであろうか?
 そういえば数ヶ月前にも、こんな場面があったような気がする。

「そんな、硬くなるな、コータ。お前たち、“年代別サッカー日本代表”は知っているな?」
「年代別? はい、一応は……」

 前世でサッカーオタクであったオレは、もちろん知っている。

 サッカーの国際試合では、選手資格に制限を設けている場合がある。
 たとえば満23才以下や満18以下などで、その資格を満たす範囲で選手を選出しチームを編成する。

 つまり“年代別サッカー日本代表”とは、年齢によるサッカー日本代表であり、将来の国際A代表候補といって過言ではない。

 その年代別代表が、いったい何なんだろうか? 
 もしかしたらヒョウマ君が、年代別代表に選ばれたのかな? 
 全国大会の得点王でエースの彼なら、十分に有り得る可能性だ。

「察しの通りだ。喜べ、お前たちが年代別代表の特別枠メンバーに選ばれたぞ」
「おお、流石はヒョウマ君! えっ?……ボクもですか?」

 コーチの言葉は予想通りだったな。
 だが大きく外れていた部分があった。

 それはまさかであった。
 なんとこのオレも年代別代表の特別枠に選ばれていたことだ。

「そうか……ボクが小学生以下のU-12の日本代表のメンバーに……」

 突然のことに耳を疑った。
 そして本当にビックリして、心臓がバクバクしてきた。

 特別枠でも年代別代表か……本当に嬉しい。
 ここだけの話、昨年の全国大会の優勝よりも、個人的には嬉しいかもしれない。

 あの日の丸をつけて戦えるのだ。
 全国のサッカー少年にとって、世代別代表に選ばれることはまさに夢なのだ。

「あれ?」

 そんな感動の最中。オレはとあることに気が付く。
 サッカーオタクの記憶を検索していく。

「でも、コーチ……今の日本代表にU-12ってないですよね?」

 オレの記憶が確かなら、この時代の日本代表にU-12という枠はなかった。
 年齢的にはもう少し上の年齢しかないはずだ。

「ああ、U-12ではない」
「コーチ、ということは……もしかして?」

 このやり取りで、何か嫌な予感がしてきた。

「招集状が来たのは、U-15日本代表の特別選手枠だ」
「やっぱりか……」

 オレとヒョウマ君に来たのは、前回と同じU-15の招集状であった。
 本音を言うならばU-15でも凄く嬉しい。半端なく嬉しい。

 でも前回のトレセンのことがあるので、何か起きるか油断は出来ない。

 コーチから招集状の詳細とスケジュールを見せてもらう。
 もしかして何か見落とし気があるのかもしれない。

「コーチ、このスケジュールって……」

 オレは代表のスケジュールで、とある部分を見つける。

「コーチ、このU-15代表のスケジュールと、地区県大会のスケジュールが……?」
「ああ、そうだ。招集状に応じたら、お前たちは地区と県大会に出られない」

 まさかのブッキングであった。
 夢の年代別代表のスケジュールと、リベリーロ弘前ひろさきの一番大事なスケジュールが、ちょうど重なっていたのだ。

 もしも招集状に応じたら……オレとヒョウマ君抜きで、チームは地区県大会に挑まなくていけないのだ。

「そんな。どうしよう……」

 思わず言葉を失ってしまう。

 何故ならこのままでいけば、チームの得点源のほとんど占める二人の欠場となる。
 最悪の場合、チームが全国大会へ出場できない可能性が大きかったのだ。
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