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ハッピーエンド

 それから私達はラウルに連れられて、屋敷へ帰宅した。

 そこにはウィリー王子や私の両親などがいる。

 丁度身代金の準備を開始した所だったらしいのだが、私達は戻って来たのでそれなくなった。


 またその謎の怪人に関しては、数日後、別の国をにぎわせているらしいと新聞の記事になっていた。

 けれど、それらは些細な内容にすぎない。


「ラウル」


 ぽつりと私は愛しい彼の名前を呼んだ。

 今日は雨。

 メイドたちが配達された新聞にアイロンがけをするのを横目で見ながら、私は早く終わらないだろうかと思う。


 そこには、とある人物が王位を継いだといった内容が書かれている。

 遠目で見たので見出ししか私には分からないが、そこに移っている写真の映像は、ラウル。

 黒白のそれではあるけれど、それでも彼には変わらない。


「まだ数日なのに、とても寂しくなるのはどうしてだろう」


 一人呟くも、答えはない。

 あっても困るが。

 昨日はキャンディがこの屋敷に遊びに来て話をして、それがウィリーの愚痴なのか惚気なのか分からないものだったから……あてられてしまった。


「ラウル」


 もう一度、名前を呼んで窓の外を見る。

 土砂降りの雨。

 この屋敷をとりまく木々は全て、雨の中に滲んで水の中に落とした絵の具のよう。


 いつもと違う世界が窓の外に広がる。

 それならば、ラウルの傍の世界もきっとこんな風にあいまいになって。


「ラウルとの距離も近くなればいいのに」


 ぽつりとつぶやいた私はそこで、金色を見た。

 それが何なのかをすぐに理解した私は駆け出す。

 メイドがクリスティーヌ様! と呼ぶ声が聞こえたがそれどころではない。


 いつもよりも廊下が長く感じる。

 早く、早く。

 私は走る。


 走って、走って、走って。

 丁度玄関に案内された所で、私は辿り着いた。


「ラウル」

「クリスティーヌ」


 名前を呼ぶと微笑むラウル。

 今だ夢を見ているのでは、そんな気持ちになりながら私はラウルに抱きつくと、ラウルは抱きしめ返してくれた。

 しばらくは一言も発せず、お互いを感じて、それから体を話す。

 そこでラウルは微笑み、


「君を花嫁にするために、迎えに来たよ。クリスティーヌ」


 そう、会いたくてたまらないラウルが、私の前に現れ、待ち望んでいた言葉をくれる。

 その後の事は、あまりにも色々あって忙しかったがために割愛するけれど……数日後には挙式を上げて、私達は結ばれる。

 ラウルの城で私は暮らすことになって。


 新婚のせいもあるのか、


「愛してる」

「私も愛してる」


 夢ではないとお互い自分自身に言い聞かせるようにそう言いあって。

 城のバルコニーに出てキスをする。

 そんな私達を祝福するような、甘い花の香りが私達のそばで満ちていたのでした。





「ハッピーエンド」


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