第84話 女王のメイドたち
糖京都心。甘チョコ区。女王住居。
女王の寝室。
「は!」
アンコリンは、ふかふかのベッドから起き上がった。
専属メイドが、345人いる夢を見た。
多すぎだ。
女王住居の大きさもあやふやで、明らかに夢だった。
「おはようございます。女王アンコリンちゃん」
専属メイドのサブリーダー玉緒さんが、朝の顔を拭くタオルを持ってきてくれた。
その後、髪をとかしてくれる。
「あ、何か。ありがとう。玉緒さん」
いつもは家政婦業の女性に、やってもらっていたのだが、玉緒さんに代わってから、少しうれしい。
同じ、恋する女の娘だからだろうか。
「キミトくんとは、上手く行ってるの?」
「上々だよ。女王アンコリンちゃん」
アンコリンが、スア丸と仲良しなように、一緒に仕事をしながら、時間を共有していると言う。
好きな人と職場が同じというのも、なかなか良いものだ。
アンコリンも、それは、実感している。
甘味女王としての仕事というか、恋の応援を主に頑張っていると、不安な時も、どんな時も、スア丸と一緒なのが良いからだ。
うれしくなる。
第84話 女王のメイドたち
女王の食卓。
朝食。
「今日は、レタスコッペパンですパン」
交代制料理人の一人。コッペパンの精霊コッペさま。
「はい、女王アンコリンちゃん」
「ただいま、お持ちしました」
玉緒さんが、アンコリンの分。
キミトくんが、スア丸の分を持ってくる。
新鮮なレタスは、みずみずしい。
「しん、せ〜~ん」
「新鮮だワン」
朝のレタスは、シャキッとしている。
玄関。
「今日のスケジュールは、甘味宮殿で、甘味精霊問題の会議があるそうです」
キミトくんが、スケジュール帳を読み上げる。
「会議だね。頑張れ」
「私、会議って、いつも途中で眠っちゃうのよね」
「可愛いワン」
玉緒さんの声援に、頑張れるか不安なアンコリン。
スア丸は、寝顔を見るのが楽しいらしい。
「女王。忘れもの無いピヨ?」
「ピヨピヨ」
「ピーヨ」
ヒヨコメイドたちが、集まってくる。
そして、専属メイドが総出で、頭を下げる。
「いってらっしゃいませ」
糖京都心。甘チョコ区。甘味宮殿。
駐車場。
「到着しました。女王アンコリン。スア丸くん」
女王専用車の専属運転手シボルさまが、車のドアを開けてくれる。
「いつもありがとう。シボルさま」
「ご苦労ワン」
玄関。
「おはよう」
「お待ちしていましたよ」
精霊代表バーニさまと、お目付け役のメイプルくんが出迎えてくれた。
「久しぶりに女王住居を出たわ」
「専属メイドたちが帰ってきましたからね」
「また、恋の応援してたんだろ。アンコリン」
メイプルくんとバーニさまが、笑っている。
自身の専属メイドたちの恋の応援すらしてしまう。
笑うしかない。
「何で、笑うのよ。女の娘は、いつも真面目に恋してるの」
女の娘は、いつも、恋に大真面目。
全力を出している。
バーニさまや、メイプルくん、甘味精霊たちが、仕事に全力を出すより、もっともっと力を使っている。
女の娘は、運命の恋を見つけたら、全力で頑張る。
今回は、玉緒さん。
年下の男の子との恋を叶えた。
恋人同士になって、これから、ずっと大好きな人と一緒にいる。ずっと笑顔で過ごす。
女の娘は、恋するために生まれてきたのだ。
会議室。
「ぐう」
アンコリン、寝ている。
「まだ、会議すらはじまってないぞ。眠り姫」
「寝顔が可愛いワン」
「メイドたちの恋の応援に疲れたんですね」
バーニさま、スア丸、メイプルくんは、代わりに会議に聞き入った。
内容は、甘味精霊のメンバーの見直しについて。
新しい甘味精霊を加える話が議論された。
「アンコリン。起き〜るワン」
スア丸にほおずりされて、アンコリンは目覚めた。
「は!」
会議を思い出す。
会議室には、スア丸以外にバーニさまとメイプルくんしか残っていなかった。
いつものメンバーである。
「いったい、何があったの?」
「寝不足なのか」
「会議は、終わりましたよ」
どんな話かは、くわしく教えてもらえなかった。
会議が終われば、帰るだけ。
帰れば、玉緒さんたち専属メイドが出迎えてくれる。
女王住居に帰るのは、いつもホテル暮らしのような、綺麗な場所に、“戻る”だけのイメージだった。
しかし、帰る。そう思える。
「私、帰る場所ができた気分」
「僕も、ずっと一緒だワン」
女王住居に、“帰る”と、専属メイドが待っていてくれた。
「おかえりなさいませ」
「ただいま」
ジャパン国。糖京都。
女王住居に専属メイドたちが退院してきた。
先代シュガーリーの頃からのメンバーは、皆んな良い人たちだったね。
その中で、キミは、玉緒さんの恋を叶えた。
キミにとって、女王住居は、本当の家になったんだ。




