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底辺職の下剋上 〜見捨てられた4人でパーティーを組んだら、理不尽な世界が崩壊し始めた〜  作者: yamayo8


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休息と、銀のミサンガ

1. 資産の底付きと元ドブさらいの本領発揮


装備を一新し、宿代を支払ったことで、俺たちの手持ちの現金は底を見せ始めていた。だが、これは決して無駄遣いではない。次なる「攻略」を安全かつ効率的に進めるための、必要不可欠な投資だ。


翌朝、俺たちはギルドの扉をくぐった。

「アラト、私、今日は資料室で魔法の基礎を頭に入れたいわ」

「ああ、頼む。俺は稼ぎと『自身の強化』を兼ねた依頼を受けてくる」


リナを資料室へ見送り、俺は依頼ボードの隅に目を向けた。分厚い埃を被ったその紙には、こう書かれている。


【依頼:王都中央汲み取り槽の緊急清掃】

・報酬:50,000ガルド

・備考:王都中の汚物が集まる槽。異常な悪臭と有毒ガスにより死者も出ているため、清掃員が逃亡。


報酬は破格だが、命の危険と拭いきれない悪臭のため、誰もが避ける依頼だ。だが、俺だけは知っている。この溜まりに溜まった「不浄」こそが、俺の職業特性を最も効率よく高めるための「最高の狩場」であることを。



2. 爆速の清掃と「貴族街」への道


昼過ぎ、俺は早くも冒険者ギルドへ戻り、受付のミーナに依頼達成を報告した。

「……えっ? あ、アラトさん、もう戻られたんですか?」

「ああ。終わったぞ。確認してくれ」

「ま、まだ数時間しか経っていませんよ……? 嘘はよくありません」


周囲の冒険者からも「どうせ逃げ出してきたんだろ」という疑いの目が向けられる。渋々、ギルド職員が現地確認に向かったが、戻ってきた彼は顔を真っ青にして叫んだ。

「信じられん……あんな底なしのヘドロが、新品のように綺麗になっている!」


ギルド内が騒然とする中、職員が詰め寄ってきた。

「あんな地獄、どうやって掃除したんですか!?」

「ドブさらいだからな。得意なんだ。……次はあるか?」

「そ、それなら……貴族街の汲み取り槽で緊急案件があります! 報酬は200,000ガルド。ですが、あそこの貴族様たちは気難しくて……」

「金さえ払うなら、誰が相手でも構わない」


俺はそのまま貴族街へと足を運んだ。

区画に入った瞬間、鼻が曲がりそうな強烈な悪臭が漂ってきた。沿道に立つ豪奢な服を着た貴族たちは、香水の染み込んだハンカチを鼻に当て、あからさまに顔をしかめている。そして、これから清掃に向かう俺を見るなり、「薄汚い平民が臭いを持ち込んだ」と言わんばかりの冷ややかな視線を向けてきた。


そんな理不尽な態度は「無名の器」でサラリと聞き流し、俺は問題の巨大な汲み取り槽へと足を踏み入れた。


そして、数分後。

貴族街を覆っていた悪臭が、まるで幻だったかのようにスッと消え去った。


「おお……! 臭いが消えたぞ!」

「なんて清々しい空気だ!」


歓喜の声を上げる貴族たち。だが、汲み取り槽から作業を終えて出てきた俺の姿を見た瞬間、彼らの歓声はピタリと止まった。


無理もない。地獄のようなヘドロの海に潜ってきたはずの俺の服には、ただの一滴も泥跳ねがなく、汚れひとつ付いていない新品同様の綺麗さだったのだから。

すべては俺のスキル【不浄なる循環】が、汚れも悪臭も残らず吸収してしまった結果だ。


呆然と口を開ける貴族たちを背に、俺は溢れんばかりの不浄を経験値と解析エネルギーへと変換する心地よさを味わいながら、悠々とその場を後にした。


【解析中:勇者の加護——解析度 18%……21%……24%】



3. 深夜のクラフト:銀色の「約束」


泥と悪臭にまみれた二日間の労働を終え、追加料金で用意してもらったお湯と布で、入念に身体の汚れを拭き落とした深夜。

リナが隣のベッドで静かな寝息を立てているのを確認し、俺は購入した「賢者の糸」を取り出した。前世の記憶を頼りに、銀色の極細の糸を丁寧に編み込み、ミサンガを仕上げていく。


(リナは耐久力が20しかない。少しでもあいつを守れるように……)


無意識のうちに込めた祈りのような思考が、糸の編み目を通して魔力として流れ込んでいた。そのミサンガは単なる演算補助を超え、リナが受けるダメージの一部を俺へと流し込んで肩代わりする、特殊な繋がり(リンク)を帯びていた。



4. 運命の三日目:理を破壊する「青い炎」


翌朝。俺は目を開けたばかりのリナの手首に、完成した銀のミサンガを無造作に結びつけた。

「……これ、リナの助けになるかと思って作ったんだ」


リナが不思議そうに手首のミサンガを見つめた瞬間、彼女の瞳に『魔力視』が発動した。

銀色の糸を通じて、アラトの魔力が自分の心臓へと優しく、そして力強く流れ込んでくる光の軌跡。「自分が傷つけば、アラトが痛みを引き受ける」という構造を、知力95の彼女は一瞬で論理的に理解してしまった。


「あ、アラト、これって……その、つまり……っ!」

リナの顔が、耳の先まで一瞬で真っ赤に染まる。

「どうした? 演算の補助になるはずだが」

「ば、バカ! アラトのバカ!……でも、ありがとう」


リナはそのまま俺の服の裾を引き、演習場へ行きたいと言い出した。資料室で読んだ魔法を試したいのだという。

受付でミーナに場所を聞くと、彼女は目を丸くした。

「リナさん、魔法を使ったことがないんですか? 本を読んだだけでいきなり実戦だなんて……心配なので私も立ち会います!」


裏手の演習場へ移動し、立ち会いの職員はあくびをしながら言った。

「まぁ初級魔法ですから。あの木の的を壊せでもしたら大成功ですよ」


リナが一歩前に出る。彼女の脳内では、資料室で理解した魔術式から「演出用の無駄」を削ぎ落とし、魔力効率を最適化した術式が展開されていた。


「……『火球ファイヤーボール』」


放たれたのは、初級とは言い難い、異常な高温を示す「青い炎の球」だった。

炎球は木の的を分子レベルで蒸発させ、そのまま背後の頑強な石壁に着弾。石をドロドロのマグマに変えて溶かし抜いた。


「「…………」」

ミーナと職員は腰を抜かし、絶句している。

「こ、これ、なんの魔法なんですか!?」

「え? 初級魔法の本に載ってた火球だけど……これが普通じゃないの? 魔力効率を計算して、一番無駄なく燃やすとこうなるはずなんだけど」


それは魔法の常識ではない。科学や物理法則の知識がほとんどない世界で、自らたどり着いたひとつの答えだった。



5. 鍛冶屋にて:不浄の完成


夕方。俺は一人で裏通りの「錆びた鉄槌亭」を訪れた。

ドワーフの親父が、ニヤリと笑って真っ黒な布に包まれた「それ」を差し出す。


「待たせたな。こいつはお前の魂にしか馴染まねえ、呪われた一振りだ」


不浄の短剣アンピュア・ダガー

布を解くと、周囲の光すら吸い込むような、鈍い黒色の刃が現れた。

俺が柄を握った瞬間、身体の奥深くで「器」に馴染み始めていた「ヴィンスの加護」が激しく共鳴し、刃の表面にどす黒い稲妻が走った。


「……最高の相棒だ。親父さん、感謝する」

「ふん。せいぜい使いこなして、長生きしな」


俺は短剣を腰のホルスターに収め、店を出た。

知識、防具、そして武器。すべての準備は整った。これでようやく、理不尽なこの世界の「攻略」が本格的に幕を開ける。


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現在のステータス(第九話終了時点)


【 アラト 】

・レベル:2

・解析度:24%(汲み取り槽の連続清掃により大幅UP)

・装備:不浄の短剣(New!)、野牛の革の胸当て、丈夫な麻のシャツ

・状態:専用武器を獲得。同化した「加護」の力が武器を通じて顕現し始めている。


【 リナ 】

・レベル:2

・知力:95 / 素早さ:42

・スキル:魔力視、速読、言語理解(中級)、魔法最適化(New!)

・装備:鹿革のベスト、賢者の糸のミサンガ(New!:ダメージ肩代わり効果)、銀細工のアンクレット、ワンピース、銀猫の毛皮

・状態:アラトの「想い」の構造を理屈で理解してしまい、猛烈に赤面中。


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