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底辺職の下剋上 〜見捨てられた4人でパーティーを組んだら、理不尽な世界が崩壊し始めた〜  作者: yamayo8


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プロローグ:22時の空席と、神を笑ったゲーマー

2026年4月15日、21時45分。

モニターの微かな明かりだけが、薄暗い自室を青白く照らしていた。

画面の中では、超高難易度RPG『ドラゴンファンタジー(DF)』の最終局面、魔王城の重厚な門が映し出されている。


チャット欄は、俺——日本一の実況者・あらたの挑戦を待つ3万2000人の熱狂で、視認不可能な速度で流れていた。


『あと15分……伝説が始まる』

『アラトさん(前世のハンドルネーム)、頼むぞ。5年越しのエンディングを見せてくれ』


「……今日、全部終わらせてやるよ」


俺はマイクを切ると、震える指を組んだ。

5年間、俺はこのゲームに人生の全てを捧げてきた。1フレーム単位の操作精度、何万行にも及ぶダメージ計算、そして数千回に及ぶ全滅。攻略サイトすら「クリア不可能」と投げ出したこのクソゲーの「正解」を、俺だけが掴んでいた。


しかし、運命はあまりに安っぽく俺を裏切った。

配信開始直前、エナジードリンクを買いに外へ出た俺は、道路に飛び出した一匹の白猫を庇い、大型トラックのライトに包まれた。

激しい衝撃、宙を舞う缶、そしてアスファルトに広がる自分の血。


(……ごめん、みんな。22時の約束、守れそうにねえわ……)


意識が途絶えた。

次に目を開けた時、俺は真っ白な、上下の概念すら曖昧な空間に立っていた。

目の前には、俺が助けたはずの白猫が、神々しい後光を背負って座っている。


『3万2千人を待たせて一匹の猫を助けるか。効率の悪い、実に見上げた愚か者だね』


猫が、喋った。いや、脳に直接言葉が流れ込んでくる。


「……効率の話をしたいなら、俺がこの5年間で何回『最初から』を選んだか数えてからにしてくれ。俺の身体には、全滅した数千通りの失敗が、死の記憶として刻まれてるんだ。……アンタが神様ならわかるだろ? 俺が選んだのは、常に最も期待値が高く、かつ誰も到達できない『論理的な正解』だ」


『面白い。君の魂は、あつらえ向きの栄光では輝かないようだ。君が愛したあの「DF」の世界……あれは私がこの世へ流した断片だ。君をそこへ送ろう。ただし、君がこれまでに積み上げた「ログ」が、君の難易度を決定するよ』


俺の魂が選んだのは、貴族イージーでも平民ノーマルでもない、誰もがゴミだと切り捨てた「ハードモード」の運命だった。


『……いいだろう。3万2千人の視聴者の代わりに私が見届けよう。……死ぬなよ、アラト』


白猫が不敵に喉を鳴らした瞬間、視界が爆発的な光に呑み込まれた。


「——っ!?」


次に目を開けた時、俺の視界の端に「それ」はあった。

DFプレイヤーなら見間違えるはずのない、あの青半透明のウィンドウ。


「……ステータスボード? なんでここに……」


念じると同時に、ウィンドウが視界の中央へ滑り出してきた。

名前、レベル、職業、状態……。ドットの粗さまで前世で愛したゲームのUIそのものだ。だが、何よりも俺を驚かせたのは、画面右下で点滅する「1」の通知アイコンだった。


誰もいるはずのない、この世界のメッセージボックス。

震える指でそれを開くと、一通のテキストが表示された。


『これはぼくからのプレゼントだよ。君の配信、向こうではもう見られないからね。特等席で楽しませてよ。』


俺は思わず、虚空に向かってニヤリと笑った。

「粋なことしてくれるじゃねえか。……いいぜ。絶対魔王倒すから、そこから見ててくれよ!」


光が完全に収束し、俺の意識は泥の臭いと共に、新しい肉体へと定着した。



***


最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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