6-11 丹波亀山
寺で村人たちと共に一夜を明かした三人は、引き続き領内を見廻った。
いくつか軽微な被害は確認されたものの、家屋の倒壊などの大きな被害は見られなかった。
被害に応じて修繕の差配や必要な物資の手配を進め、領内の巡視が終わったのは地震発生から三日後のことであった。
永重ら三人は巡視を終えると休む間もなく、丹波亀山城に在る永勝へ仔細を報告するため、快晴のなか帰路についた。
その道中――
馬をずっと襲歩で走らせ続けることは出来ず、少し休ませるため三人は常歩で轡を並べていた。
「重兼殿はおいくつなのです?」
思い出したように半佐が聞いた。
「ああ……そういえば申しておりませんでしたな。
某は二十六になり申した」
「では、我らが義兄弟としたら長兄ですね」
半佐は笑いながら応えた。
「ご自宅は城下にあるのですか?」
と続けて問うと、
「うむ。若殿の御家からはおおよそ半里ほどだな」
重兼はあっさり答える。
「被害は無かったのですか?」
「大きな被害は無かったと思う。
女房に任せてすぐ登城したゆえ、細かくは……」
「それは良かったですね」
――少し間が空き、三頭の馬の蹄だけが道に響く。
「「…………にょうぼう???」」
永重と半佐の声が重なった。
「あれ?
これも申しておりませなんだか。
某はすでに妻を娶っておるゆえ……子はまだですが」
「「ええーーーー!」」
再び、永重と半佐の声が重なった。
重兼の年齢を考えればごく自然なことではある。
重兼は二人の驚きようを見て、少し困ったように頬を掻いた。
「な、何もそこまで驚かずとも……」
「いや、だって……」
永重は馬上で身を乗り出し、まじまじと重兼を見やる。
「てっきり堅物の独り身かとばかり」
「某も同じくであります!」
半佐も大きく頷いた。
「剣と槍と主君にしか興味が無いお方かと!」
「それはひどい言われようだな……」
苦笑しつつも、重兼の声にはどこか照れが混じっていた。
「どのようなお方なのです?」
半佐が興味津々と問いかける。
「……気立ての良い女だ」
それだけ答えて、重兼は前を向いたまま言葉を切った。
永重と半佐は顔を見合わせ、にやりと同時に笑う。
「これは城に戻ったのち、一度ご挨拶に行かねばな」
「ええ、ええ」
「長兄殿の奥方となれば、我らも礼を尽くさねばな」
永重がわざとらしく言うと
「結構です……」
重兼は短く返した。
「やれやれ……」
重兼は小さく息をつきつつも、その口元には微かな笑みが浮かんでいた。
快晴の空の下、三頭の馬は丹波亀山城へと、変わらぬ足取りで進んでいった。
三頭の馬は城下の町を抜けると丹波亀山城の大手門が視界に入った。
城の瓦に反射する光が眩しく、馬上の三人は自然と背筋を伸ばす。
「急ぎ殿のもとへ参りましょう」
半佐が小声で呟くと、永重は馬のたてがみを撫でながら頷いた。
重兼は前方を見据え黙ったまま馬を進める。
門をくぐり城内へ入った三人は、永勝への報告のため控えの間へ向かった。




