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戸侯記  作者: まさごろう


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4-4 行徳寺


笛の音を聞くや否や、皆の動きは素早かった。



各々で行っていた作業を中断しお堂へ戻ると、槍や盾を手にすぐさま本堂前に集まった。

松丸と長松、半佐もまた、同じように集まっていた。



一方、兵庫助は笛の音を聞くと、ただちに見張り番のもとへ駆けつけていた。


行徳寺の境内は広く、本堂から見張り番のいる門まではおおよそ一町(約110メートル)ほどの距離があった。


「――何があった?」


見張り番に問いかける兵庫助の声が、こちらにもかすかに聞こえてくる。


兵庫助は、見張り番が話しながら指さす先へ目をやり、しばし見つめたのちこちらへ振り返った。


「皆の者、そのまま控えよ!

――性慶(しょうけい)殿、長松、松丸、こちらへ!」


そう声を上げると、再び視線を見張り番の指さした方へ向けた。



「――参ろう」


性慶の言葉に、長松と松丸、そして松丸に従う半佐の四人は、兵庫助の待つ寺門へと向かった。


松丸らが小走りに寺門へ向かい、まさに辿り着こうとした、その時だった。


突如として、鎧兜を身に纏った騎馬武者三騎が門前に姿を現した。



境内は木々に囲まれており、蹄の音はまったく聞こえなかった。

不意を突かれた松丸らは思わず足を止め、手にしていた槍を構える。


その様子を見た兵庫助が、顔だけでちらりとこちらを振り返り、無言のまま左腕を伸ばしてその動きを制した。

そしてすぐに、視線を騎馬武者たちへと戻す。


騎馬武者の背には、旗竿が括り付けられていた。



翻る旗に描かれていたのは――


千成瓢箪。


羽柴家の旗印であった。




騎馬武者三騎は、それぞれが下馬すると片膝を着き、一番前に居た武者が勢いよく口を開いた。

「――広瀬兵庫助様とお見受けいたす!」


「いかにも」

落ち着いた口調で兵庫助が答えた。


「我らは羽柴家伝令にございます」


そう言うと武者は続けて言った。

「まずは申し上げます!

羽柴筑前守様、変に際し西より引き返され、摂津山城境の山崎にて明智日向守を御打ちあそばれましてございます!」


その報に、兵庫助、松丸らはハッと息をのんだ。


続けて武者は言った。


「羽柴筑前守様は近江にお進みになり、阿閉貞征・貞大父子、長浜城に居た妻木範賢らを降伏せしめ、既にお戻りでございます!」


「……まことか…」

声を絞り出すように兵庫助が呟く。


「我らは、行徳寺御住職より三之丞様へ出された文を読まれた弟君――美濃守小一郎様の御指示により此方へ参りました!」



「…承知した。遠路ご苦労であった。

これより御方様方へお伝えするゆえ、境内にてしばし休まれよ」


兵庫助は大きく深呼吸したのち、そう言うと松丸と長松、半佐に馬を引かせ、武者三人を本堂に案内するよう指示した。


兵庫助は指示を終えると、少し遅れて門に来ていた性慶と目線を交わし、

「――これより御方様方へお伝えいたします。共に参りましょう」


そう声をかけ、連れ立って本堂に向かった。



本堂への通りがかりに、まだぼんやりとしか聞こえていなかった本堂前に集まる足軽たちに向かって、

「――帰れるぞ!」


はきと一言告げると、一間置いた足軽たちは歓喜の声に沸いた。






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