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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第十五章 大図書館の恋(変)人たち>
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#15-15 脳筋令嬢の友人




「皇国は……いや、より正確には旧リーブネスト皇国地域と言うべきだろうな。この地域は乾季と雨季がハッキリと別れているのが特徴で、冬と夏の始め頃はほとんど雨が降らない。そのせいで森になるような木々が育たず、このような草原が国土の大部分を占めるのだ」


 眼下に広がる大草原。それも綺麗な緑の絨毯ではなく、土の茶色と斑の迷彩柄っぽい。あと所々に少し背の高い樹木があって、その周辺は比較的緑が濃く、上から見ると島のように見える。地形的には起伏の少ない平原で、丘や小さな岩山があるくらい。


 ちなみに川も数本流れている。高低差の少ない地形だからすごくゆっくりとね。今は雨期だから水量も豊富だけど、乾季の終わりごろには目に見えて細くなるんだとか。


 所謂サバンナって感じね。こっちの世界には該当する言葉が無いのかな。


 で、サバンナらしく野生動物や魔物が数多く生息している。群れを作ってる草食動物は多分地球の動物と大差ない大きさだと思うけど、大型の魔物になると(たぶん)恐竜超えのとんでもないサイズの個体もいて、遠近法間違ってんじゃないの? ってツッコミを入れたくなるくらい。


 大峡谷地帯とはまた違う意味でスペクタクルな風景で、上空からサファリ感覚で見物する分には面白いね。興味深いからってあんまり高度を下げ過ぎると、巨大魔物が襲い掛かってきそうだから、そこは注意しないといけないけど。


 そんな皇国の風景を楽しみつつトランク飛行船で北西へと向かう。ジェニファーさんの友達にして件の(そろそろ“元”が付きそうな)婚約者さんたちは、この国の北海岸にあるいくつかのリゾート地にいるらしい。なんでも皇国貴族に大人気、庶民にとっては“生きてる間に一度は行ってみたい憧れの地”なんだそうな。


「それにしても海のリゾート地が人気なんですね。そういう感性は、全世界共通なのかしら?」


 ああ、それね! 私もそう思った。っていうか、鈴音の感想に全員(クルミ含む)がウンウンと頷いている。


 白いビーチにデッキチェアと冷たいドリンク、エメラルドグリーンの海にはヨットやサーフィンをする人の姿が。のんびり過ごすもよし、ダイビングとかのレジャーを楽しむもよし。なんならオーシャンビューのホテルの一室で、静かに読書をするのもまた良し。


 そういう定番のリゾート地っていうのは、ある種のテンプレ感はあるけどやっぱりなんとな~く憧れはある。遺跡とかジオスポットとかの特徴はないけど、逆に骨休めになるというか羽を伸ばすのにはピッタリというかね。


 ――なんて、ほんの僅かな刹那ほどは私たちも思っていました。


「うむ。海の魔物は当たり前だが、斃し方が陸のものとは異なるからな。工夫が必要になるし、とても良い経験になるのだ。しかも皇国の北海岸は海の反対側はすぐ山になっていて、そちらでは陸の狩りができる。つまり海と陸、双方で狩りざんまいというわけだな」


「「「…………」」」


 腕を組んで「よくわかってるじゃないか」みたいな感じで頷いていますけど、ジェニファーさん、そうじゃないんですよ。誰もそんな血沸き肉躍るリゾートは想像してないので!


 いやー、改めて思うけど、皇国貴族は令嬢であっても考え方というか、価値基準が全然違ってて面白いね。ああ、他人事としては面白いって話であって、一緒になって狩りという名のアクティビティをリゾートで楽しみたいってことではありません。念の為。


「ちなみにですけど、皇国では貴族の女性同士の社交ってどんな感じなんですか? やっぱりお茶会を?」


「そうだな。やはりお茶会が一番多い。……フッ、さすがにそう狩りばかりしてはいられないからな。情報収集もまた、貴族女性としての重要な役割だ」


 ですよねー……と言いたいところだけど、私はもう騙されない。だって“一番多い”って言ってたからね。二番目以降があるに違いない。


「他には女性限定の狩猟大会というのもあるな。それから腕が鈍らないよう、合同訓練のような催しをやることもある。まあさすがに妊娠中や出産後しばらくは、そういった社交(・・)に参加することは無いがな(キリッ☆)」


「「「…………」」」


 本日二度目の絶句。いや、そんな「皇国女性も暴れるばかりでは無いのだ」みたいにドヤられても……。うーん、皇国貴族令嬢の社交、恐るべしだね。







 ロンドリーブ皇国第二皇子――即ちジェニファーさんの婚約者(だった人)には、四人の側近が居る。もちろん皇子様だから部下やお目付け役を兼ねた教育係はもっと沢山いる。ここで言う側近っていうのは、同年代の腹心というか、第二皇子派閥のトップとなるべく教育されている者というか、まあそんな感じね。


 剣を得意として接近戦が得意な護衛その一。槍と魔法を得意として敵の接近を防ぐ護衛その二。第二皇子派閥のブレーン役。情報収集やスケジュール管理などをする秘書(側仕え)的ポジション。後者の二人も当然のごとく戦える。どちらかと言うと後衛・支援寄り。


 名前や性格なんかのパーソナリティに関しては割愛して貰った。私たちには必要のない情報だからね。というか別に人数だけでも良かった。要はこれから訪ねるその婚約者さんが何人なのかが分かればいい。


 リゾート地から少し離れた人目に付かないところで、地上へ降りて馬車にモードチェンジ。クルミに牽いて貰って目的地へ向かう。幸いこの場所は高級リゾート地というか別荘地のような感じで、奇妙なもの(・・・・・)が走ってても騒ぎになることは無かった。


 で、ジェニファーさんのお友達が滞在している屋敷にアポなし突撃。怪しいことこの上ない一団だけど、今回の私たちには印籠――もとい、お手紙があるのです。このガンドルド侯爵家の紋章が目に入らぬか! なんてね。重要な親書を送る際にのみ使用する特定の型というものがあるそうで、その使者である私たちも雑に扱われることは無いってわけ。


 そうしてお友達と対面して用件を直接伝える――というのをして回る。ちなみに最初の一人はたまたま屋敷で休息をとってたからすぐに会えたんだけど、あとの三人は狩りに出かけていた。うーん、アクティブ。うち一人は出かけたばかりだったから、結局こちらから探しに行ったというね。


 事の経緯を聞いた四人は、皆ジェニファーさんの無事を喜んでいた。そして第二皇子の暴挙に不快感を示し、憤慨し、最終的には武器を持って立ち上がっていた(!)。いやいや、今の段階で皇家に殴り込みはマズいですって。どうどう、クールダウン、ク~ル、ダウ~ン。


 っていうか皆さん血の気が多いですね!? しかも四人とも似たり寄ったりの反応っていうのがまたなんとも。ジェニファーさんはバランスが良いっていう言葉の意味を実感できた気がするよ。


 さておき、これで目的は果たした。匿う意味でジェニファーさんは暫く私たちと行動を共にするけど、基本は自由だ。なのでちょっと足を延ばして大図書館にでも――って、私たちは考えてたんだけど、どっこいそうは問屋が卸さなかった。


 ジェニファーさんのお友達が四人揃って同行を希望したんですよ。あの、ここって憧れのリゾートなんですよね? しかもタダで。もっと楽しんで行けばいいんじゃあないですか?


 え? 確かに憧れはあったけど、もう満喫した? というかそろそろ飽きて来たから、帰ろうと思ってたところだったと。それとここ最近で一番イキイキしているジェニファーさんの様子が気になる。絶対に何か面白いことがあったはず? な、なるほど。


「……と、お友達は仰ってますけど、本当のところはどうなんです?」


「んー……、それはその、認めざるを得ない事実、ではあるな。このところ第二皇子絡みの不愉快なこと続きで、ようやく視察旅行で羽を伸ばせたと思ったらあの有様だろう? 流石の私も少々落ち込んでいたのだが……、その反動というか、貴殿らとの旅は刺激的なことばかりでとても楽しかったのだよ」


 ――そうだよね、暗殺されかけたんだもんね。妙にサバサバした感じは、もしかするとちょっと自棄ヤケになってたっていうのもあったのかもしれない。


「なるほど。まあ、その、元気が出たのなら何よりです」


 という訳で、男爵令嬢被害者の会御一行様(←言い方!)を一旦浮島にご案内することとなったのでした。ちなみに皆さん、侍女と装備品(・・・)一式付き。




 ――そして途中でサバンナ地帯中央付近に立ち寄り、一狩りしていくことになったのであった。何故って? いや、それを私に言われても困っちゃうんだけど?








皇国のサバンナは、ゼノ〇レイドク〇スの最初のエリアを、単純な地形にしたような感じをイメージしています。

分かり難い例えで申し訳ありません(汗)。


――ディフィニティブエディション、出ないかな~

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