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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第十五章 大図書館の恋(変)人たち>
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#15-02 ミクワィア家の逆家庭訪問……だけじゃない!?




 出島はトランク内でせっせと伸ばしておいた、土壌改良スライム&ポトリスで浮島と繋いだ。時間加速機能を使って成長したポトリスはスライムのチェーンとともに伸びに伸びていて、最初から二本渡すことができたから、梯子というか細い吊り橋のような感じになった。


 防犯という意味では橋を渡さない方が良いんだけど、地脈を通す為には必要だから仕方ない。精霊樹に訊いてみたところ、出島と浮島程度の距離なら空気中を通すこともできるらしいけど、かな~りロスが多いみたい。無駄遣いは止めておきましょう。


 もっとも橋で繋いだとは言っても、たぶん問題無いと思う。頑張れば(・・・・)歩くこともできなくは無いけど、めっちゃ揺れるわ手摺は無いわで怖いなんてものじゃない。隙間だらけな上、高所恐怖症でなくとも足が竦む高さだしね。


 付け加えると、()の出入り口は出島側は商会支部のお屋敷(予定)の奥の方だし、それぞれ防犯アラーム――っぽい魔道具。フランが城の資料を元に既存のモノを魔改造した――を設置するからね。ちゃんと対策は考えているのですよ。


 そうこうしているうちにミクワィア家の逆家庭訪問の日が近づいて来た。今回は私の飛行船でお迎えに行く約束になっているから、行って来まーす。あ、舞依とエミリーちゃんとシャーリーさんは一緒に行きましょう。







「レ、レイナ殿……、この新しい浮島は一体……」


 エミリーちゃんの保護者さん御一行様を新しく作った出島にご案内。いやー、皆さん絶句していますな。


 今回、浮島にご招待したのは、会頭さんに二人の御夫人、上から二番目のお兄ちゃんであるツワイトさんとそのお嫁さん(新婚)、執事のバスティアーノさんに船長のジェイクさん。


 ジェイクさんは最初にノウアイラを訪れた時以来ですね。ご無沙汰です、お元気でした? え? 元気だけど私に会って以来、ワインを美味いと思えなくなって? あっはっは、それはどうも。ささやかなパーティーの準備もしているので、今日は期待してくれていいですよ。ええ、本当に。


 ジェイクさんがメンバーに加わっているのは、今後船で訪れることもあるだろうからその下見も兼ねているから。後で下の島の方と、浮遊桟橋にも案内する予定。


 ちなみに長男のアストさんとツワイトさんは、逆家庭訪問に同行する権利をかけて何やらゲームで真剣勝負をしたんだとか。相変わらず妹愛が溢れてますな。なお三男・四男の二人は現在商会で修業中の身で忙しくて手が離せないらしい。


 出島を案内しつつ、秀と鈴音からこの島がどういった物なのか説明をする。そしてエミリーちゃんの支部用に建てた例のお屋敷――既に完成していたので、持って来てある。大変立派でした――をここに設置してはどうかと提案する。


商会の支部であると同時に、宿泊施設や、パーティー会場、商談スペースとしても運用する。出島に市場が立てばそれを管理・統括する事務所としても使いたいから、お役所の出張所としても使わせて欲しい。


「あら、それは良いアイディアね。あの無駄な広さが有効活用できるわ」


「いや、それは……」


「そうですね。内装はそのままでも良さそうですから、家具の手配さえすれば客室として使えるでしょう」


「母上、しかしあの屋敷は……」


「「い、い、で、す、ね?」」


「う、う……む」「……ハイ」


 エミリーちゃんへの愛が詰まりに詰まりまくったお屋敷、会頭さんとお兄ちゃんとしてはエミリーちゃん自身で好きに浸かって欲しかったんだろうね。――あえなく二人の夫人の圧に屈してしまったけど。隠れて計画を進めてた負い目があるものだから、逆らえないみたい。ちなみにツワイト夫人は一歩引いたところでニコニコしている。うん、世渡り上手っぽい。


 用途が広がるだけで、エミリーちゃんの支部であることに変わりは無いんだけどね。まあホテルを運営するともなればノウハウのある支配人を派遣して貰う必要があるし、エミリーちゃんは名目上のトップ(オーナー)になっちゃうけども。


「で、でも、エミリーはそれでいいのかい? やっぱり立派な屋敷を自分の好きなように使いたいなんて思ったりは……」


「ツワイトお兄様、私はむしろ安心しました。今の私ではあれ程のお屋敷を頂いても、使い切れず、大部分を遊ばせてしまうことになってしまいます。折角立派な建物なのですから、ちゃんと活用しなければもったいないです」


「ううっ……、エミリーも成長しているんだな……。兄は嬉しいよ……」


 嬉しいけど、やっぱりちょっと寂しい――という心の声が、誰にでも聞こえそうな口調だね。それは無理と知りつつも、妹にはいつまでも妹でいて欲しい兄心ってとこかな?


 まあ心情はさておき、会頭さんとお兄ちゃんも夫人やエミリーちゃんの言う事の方が理にかなってるのも分かっているようで、それ以上反対することは無かった。ともあれミクワィア家の了承も得られたという事で、建物を移設しちゃいましょう。もう設置場所は決まってるからね。一段高い方の真ん中奥に、デデンと屋敷を置いて固定する。


 おー、これはなかなか壮観だね。シンボル的な建物があるだけで、出島がちょっと様になった感じがする。


「……ふむ、まあこれはこれで、この出島という市場をミクワィア商会が握っているという象徴のようで、悪くは無いか」


「問題はどの程度の往来があるか、だけど……」


「ある! いや、むしろ我々で作る」


 瞬時に頭を切り替えた会頭さんが構想を語る。先ずはミクワィア商会と関係のあるコルプニッツ王国やその向こうのロンドリーブ皇国などの取引先に声を掛け、この出島を物流の中継基地とする。国と国を往復するより、航路が半分――とはいかないまでも、三~四割は短くて済む。また水や食料をここで補給できるから、その分積み荷を増やすことができると。


 ぶっちゃけミクワィア商会とその関係先とで、当面出島は独占してしまってもいいかもしれない。他の商会に対しアドバンテージを確保できるから――って、それを私たちの前で言っちゃっていいのかな?


 まあその辺は私たちの方でも相談済み。宿泊施設の準備とかはミクワィア商会にお任せになっちゃうから、どの程度、どの時点で情報を広めて行くかも好きにして貰っていいと考えている。立地的に口コミでどんどんお客さんが増えるってことは無いから、受け入れできるキャパと相談しつつ上手にコントロールして欲しい。ええ、今回も丸投げです。


 さて、それじゃあ出島の方はこれで一応用事が済んだという事で、お次は浮島の方へご招待――


 バッと振り返り目を凝らす。


「怜那? どうかしたの?」


「何か来る。探知魔法に反応があった」


「怜那さん、取り敢えず魔物かどうかだけでもわかるかい?」


 えーっと、探知魔法の志向性を上げてと――


「魔物じゃあないね。これは……、船? いや、海上じゃないってことは、たぶん飛行船?」


「たまたまここを通りかかった……、なんてことは無いだろうね、確率的に」


「島にも人が立ち入った形跡は無かったし、一般的な航路からは外れてるのだから、それは無いでしょうね」


 ということは、ここに向かって来てるってことになるけど、ここの座標を知ってるのは――会頭さん? は、違うよね。折角の情報をバラしてしまっては意味が無い。あと知らせたのはメルヴィンチ王家くらいか。


 うーん、あれこれ考えても仕方がない。とにかくどこの飛行船なのか特定した方が良いよね。飛行船でちょっとひとっ走り――


「怜那、この間トランクに双眼鏡をしまってなかった?」


 ポン!


 そうだった、アレがあったね。それじゃあ平らな地面は――ああ、あの辺が良いかな。では取り出しましてっと。


 双眼鏡とはいっても、野鳥観察をする時に首から下げて持って行くようなものじゃあない。立派な脚付きのでっかいので、天体望遠鏡の双眼鏡版みたいな感じかな。城の倉庫にあったもので、そこに置いてあったものがいわゆる装備品ばかりだったから、恐らく周辺の魔物の監視に使ってたんじゃないかと思う。


 ちなみに持ち出した理由は、舞依と一緒にテラスから星でも見ようかなーと思ったから。あ、ちゃんと文官に申請してあるのでご心配なく。無断ではありません。


「ごっつい双眼鏡やなぁ~」


「あら、武骨だけれどレトロな感じが素敵よ」


「真鍮色がいい味出してるよね。コンセプト不明の謎アンティークショップに置いてありそうだ」


「あー……、アレやな。店主が趣味で集めた、ようわからんもんばかりがある店やな」


 そういうお店ってさー、フィクションの中では結構出て来るじゃない。こう、人通りの少ない高台の上とかに、どー考えても商売的に成り立つとは思えないようなお店がある、みたいな? あーいうお店って実際にあるのかな? あるなら行ってみたいよねー。買うかどうかは別として(笑)。


 なんてことを考えつつ、目標を双眼鏡の視界に導入を試みる。ええと探知の反応はこっちの方で、角度はこのくらいだから――っと


「あっ、見つけた!」


「本当? 怜那、私にも見せて?」


「あ、私も見てみたいわ」


「ちょいちょい、順番やで。ちゃんとじゃんけんで決め……って、もう並んどる!?」


 あっはっは、久利栖は出遅れたんだ。ま、交代は構わないけど、取り敢えずその前にどこの飛行船かは確認したいよね。


 ええと――あ、旗がある。


「あの紋章はどっかで見たことが……。あれはえーっと、確か……、コルプニッツ王家の紋章?」


「……あっ」


「「「あっ?」」」


 振り返ると、レティが口元に手を当てて少し目を見開いていた。何か知ってるみたいだね。説明プリーズ。







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