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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第十四章 様々な種族>
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#14-24 ジャングルのいきものたち




 ジャングル内では、魔物全体の遭遇率という意味では、爬虫類系の方が圧倒的に多かったと。だから生息数という意味では、私の予想は当たっていたらしい。


 一方で、獣(哺乳類)系の魔物も数種類確認できて、ネズミ型やウサギ型などは結構数が居たらしい。で、そいつらがとにかく獰猛というかる気満々で、見つかった瞬間襲ってくるわ、物陰から不意打ちして来るわでとにかく厄介だったそうな。


 ちなみにウサギとネズミは、通常時のクルミと大体同じくらいのサイズ。戦闘時には立ち上がるところもよく似ているのだとか。


 ――って、ん?


「それってもしかして、クルミが居たからってことはない? ライバルになりそうな似て非なる個体が縄張りに侵入してきたから、やたら好戦的だったとか……」


「「「あっ!」」」


 ジャングル探索組が声を上げ、視線がクルミに向かう。今日のクルミはリドリシアさんの膝の上だ。ほんわかリドリシアさんが時折ナデナデしている。気に入ったのかな?


 ホントにどーでもいい余談なんだけど、クルミは基本女性の膝の上を好む。女性の膝(太もも)が好きって言うより、撫でる時の手つきの問題っぽい? で、新しく来た人の膝の上には必ず座りに行く。クルミなりの挨拶兼コミュニケーションなのかも――と、私は分析している。


 キュルン パチクリ コテン


 うん、今日もクルミはあざとカワイイ。


 まあ誤魔化してる感じは無いから、たぶん初めは本当に不可抗力で、それならそれで構わないかと流したんじゃないかな。ある意味訓練にもなったんだし、今回は大目に見てあげてよ。


「っていうか、そもそも私の推測だからね。クルミ無しで狩りに行って検証してみないと、ホントのところは分からないし」


「せやな。っちゅうか、ウサギとネズミの方は不意打ちにさえ気を付けとけば、問題はあらへんからな」


「手強い方は恐らくクルミとは関係なく襲って来るだろうからね。そういう意味では、クルミが居なくても危険性は変わらないか」


「秀、手強い方って?」


「ブタだね」「イノシシやな!」


 同時に断言して顔を見合わせる秀と久利栖。


「いやいや秀、アレはイノシシやん。あの猪突猛進っぷりを見たやろ?」


「その点は確かに。でも全体の体型からすると、アレはやっぱりブタだよ」


 あー、あの最後に仕留めたっていう大物か。


「怜那、どんな魔物だったの?」「そうね、興味があるわ」


 秀からの連絡を受けてすぐ、私はトランク経由で秀たちのところへワープしてそれを回収したから、実物を知っている。舞依と鈴音は軽トラで先に空に上がり、撮影してたからまだ知らないのだ。


 百聞は一見に如かず。まだ解体する前だし、テラスに実物を出して見てみよっか。と、その前に血抜きと冷却だけはしておこう。錬金釜でちゃちゃっと処理してと。


 ゾロゾロとテラスに移動して、トランクから魔物を取り出す。


 横たわる魔物は体長が一二〇センチ前後で、体型は秀が言ったように豚に近い。ただ色は猪っぽいというか、縞があるから瓜坊っぽいね。魔法発動体は角で、額からダガーみたいなのが突き出ている。ちなみに猪っぽい牙もある。


 で、豚にも猪にも似てない特徴として鬣がある。魔法発動体のすぐ後ろから背中の半ばあたりまで、徐々に短くなっていく感じで。ちなみに鬣はかなりの剛毛で、ピンと縦に伸びている。ファサッと風になびくって感じじゃあない。しかもこの部分だけ金髪なものだから――


「なんでモヒカンなのよ……」


 そうそう、そんな感じなんだよね。なんでも突っ込んでくる時に「プギャッハー」みたいな鳴き声で突進してくるんだとかで、秀と久利栖は世紀末ブタ(イノシシ)と愛称(?)を付けていた。


「まあどうせ魔物なんだし、そこはどっちでもいいわ。両方の特徴があるんだから、取り敢えずイノブタってことにしときましょう」


「り、鈴音……」「どっちでもええって……」


「黙らっしゃい、そういう分類は学者にでも任せればいいのよ。重要なのは、これがまともに食べられそうな獣だってことよ」


「そうですね。猪にせよ豚にせよお肉が取れますね」


 うーん、舞依も鈴音もたくましくなったなぁ~、と今更ながらしみじみ実感。野生のイノブタを仕留めて来たら、先ずは食べられるかどうかを考えるんだもんね。


「イノブタもだけどワイバーンの方も食べられるんじゃない? まあヘビはアレだけど、恐竜っぽいワイバーンなら鈴音も抵抗は無いんじゃない?」


「そ、そうねぇ……。トカゲだと思うとちょっと抵抗あるけど、ワイバーンなら……」


「ええと皆さん、ワイバーンはどちらかと言えば高級食材なのですけれど……」


 レティによると、王宮の晩餐でもたま~に供されるレア食材らしい。ドラゴンとなるともはや幻の食材だけど、ワイバーンなら棲息地域も分かっているところがあるし、頑張れば(・・・・)調達できる食材なのだとか。ミクワィア商会でもハンターを組織して調達したことがあるそうな。


 ちなみに騎獣化されたランドワイバーンは食用ではない。飼育や調教にかかるコスト的に「それを食べるなんてとんでもない!」っていうのと、餌や調教の問題なのか肉がとても固く旨味もなくなって、野生の物より味が格段に落ちるらしい。


「ランドワイバーンの方も仕留めて来たし、今夜は確保して来た食材の試食会だね」


 秀の宣言に歓声が上がる。海の幸にジャングル(ジュラシック)の幸とバラエティに富んでるからね、夕食が楽しみ。強いて言えばお魚が無いのが残念かな? 今度舞依を誘って釣りデートに行ってみよう。うん、それがいい。


 すっかり食い気の話ばっかりになっちゃったけど、ファルスト達の戦闘や狩りに関しても特に問題は無かったらしい。特に獣人の二人が気配の察知に長けていて、ウサギやネズミの不意打ちにもキッチリ対処できていたのだとか。


 あとエルフの二人の狩りの腕前がヤバかったらしい。ジャングルの中っていう障害物が多くて視界不良の中、弓矢が百発百中。しかも食材を無駄にしないよう、急所を的確に打ち抜くという凄まじさ。近接武器の出番は終ぞなかったとのこと。


 問題点を上げるとすれば、文官三人だけだとポジションが前衛だけになっちゃうところ。治癒魔法もライブスが応急処置程度なら使えるといったくらいと心許ない。不測の事態が起きた時に、立て直しできない――もしくは時間がかかる――危うさがある。


 というわけで、休みを利用して狩りに出かけるような時は、エルフのどちらか、又は新しく来たメンバーに後衛向きの人が居ればその人が参加すればOKということになった。もちろんちゃんと届け出はした上でね。







 そしてその夜の夕食兼試食会では――


「雲丹の軍艦巻きサイコー!」


「怜那、イセエビの方も美味しいよ。はい、あーん」


「あー……、あむ。んんっ! 甘い! 身もプリプリっ!」


「隙あらばイチャつくわねぇ……」


「っていうか、羨ましいなら鈴音も秀とすればいいでしょ?」


「そっ、それは……。コホン、私はあなたたちと違って慎みがあるのよ。そんな事より牡蠣フライも絶品よ。どれも食材の味が良いわね」


「魚介もええけど、フライドワイバーンとポテトの組み合わせは神やで。ビールもええけど、個人的にはやっぱコーラが欲しいとこやけど」


「コーラかぁー。僕はあんまり飲まなかったから、原材料とかがイマイチよく分からないんだよね。でも面白そうだし、今度チャレンジしてみようかな。それはともかく、本当にここの食材は良いね。料理のし甲斐があるよ」


 秀と舞依が主導して、料理のできるメンバーで作った夕食は、気付けばかなりの品数になってしまい、大きなテーブルに大皿で料理を並べるビュッフェ&立食スタイルになってしまった。メニューが寿司や刺身から揚げ物にステーキ、ついでにデザート類まで統一感なく揃ってるところが、実にそれっぽい。なお、座席もご用意しております。


 料理はどれも凄く美味しい。秀の腕前に関しては言うまでも無いけど、やっぱり食材の味がどれも素晴らしいのが大きい。あ、お肉に関してはスロットの機能で熟成させたから、その点はちょっとズルかな?







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