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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第八章 王都にまつわるエトセトラ>
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#08-01 王都の精霊樹へ




 さて、じゃあ折角だから再会を祝して、軽くパーティーでもしようよ。料理は秀と舞依が仕切ってね。私たちも手伝うから。この辺の高級そうなお肉を大胆に使っちゃおう。コレ? バッファローっぽい魔物のサーロイン。美味しそうでしょ~。


 で、その後仮眠をとって、夜中になったら出発しよう。どこへっ……て、さっき話したじゃない、精霊樹。


 タイミング的に今行っておきたいんだよ。


 この馬鹿みたいに広い王都の精霊樹まで行くのに、馬車モードを使わない手は無いんだけど、どうしたって目立つ。キッチンカーの宣伝もするつもりならそれでもいいんだけど、今は厄介事を抱えてるからね。なるべくなら目立たないように、移動は夜中にしたい。


 一旦拠点に戻ったあとで夜中にコソコソ移動したりしたら、今度はドゥカーさんとやらに怪しまれそうな気がする。ああ、トランクの機能について彼らに詳しく説明する気は無いよ。今のところはね。


 そういった諸々を考えると、今すぐ行っておきたいんだよ。


 異論は? 無い? よし、じゃあそんな感じで。


 準備中…… 準備中……


 広いテントの中で秀と舞依にはメインの料理を任せて、残りのメンバーでサラダを作ったりフルーツを切ったりする。スープは私が作り置きしてたものでいいかな。


 久利栖たっての希望で増やしておいたパックご飯を温めて、お櫃っぽい容器に纏めて移し替えておく。


「っていうか、メインがステーキでご飯? 合わないとは言わないけど、なんかパーティーっぽく無い……っていうか、皆そんなにご飯が好きだったっけ?」


「ちゃうねん! いつでもご飯が食べられた怜那さんにゃ、俺らがどんだけお米粒を求めておるのか分かっとらん! そう、俺は今こそ知った、日本人の魂は米と醤油と共にあることを!」


 お、おう。久利栖からスゴイプレッシャーを感じる。まあ私も魂は日本人だし、お米と醤油が食卓から消えたら寂しいと思うから、その主張は理解できる。高すぎるテンションはアレだけど。


 それならそれでよし。私は舞依の手作りサンドイッチを貰おう。あっ、チキンカツサンドもある! やったー!


 さて、料理も粗方できたみたいだから、テーブルにグラスを用意して、ワインも出してっと。乾杯にはこれがないと始まらないからね。


「怜那、それは?」


「ワインだよー。しかも自家製! ああ、いつぞやの自由研究で作った“なんちゃって”じゃあなくて、ちゃんとしたやつね。こっちの世界はワインもイマイチらしいけど、これはノウアイラのショタ神様からも高評価を得た逸ぴ――」


「怜那?」


 ギクリ


 えっ? なんで? 舞依……、怒ってる?


「ちょっとそこに正座」「突然どうしたの、舞依――」「正座」「はい」


 神妙に舞依の話を聞きました。


 ふむふむ、要約すると未成年の飲酒は良くないと。それから一人旅でさぞ大変だったんだろうと思ってたのに、好き放題やんちゃしてたのねと。――その点はちょっと自覚があります。スミマセン。


「わはは、相変わらず舞依さんには勝てんのやな」「プークシュクシュ」


「ダブル成敗!(デコピンショット弱×二)」


「あいたーっ!」「プギャッ!」


 またつまらぬものを撃ってしまった。まったく、失礼な一人と一匹だね!


 まあアホ×二は放っておくとして。


 こっちの世界では飲酒に年齢制限は無いし、お酒を造るのを禁じる法も無い。ついでに言うと、パーティーの席では私たちくらいの年だと普通にお酒を勧められるらしい。断るのは失礼ではないけど、出来ればしない方が良いとのこと。会頭の奥さん情報より。


「――だから皆もお酒に慣れておいた方が良いよ。郷に入ってはって言うでしょ?」


「うーん、なんか丸め込まれてるような気がするけど……」


「まあまあ、そういうことなら良いんじゃない? 折角だから飲みましょうよ。ちょっと興味あるし」


 ほっ。よかったよかった。これで酔った舞依を見られる――なんて、ほんのちょっとしか思ってませんよ?


 さて、ワイン問題も解決したし、テーブルには料理も並んでパーティーの準備はこれでいいね。


「皆グラスを持った? じゃあ、再会を祝して! かんぱーい!」


「「「「かんぱーい!」」」」「キュッ!」







「草木も眠る丑三つ時――」


「ハイハイ、そういうのは良いから」


「今は一二時くらいですから、丑三つ時にはだいぶ早いですよ?」


「…………」「キュゥキュゥ」


 何か雰囲気を出そうと思って言いかけた台詞を潰された久利栖を、カーバンクルが慰めるようにテシテシと軽く叩いてる。うん、良いコンビになりそうだと思った直感に間違いはなかったね。


「騎獣も収納して時間を止めたし、忘れ物は無いね。じゃあ皆馬車の中に入って」


「怜那は入らないの?」


「うん。外から魔力を流す必要があるからね」


 恐らくこれってあくまでもトランクだから、“私が持って動かす”必要があるってことなんだと思う。中からでは魔力を流して動かすことができないんだよね。これはどのモードでも共通の仕様。


「……それなら私も一緒に外に居ていい?」


「もちろん」


 寒さなんて魔法でどうとでもなるからね。いや、敢えてちょっと寒いくらいにして、くっついているのもアリ――かな?


 はい、そこ。砂糖を吐きそうな表情でそそくさと馬車に入らないように。


 舞依をお姫様抱っこしてひらりと馬車の上に飛び乗り、横並びで座る。


 カーバンクルも準備は良い? オッケー。


 では、夜のドライブと洒落込みましょうか。








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