第八話~ダンジョンへ~
この世界には、数々のダンジョンが存在する。
ダンジョンは自然に生成され、その数は数え切れないほど。
そのほとんどが、森や洞窟などに入り口があるのだが。時々街の中に入り口ができてしまうことがあるのだ。ダンジョンは、最深部まで進みダンジョンボスを倒すことで、自然消滅する。
それゆえに、そこで見つかる宝やダンジョンボスが落とす素材などはとても貴重なのだ。
早い者勝ち、と言ったところか。
ダンジョンを見つければ、それだけで冒険者達は大盛り上がり。
そして、ここにもそのダンジョンを見つけた冒険者のパーティーが。
「お、おお! これが噂のダンジョン!!」
「まさか、偶然落ちた落とし穴のところにあるなんて」
「もしかしたら、先に見つけた人が隠していたのかもねぇ」
アルヴィオ達だ。
素材採取クエストをしていたところ、アルヴィオが落とし穴に落ちてしまったのだ。慌ててエルシーが助けに行ったところ、そこにはダンジョンへと転移できる転移魔法陣があったのだ。
「ねえねえ! さっそく入ろうよ!!」
「えー? でも、採取クエストの最中だし。それに……なんだかめんどくさそう。罠とか、いっぱいあるだろうし」
「罠は、厄介ね。私は、岩に追いかけられるのはいやよ?」
と、目を輝かせるティカに対し、アルヴィオとミザリィは入りたくないと言い出す。
「うぅ……! こうなったら、私一人でも行ってやるー!!」
「てぃ、ティカさん!?」
ダンジョンこそ、冒険者にとっての聖域のようなもの。未知というものが、詰め込まれた場所にティカはずっと行ってみたいと言っていたのだ。
我慢できるはずが無かった。
まるで、旅行先ではしゃぐ子供のように転移魔法陣へと一人で突っ込んで行ってしまう。
「……はあ、しょうがないな」
「まったくね。なるべく罠にはかからないように注意して行きましょう」
「早く行かないとティカさんがどんどん奥に行っちゃうよ。いこう、兄さん」
「おう」
ティカを追いかけ、アルヴィオ達も転移魔法陣へと足を踏み入れる。
一瞬にして、違う場所へと転移される。
若干、広々とした空間。
おそらく、休憩場のような場所なのだろう。と、そこでさっそくティカを発見。今にも、鉄の扉を開けて一人でダンジョンへと挑戦しようとしていた。
「ティカさん! 待ってください!! 一人では危険です!!」
「あっ! 皆ぁ! やっぱり来てくれたんだ!」
「しょうがないだろ。仲間を放っておくわけにはいかないからな」
「な、仲間か。えへへ、そうだよ! やっぱりダンジョンは、仲間同士で楽しく攻略しなくちゃ!」
アルヴィオの一言が相当嬉しかったのか、ティカはすぐ皆の下へ戻ってくる。
そして、すぐその場に座り込み話し合いを始めた。
ダンジョンを攻略するには、やはり無闇に進むということはできない。ダンジョンには、数々の罠が仕掛けられており、外とは違う魔物も生息している。
そして、難解な謎解きもあったり、攻略すべき階層がひとつではないこともある。
「とりあえずは、このダンジョンが何階層あるかだが」
「私的には一階層で終わって欲しいわね。長いのは体力的にも無理よ」
「俺も、少ないほうがいいな。いつまでも、ミザリィを背負いながらは、体力がもたない」
「それに、どんな罠があるかも考えないとだね。まあ、その点は問題ないよ! これを使えば大丈夫!!」
そう言って、収納バックからティカが取り出したのは。
「なんだそれ」
なにか、鉄の棒に丸いものがついている。
アルヴィオ達にはまったくわからないものだった。
「これはね、市場で売っていたものなんだけど。これをこうやって床や壁に近づければ一発で罠があることがわかるらしいんだよ!!」
「へえ、それは便利ね」
「でしょ! いつか、ダンジョンに入る時のために買っておいてよかったー」
随分とうきうきしているが、アルヴィオはひとつ疑問点があるのでそれを迷い無く投げつけた。
「罠の種類とかはわかったりするのか?」
確かに、そこに罠があるとわかればそれだけで十分攻略が楽になるのだが。どんな罠なのかがわかれば、更に攻略が楽になる。
「そ、それは……ちょっと無理かなぁ、うん。市場のおじさんも、罠を探知するしか言っていなかったから」
「ちなみにお値段は?」
「二万!!」
高い。いや、ダンジョンの罠を探知するための機能がついているんだ。それぐらいは……いやだが、高い。もしかして、騙されたんじゃないか? とアルヴィオ達は心配になった。
「じゃあ、そろそろいくかぁ。ここで黙っていても始まらないし」
「だね! じゃあ、先頭は私がするよ!! この罠探知機でバンバン罠を探知するから!」
おそらく騙されているのだろうが、そのキラキラとした目を見てアルヴィオ達は何も言えなかった。
とりあえず、今はその罠探知機を信じてみよう。
そう思いながら、罠探知機を持ったティカを先頭に初ダンジョンへと足を踏み入れる。
「……よし、ない!」
「さすがにそこにはないんじゃないですか?」
さっそく、罠探知機を使い鉄の扉を調べていた。ここは、ダンジョンにいくつもある休憩所だろう。ここには、魔物も近づかず、罠もないと言われている。
「あるかもしれない! そう思っていかないとダンジョンは攻略できないよ!」
「は、はい。その通りですね」
「あら、エルシーちゃんが押されてるわね」
「ティカは、結構押しが強いからな」
「そういうことでいいのかしら?」
なにはともあれ、ダンジョンへ。
鉄の扉を開けると、さっそく分かれ道。三つの道に分かれており、正面と左、右に分かれている。
「どっちに進むの?」
「……こっち!」
「その理由は?」
「なんとなく!」
そこは精霊に聞いたとか、そういうことにしてほしかったと思いつつ、ティカの言うとおり左へと進む。そもそもダンジョンとは、まったく同じものはないと言われている。
一見同じように見えて、違うというのがお決まりだ。
とある冒険者は一度攻略したダンジョンと同じだ! と進んだところ罠にかかってしまったという話がある。
「むむ!」
「お?」
罠探知機から音が鳴り響いた。そこは真っ直ぐ進むか右に進むかの分かれ道。その右側のところに向けたところ鳴り響いたのだ。
つまり、この罠探知機が本物ならばこっちに罠があるということになるが。
「それじゃあ、こっちか?」
「じゃないかもしれないわね」
「こういう時は」
おそらく、ダンジョンに入る前に拾った石だろう。それを罠があると思われる道へと投げ捨てる。
すると。
「あら」
何か細い糸のようなものに当たり、天井から矢の雨が降る。それを見た瞬間、ティカは更に目を輝かせる。
それもそのはずだ。これで、罠探知機の力が本物だとわかったのだから。
「よーし! この調子でダンジョンを攻略していくぞー!!」
「おー」
「頑張りましょう」
「ほどほどにね」




