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空は晴れていて黒い空に月が浮かんでいる。その姿は半分より少し欠けた姿をしているけれど、この世界の月は現実のそれよりも明るくこの世界を照らすので、現実の世界での満月の明るさに比べても、今のこの月の方が明るい。……文章に少し”の”が多かっただろうか。
欠けた月の光が窓から差し込むその部屋には人影が2つ向かい合っていた。そして、側の壁には掃除の途中なのか箒が立てかけてある。
月の光と共に冷たい風が優しく窓から入り込み、カーテンを揺らしている。その窓辺で見つめ合う二人。
「なんだかロマンチックな感じの描写を地の文さんが並べてくれてるね」
「そうだね。でも、これからやることはロマンチックなのかな?」
「……君はどう思う?」
そう尋ねて両腕を前にまっすぐ伸ばす。その手はまだ目の前の人影には届かない。
「…………」
尋ねられた方は答えられずに目の前の伸ばされた両腕……手の動きを見ていた。その手の指は何かを握るように動き続けている。
「さぁ、この手の動きに合うように移動したまえ……」
「…………はい」
少し間をおいてから返事をすると、ゆっくり一歩前にでる。そして、伸ばされている両手の手の動きに合う位置に自分の体をあてはめた。
「予想以上に柔らかいな。どうだい、気持ち良いかな?」
「うん。気持ち良いよ」
そう答えると合わせていた目をそらす。
「……大きいと肩が凝ったりすると聞くけど、君は大丈夫そうだね」
「えっと、右足と左足どっちが良い?」
どこと無く怖いと感じる笑顔を見せつつ尋ねた。
「ふむ、怖い話とか怪談とかでそんな感じの問いの話があった気がする……どちらを選んでもダメな感じなお話が」
手の動きを止めずに、どちらを選んでもダメだろうと考える。
「きっとあなたは触れるべきでないことに、言葉で触れちゃったんだよ? だかりゃん!」
動き続けている手の動きが変わり、両方の親指がメインに動く動きに変わった。
「だかりゃん……か。ちょっと痛かったかな?」
「ちょっとね。でも、大丈夫。これも意外と気持ち良い……。……じゃなくて、えっと、どっちがいいの?」
「きっと、右足を選んでも左足を選んでも、君に足を踏まれることになるんだよね?」
「選んでみればわかるよ?」
「う~ん、最後のあがきに逆に問うてみよう。……私は大きいのと、君の……どちらが好みだろう?」
逆に問いかけられ、その答えを探す。前回以前の文章の中から答えの手がかりをみつける。
「……」
恐らく正解であろう答えを持っているけれど、それを言うのが恥ずかしくて答えられない。また、外れていた場合は、更に恥ずかしいと思って沈黙してしまう。
「沈黙か……もっと親指をグリグリしてみようかな」
「あぅ、優しくお願い! わたしも優しく踏むだけにするから」
「どうやら私は助かったようだ!」
安堵している相手の左足を優しく踏む。踏むというよりつま先の上に自分の右足を置いただけだった。
「……どちらが好み?」
「もちろん君のが好み」
「…………」
自分の答えが合っていたことに安堵し、相手の言葉にした文字に照れる。
「……そろそろ、この手の動きも終わりにしようか?」
「うん」
手の動きを止め、窓の外の空にある月に顔を向けて照らされた顔は魔術師だった。それにつられて同じように月に顔を向けて照らされた顔は使い魔だった。……意識的に魔術師と使い魔という名称を使わないで進めてみたけれど……微妙に難しかった。
「そういえば、私は君のどこを揉み揉みしてたのかな?」
「えっと……。今までの流れって、ミスリードを誘ってたんだよね?」
「まぁ、そんな感じのつもりだったね。さぁ、この手に残る感触は君の体のどこだったのかな?」
「肩……わたしの両肩の感触だよ。……今のあなた、微妙に変態っぽいよ」
使い魔は少し引いた感じの台詞を並べた。
「もちろん、肩に決まっているさ!! 当たり前じゃないか!! 部屋を掃除してくれていた君に感謝を込めて肩揉みをしていたのだよ!!」
変態っぽく思われたことを吹き飛ばしたいのか、勢いをつけて台詞を並べた。
「ありがとうね! 肩が軽くなったよ」
「そっか、よかった」
「……ちょっと寒い」
使い魔は胸の前で両手を交差させて着ているカーディガンを軽く握る。
「確かに寒い」
魔術師は窓を閉めると壁に掛かっている箒を手に取り、片付けに向かう。
「あ、それはわたしが片付けるよ」
「この箒は私が頂いた! 君は大人しくソファーで薄手の毛布に包まって待つように!」
使い魔に指示を出して箒を仕舞いに行く。しかし、使い魔は指示に従わず魔術師の後を付いて行く。
「……命令違反をしてみました!」
自分が使った掃除道具なので、自分で片付けるべきという考えもあっての命令違反。
「命令したつもりはなかったけど……そうか、命令違反か……」
魔術師は箒を仕舞うと振り返って、使い魔を見る。
「……命令違反はダメだった?」
「そうだな、これは罰を与えねば……」
「罰って、あの……えっと、お仕置きするの?」
罰と聞いて使い魔は少し怖くなった。
「少し苦しいかもしれないが……我慢したまえ!」
魔術師は少ししゃがみ、右肩に使い魔の体を担ぎ上げた。担ぎ上げられて目線の先に床を見た使い魔は、確かに少しお腹の辺りが苦しいと感じた。
「あなたって意外と力持ちなんだね」
「肩に担ぐと結構楽だよ。まぁ、君なんて軽々さ! ……ふむ」
「……?」
自分の体が軽いといわれて少し嬉しくなりつつ、『ふむ』という台詞の意味を探る。
「……もうすぐソファーにたどり着いてしまうな」
魔術師の視線の先はソファーに向いているけれど、時折、担いでいる使い魔のワンピースから伸びる足。太ももの裏からふくらはぎに視線が向けられている。
魔術師の『ふむ』の意味を地の文から知った使い魔は少し暴れてみる。
「見ちゃヤダ」
「暴れると左手も使うことになってしまう。すると変なところを触ってしまうかもしれない」
魔術師をこれ以上変態にしてはいけないと思った使い魔は、暴れるのを止めた。
「あなたはもっと紳士的な人かと思ってたのに……」
「すまんな。どうやら、気を許した相手には……こんな感じの時もあるらしい」
「そっか」
自分に対して気を許しているのだと理解した使い魔は、魔術師の変態さを許す範囲を少しだけ広げることにした。
「その範囲を確認することは許されるかな?」
「それはダメ」
使い魔はきっぱりと即答した。
「おっと、ソファーにたどり着いてしまったか」
魔術師は使い魔の両足をゆっくりと床に下ろしてあげた。
「これはちょっと苦しいから、あまりやらないでね。まぁ、命令違反の罰だからしょうがないけど」
「うむ。少し厳しすぎたか。次は気をつけよう。さて、ではお座りください」
魔術師は使い魔をソファーに座らせると、薄手の毛布を持って後ろに回り使い魔の肩に掛ける。
「ありがと。あなたも隣に座って」
「では、お言葉に甘えて」
隣に座った魔術師の肩にも自分に掛けられている毛布を伸ばして掛けた。
「今年も冬が来て来年も近くなったね」
「そうだね。君とこのお話を並べ始めてから、すでに一年以上の時間が現実の世界で流れている」
使い魔は目を閉じて最初の頃を思い出す。
「わたしたち、最初の頃より仲良しになってるね!」
「うむ、確かにそんな感じだ」
答えながら使い魔の方を見ると、使い魔は穏やかで嬉しそうな笑みを浮かべながら目を閉じて回想している。
「文章並べの能力も意外と向上しているかもね」
「おお! ありがたいお言葉だ。ふむ、今一度……”ぷらくてぃす”のお話を自分で読み直してみようかな」
「わたしも、そうしてみるね!」
「……地味に合計の文字数が160000文字位あるらしい。400字詰め原稿用紙……単純に考えて400枚位。今回のも入れると更にもう8枚増えるのか」
「16万文字……意外といっぱいだね」
「まぁ、時間を見つけて読み直してみるさ。さて、今回はこの辺で終わりにしよう」
「読み直すんだね」
「まぁ、ボチボチね。今回も文章並べを手伝ってくれてありがとう!」
「どういたしまして! あなたがちょっと変態気味だったけど、わたしも楽しかったよ!」
「……まぁ、何はともあれ、また次回にね」
「うん! またね!!」
という感じに今回を終わりにしよう。




