プロローグ ~恋の予感
水鳥いつきです。 童貞シリーズ第2段となります。前回はアイドルでしたが、今回は美少女に生まれ変わった主人公の話です。 楽しんで読んで頂けたらと思います。
昼休み、高校1年2組の教室の一角。
二人の少女が机を挟んで向かいあって座っている。
「私、タカシくんのことおとなしくて、可愛いなと思うんだけど……響ちゃんどう思う?」
(えっ……)
「タカシくんの顔も結構タイプなんだよね、あんまり話したことないけど優しそうだし……」
(か、顔がタイプ……なの……!?)
「ちょっと好き……かも……」
心拍数が一気に上がる、響はついガッツポーズをしてしまった。
そして静奈ちゃんの手を握り
「絶対付き合った方がいいよ! タカシくんいいよ!タカシくん最高だよ〜!」と興奮してつい立ち上がってしまった。
「ひ、響ちゃん、男の子嫌いなのにずいぶんタカシくんの事褒めるんだね……」
静奈ちゃんはビックリした顔をしている。無理もない、普段の私は男の子に興味がないと公言しているからだ。
私がこんなに喜んでいるのには理由がある。実はタカシは私なのだ。言い換えると、私は俺で、俺はタカシなのだ。
意味がわからないと思うので説明しよう。
未来の出来事。タカシという1人の老人がいた。生涯独身で当然、童貞の70歳は誰もいない部屋で1人孤独死をした、おにぎりを喉に詰まらせたのが原因だった。
孤独な人生が走馬灯のように見える。
苦しみの中、意識が遠くなると目の前に天使が現れた。
「おめでとうございます! 神様に12000人の幸せな人の1人に選ばれました。これも童貞の賜物ですね。なんせウチの神様童貞が好きで……自分が童貞のせいかしら」
「このまま天国に行くか、その前に何か1つお好きな願い事が叶えられます。どちらにしますか?」
タカシは思った。生まれ変わって人生やり直したい、でも、男はもういい。次は女に生まれ変わりたい、出来れば美少女になって……
「了解です! では美少女で生まれ変わって人生楽しんでください」
そう言うと天使は持っている杖を大きく振った。
◇
俺は過去に戻って明るい家庭に産まれ、響と名付けられた。
天使のミスなのかわざとなのか、驚いたのはタカシであった頃の記憶は失わなかったことだ。赤ちゃんの時から、響という美少女の中に、老人だった俺の魂が同居して育ってきたのだ。
俺は両親にバレないように子供を装いながら成長していく。その中で女の子としての振る舞いも覚えていった。
響は町では有名な美少女になった。芸能界からもスカウトが来たが全て断った。中身が老人の少女など全国にさらせばなにかボロが出て大変なことになってしまうかもしれない。
勉強は小学校までは当然トップだったが中学に入ると同じ所で挫折し以前と同じ様な学力になった。
響が中学を卒業するタイミングで父が家を買い引っ越しをすることになった。引っ越し先は驚いたことにタカシが生まれ育った町だった。何もかも見覚えのある町、響が通う高校も懐かしい以前通った高校だった。
入学式、響のクラスもタカシだった時と同じ1年2組、まさかと思ったが担任も一緒。本当に俺は過去に戻ったのだ。いままではちがう町にすんでいたし、知らない両親に育てられていたので全く実感がなかったが、この町に来て全てが記憶と一緒、クラスメートも机や黒板の傷も、唯一違うのは俺がいることだった。
そして俺の目線が窓際に行くとマジか!
いる……! 冴えない、陰キャだった頃の『俺』だ!
昔と同じ机の位置、陰キャで人見知りのため不安を隠せずキョロキョロしてる、懐かしい、このときは胸ポケットにしまった生徒手帳を無くしたと思って必死に探してたっけ、おぉ、やってるやってる探してる。
俺はクスッと笑ってしまった。と同時に不安なことを思い出した、
(今、アイツの頭の中は早く帰って今日発売のゲームをやることだけなんだよな……せめて、周りのクラスメートに挨拶ぐらいすればいいのに、初めが肝心だぞ。それだからクラスの友達出来ないんだよ……)
下校の時間、よし!と俺は立ち上がってタカシに近寄っていき話しかけた。
「初めまして、私は山村響。名前は?」
タカシが突然女の子に話しかけられ動揺しているのがわかる。
「川北タカシです。よろしくおねが……ま……」
声が聞き取れないぞ……緊張しすぎだろ……
でも、そう見えても頭の中は可愛いな~、僕と付き合ってデートとか行ったら周りにみられちゃうな~とか思ってるのはわかってんだよ、なんせ俺なんだから。
「タカシくん、今度私とデートする?」
あっ!と小さく声を上げると突然の図星にタカシが顔を真っ赤にして下を向いてしまった。
(なんか言えよ……)
気持ちは分かるよ、こんな可愛い子にいきなりデートとか言われたらパニックだもんな。
「いきなりゴメンね、冗談のつもりだったんだけど」
「私もゲーム好きだから、今日発売の『たかしの挑戦状』楽しみだね」
「えっ……」
「またね!」
タカシは呆然としていた……
俺は家に帰りベッドに飛び込む。本当なら美少女である自分の人生を楽しむつもりだったが、過去の自分、タカシをみると放っておけなかった。あいつに、またつまらない高校生活を送らせたくない、青春させてやりたい、今度こそ最高の人生を送らせてやりたいと思うのだった。




