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X短編  作者: 大塚斎
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85/85

ep.85 社運を賭けた

「我々のような零細企業が生き残るためには、大企業がしないようなニッチな要望にとことん応え続けるしかないんだ!」


叔父さんが従業員を前に高らかに演説する。普段とは違う叔父さんの熱い態度に気圧されてか、従業員全員がポーッと叔父さんを見つめる。狭い執務室、もとい事務部屋は異様な雰囲気に包まれていた。

叔父さんの言うことはもっともだ。俺もその意見には賛成だ。


「他の企業の後追いではだめだ。私たち独自の商品・技術が必要だ! そうだろ? 田中さん!」


頑固親父の代表例のような田中のじいさんも「お、おう」と引き気味だ。

叔父さんの言ってることはまともに聞こえるから、たちが悪い。俺だって、この後に告げられる内容を知らなければ、田中のじいさんや鈴木のばあさんみたいに叔父さんの演説に陶酔できたのに。


「そこで、俺はこれに社運を賭けたい!」


叔父さんはもったいぶるかのように、事務部屋にいる全員の顔を見た。叔父さんを除くと四人しかいないからすぐに見終わる。


「ちらし寿司ケーキだ! 味は言わずもがな、見た目も可愛い。間違いなく流行る!」


田中のじいさんと鈴木のばあさんが感嘆の声を上げている。

……しょうがない。叔父さんの暴走を止めるのは俺しかいない。重い腰を上げたその時だった。


「そういうの、もうありますよ」


今まで黙っていた俺と同い年の従業員、山田さんが声を上げた。


「それにうちはただの町工場です。いきなり食品を扱う意味が分かりません」

「だ、だが」

「話は以上ですか?」


叔父さんは見るからに勢いを失っていた。気の毒になってくる。

返事を待たずに山田さんは事務部屋を後にした。これから工場で作業の続きをするのだろう。

田中のじいさんと鈴木のばあさんも叔父さんに気を遣いながら部屋を出た。


しょうがない。これも俺の務めだ。


叔父さんをフォローすべく、俺は立ち上がった。

Q. お題:6/27は何の日?

A. 演説の日、ちらし寿司の日、零細・中小企業デー

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