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X短編  作者: 大塚斎
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ep.78 蜜柑の香り

 十年ぶりに実家に帰る途中、爽やかで懐かしい香りとすれ違った。振り向くと、見覚えのある茶色いコートの後ろ姿が目に入る。



『ミカだから、私、蜜柑が好きなの』



 高三まで付き合っていた彼女の口癖を思い出す。

 気づけば、肩をたたいていた。



「ミカ!」



 久しぶりの帰省で会えるかもしれない、と期待はしていた。

 でも、まさか現実になるとは!



 振り向いた彼女の顔を見る。




 ……誰だこの人は?

 目の前の女性は、不審者を見るかのような冷たい目で俺を見る。



「あの、何か?」



 そうだよな。いきなり見知らぬ人に、背後から肩を叩かれたんだ。

 そりゃ、怪訝な表情にもなる。



「え、あ。すみません……」



 女性はすぐに背を向け歩いていった。




 ああ、蜜柑の香りが遠ざかっていく。

某小説道場の課題で書いたものを、加筆修正しました。

お題:すれ違い

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