70/76
ep.70 西から東へ
「クチャまであとどのくらい?」
砂と汗で張り付く中、弟が言った。
そんなことは俺が聞きたい、という言葉は飲み込む。
本当ならローマからイスタンブールまでの旅路はずが、何故かクチャという都市まで行くことになった。
弟が東の果てから来たというあの商人をほっておけなかったのだ。仕方ない。
喉を潤したくて、その商人から貰った珍しい水を飲んだ。
シュワシュワと甘い泡が口の中で弾ける。生温くて、逆に口の中の水分が奪われた。
「うわっ、何これ?」
「あ、それサイダーって言うらしい」
「俺の知ってるサイダーじゃない」
「確かにお酒ではないね」
顔を顰める俺に気にせず淡々と弟は答える。
「この道は長安ってとこまで続いてるらしいよ」
「へぇ」
「どんなところなんだろうね?」
弟にはまだ目を輝かせられるだけの余力があるようだ。
「行ってみたいね」
「……そうだな」
本当は勘弁願いたいが、いつにもまして明るい表情をする弟の前では言えなかった。
お題:3/28は何の日?
A. 三ツ矢サイダーの日、シルクロードの日




