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加護なしハズレ闇侯爵の聖女になりまして~ご飯に釣られて皇帝選定会に出ています~  作者: 富士とまと


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ぬすっとたけだけしいしし

 何があったんだろうと、慌てて声のしたほうにかけていくと、せっかく作った畝は崩され、植えたジャガイモが掘り返されて奪われている。

 子供たちが涙を流して座り込み、乱暴に畑を荒らしている男たちを止めようと、数人の畑仕事に従事していた村人が追いすがる。

「何をしているの!」

 ひどい!

 せっかく皆で枯れた作物を引き抜き、ジャガイモがよく育つようにと耕して畝をつくり、丁寧に植えたジャガイモを……!

 ミーニャちゃんたち小さな子供たちも、一生懸命お手伝いしていた。

 重たいジャガイモを運び、足腰が痛むといいながら植えていたおじいさんもいた。

 その畑を……!

「何をしているだと?見ての通りだ」

 見ての通りって。

 私に突っかかってきたあの男が声を上げた。

「今すぐやめて!辞めさせて!」

 私の言葉に、畑を荒らし続けている人たちが手を止めた。

「構うもんか、続けろ!」

 男の命令で再び20人ほどの人間が畑の畝を崩し、ジャガイモを掘り出して持ち去っていく。

「なんでそんなひどいことができるのっ!あなたに何の権利があって」

「俺の畑だ。どうしようと勝手だろう?いや、正確には俺の親父の畑だが、くたばりかけた親父に変わって俺が管理してるんだ。自分の畑をどうしようと誰に何を言われることもねぇだろ?」

「え?あなたの畑?」

 村人は、自分の畑にそれぞれが植えていたはずだ。

「嘘をつかないで!」

 私の言葉に、男が胸を反らして大笑いする。

「あははは、何にも知らねーのかよ。聖女のくせに、いや、闇聖女なんて聖女のうちにはいらねぇし、知らなくても仕方ないのか?俺は、村長の息子だ。村の土地はすべて村長のものだ。それを村人に貸してやってるだけだ」

 うそ……。

「つまり、この畑も、あの畑も、ぜーんぶ俺の親父、いや、それを継ぐ俺のもん。何しようと勝手だろう」

 嘘、嘘。

 そんな……じゃぁ、せっかく植えたジャガイモが掘り出されても何も言えないの?泣きながら見ている子供たち、悔しそうに唇をかみしめている村人たちに……何も、してあげられないの?

 呆然と立ち尽くす私の前で、村長の息子だという男と、その仲間がちが次々に畑を荒らしていく。

「ははは、これだけジャガイモがありゃ、腹いっぱい食えるぞ」

「ああ、こりゃいい」

 畑に植えたジャガイモを抱えて立ち去る姿を引き留めることも出来ない……。

「何も知らないのはどちらでしょうかね」

 男の上空に影が落ちたかと思うと、人が宙から落ちてきた。

「セス!」

 見上げれば飛び去るビビカ。ビビカが連れてきたのか。

 セスが男と私の間に立つ。

「この国の土地の持ち主は皇帝にあります。皇帝が管理を各侯爵に管理を任せ、侯爵が各地の領主に任せ、領主が町長や村長に任せているだけです。そして村長が村人に畑を任せているのですが?任せられた畑がこんなに荒れているということならば、村長には管理能力がありませんね。別の人に交代してもらう必要がありそうです」

 セスの言葉に、男が慌てた。

「なっ、何を、管理しているだろう。麦を植える畑に別のものを植えられては困る、だから、俺が親父に変わって正常に戻そうと……」

 セスが前に一歩踏み出した。

「もう一度言います。持ち主は皇帝です。侯爵がその次に強い権利を持ちます。今は皇帝選定会の最中ですから、土侯爵と同等の権利を水侯爵と闇侯爵が持ちます。つまり、村長よりもずっと上の権利を闇侯爵および闇聖女が持っている。その闇聖女であるリコ様が村人に指示したことが困ると?……はて?あなたは皇帝でしたか?」

 男がうっと言葉に詰まった。

「し、知らなかったんだ、そう、俺はただの村人だ。学のない村人だから、そんなこと……知らなかった……」

 男の腰が引けた。

「知らなかったからって……」

 だからって、皆が一生懸命植えた畑を荒らすなんて、どうしてできるの。

 私に腹を立てているなら、私に言えばいい。なぜ、他の人の努力を踏みにじるようなことを!

 悔しくて悲しくて腹立たしくて、奥歯を食いしめる。

「知らなくても、罪は罪なんですよ?リコ様は、皆になんと言いましたか?ジャガイモを植えてくれと言ったのでは?」

 村人が頷いている。

「じゃがいもを、あげるとは一言も言っていないでしょう?植えてくれと渡した。つまり、じゃがいもの所有権は聖女であるリコ様にある。それを、畑から盗んだ。窃盗が罪だということくらいはどんな田舎者でも学のない者でも知っているはずですよ。どんな罰が下るかも、当然分かってますよね?」

 男と一緒になって畑を荒らしていた人たちが青ざめ、抱えていたジャガイモを取り落として逃げていく。

「逃げても無駄です。窃盗は、盗んだものの数、価値で決められた回数鞭打ち。100を超えた場合は、二度と盗みができなうように腕を切り落とすか、強制労働」

 逃げても無駄だと言われて立ち止まった者たちががくがくと震えながら、男を指さした。


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