波乱の卒業パーティ
今日は三月十日。卒業パーティの日だ。……一般生徒にとっては。
だが、ロイズ王太子にとっては違った!!!
(今日、ソフィアが生まれたのか、全世界の神々にお礼を言わなくてはならないな)
ロイズ王太子は世界が光り輝いて見えた。あの地獄のようなデートの予行練習を経て、ロイズ王太子はあらためて婚約者にはっきりと伝えなくてはならないことがあるのだと分かったのだ。もはや百回目のチェスなど待っているのも惜しい。
(ソフィア……私はこの記念すべき君の誕生日に……告白する)
しかし実際には今日はソフィアの誕生日ではない。そしてこの卒業パーティという舞台。ロイズ王太子が隣国の王子にキスをしたという男色家の噂、そしてソフィア公爵令嬢の元気がないという噂、そしてロイズ王太子とソフィア公爵令嬢の間で長年囁かれていた白い婚約説、これらが奇跡的にミスマッチングした。
「ソフィア、話があるーー」
卒業パーティの壇上で高らかに口を開いたロイズ王太子は極度の緊張から瞳は温度を失い、かたい声で告げた。そしてその声はわずかに震え、言いよどむように言葉を切った。
卒業パーティに居合わせた一同は思わず息を呑む。これはーーどうみても婚約破棄の流れ!!!!
「ちょおっと、まったああ!!!」
壇上にあがるソフィア公爵令嬢の前に割り込んでアミーユ男爵令嬢は両手を広げた。
「こっちから切り出させてもらいますう! ソフィア様を傷つけようったってそうはいかないんですからね!」
すっかり仲良くなっていたソフィアとアミーユだった。ロイズ王太子は思わぬ事態に目をぱちくりさせる。
(話がかみあわないが……この女性はたしかソフィアの友人だったな)
一方ソフィアはアミーユの優しさに涙が出そうだった。どう考えても心変わりからの婚約破棄! ソフィアは過呼吸を起こしそうだった。
「不貞疑惑で婚約破棄を申し付けます!!」
びしいと指を突きつけるアミーユにロイズ王太子は目が回った。なんて濡れ衣!というには心当たりがありすぎる!!
すっかり打ち解けたアミーユにソフィア公爵令嬢はあの奇抜な人物が実は王太子だと打ち明けてしまっていたのだ。アミーユは噂好きだが親友の秘密をペラペラしゃべるほどではない。そこのところはわきまえているのだ。
まさかまさか、愛の告白をしようとした矢先に、不貞疑惑での婚約破棄を逆に突きつけられることになってロイズ王太子は絶句した。
「慰謝料はらってください!」
そう言い切ったアミーユは泣きそうなソフィアを背中に隠して仁王立ちだ。ロイズ王太子は慌てた。だが傍目には涼しげに立っているように見える。
(今日はソフィアの誕生日だというのに……なんて日だ)
続いてつかつかと壇上に上がってきたのは隣国のシエル王太子だ。耳ざとい彼はロイズ王太子とソフィア公爵令嬢が白い婚約だという噂を耳に入れていた。漁夫の利をねらって卒業パーティーに潜んでいたのだ。あれだけきっちりと釘をさされたというのになんて鋼の心臓! しかもアージダ王国の言語をマスターしてパワーアップしてきていた。
「では、わたしからも。ソフィア様、愛しています……私はあなた一筋だから安心してくださいね」
これは……三角関係ならぬ四角関係である!!! 会場のものは息を呑んだ! なんて刺激的な卒業パーティーだろう!
「いや、これは……」
ロイズ王太子は言いよどんだ。まさかまさか告白をするつもりが、告白を先取りされてしまった!! これでは今から告白しても二番煎じだ!
「ロイズ様……愛しておりました」
涙を浮かべてしんみりとソフィアは口を開いた。ここでさらにまさかの逆プロポーズだ!!
会場が沸いた!!
婚約破棄される令嬢からの涙の愛の告白だ! 会場の涙をさそった。
そしてこの言葉はだれよりもロイズ王太子の心臓に刺さった!!
ロイズ王太子の告白へのハードルは山のごとしだったが、それを乗り越える最後の一押しをしたのがソフィアの言葉だったのだ!! 長年言えなかった言葉は驚くべきほどすんなりと口から転がり落ちた。
「ソフィア……私は君を愛している!」
あっけにとられる会場と、固まるシエル王太子、ぽかんとするアミーユの前で恥ずかしげもなくロイズ王太子は言い切った。
そのままソフィアの立っているところに回り込んでぎゅうっと情熱的に抱きしめたのだ。あれだけ冷静だったロイズ王太子らしくもない。
「ソフィア……誕生日おめでとう」
耳元でささやかれる言葉にソフィア公爵令嬢もぽかんとした。
どうやらこの会場にいる全員は揃いも揃っておおいなる勘違いをしているようだった!!!
次回ようやくデート&エンド




