326 ご立派で……
興味本位で開いたステータスボードだったが、色々と情報量が増えていて目が泳いだ。
称号Ⅱ?
付与術?
種族固有スキル……。
「成長しすぎじゃないか……コレ。増えてるだけの可能性も……いや、強くなってるか」
久々に見た自分のステータスは、己の体が段々と化け物じみていることを教えられた気分になった。
「…………やっばぁ」
そんな言葉しか出てこない。
これってやばいよな……。知らない単語とかたくさんあるし。
「うわあ……ますたー……これ、どうしたんですか」
ひょいと横に現れたエリルは顔を覗き込んで。
「エリル……ステータスボードを久々に見てみたんだけどさ。色々とすごいことになってた」
ぼくがそんなに頻繁にチェックするような人じゃないから、エリルもそれに合わせてくれている。
二人してステータスボードを見て、これなんだろ、とか指をさして見ていって。
「ステータス欄がいっぱいあるのに、レベル低いですね……」
「472って低いの? だって中堅というか……高いほうじゃないの?」
「ますたーの年代にしては高いですよ?」
「あ、転生者にしてはってこと……」
「それと段々とレベルは上がりにくくなるものです。500辺りからは一気に上がるのが遅くなりますね。そこからが勝負時です」
勝負時か。他の人のレベルがどうかは分からないからな。
「っ……あ、イブ。700は行ってないって言ってたか。それと張ってたケトスもそこら辺だとして……えっ、バケモンすぎない?」
そんな人達と一緒にパーティーを組んで依頼してたの?
ひぇ……こわい。
「で、この称号Ⅱってのが新しいな。なんて? えーと、なんて……?」
「不撓不屈、屍を超えし者、研究者、契約者、山岳の盟主……? あ、補記に説明が書かれてる。へぇー……あ、危ない目に合いすぎてステータスも苦笑いしてるってことですね!」
「ステータスにもバカにされてるの……」
逆境になると強くなったりする。
あとは、まぁ……山の長になったーとか、そういうのか。ステータス上昇って言われても、まぁ、得意な土地なら動きやすいっていう奴の延長線上だと思えばいいか。訓練でも山の中だったから、山の中は戦いやすいし。
一々見ていったら時間がかかりすぎるな。とりあえず、今視るべきなのは、
「種族固有スキル。身体変化だ」
「えー、ステータスボードを視るのにもっと時間をかけていきましょうよぉ。せっかくのアレですよ? ほら、アレッ! 数値! 自分の頑張りが分かるってヤツ!」
「そんなの見るより、やることがあるの……!!」
「わあ……なんで怒ってるんですかぁ。エリル、かなしい……」
「姿を変えないといけないんだから! 手伝って!」
「もーーー、ますたーー、自分に厳しすぎですよお」
「あとでも見れるでしょ!」
ぐいとエリルの手を引っ張って、ケトスの部屋にあったデッカイ鏡を引っ張り出した。
スキルにあるってことは使えるってことだ。さて、意識をしてみよう。
(服は脱いだ方がいいか)
準備は万全。あとは、使ったことのないスキルの使い方だけど……こういうのには慣れてるな。叫ばずともできるとしっている。
「身体変化──」
魔素が体中から溢れて、しばらくすると体が変わった。
「おぉ……」
鏡の前に現れたのは、平野明人の裸体。
服までは作れないらしい。
「すご……ってか、こんな感じだったっけ。ぼさぼさ過ぎるな髪の毛」
自分の手の色を見てみる。あのときの肌色。あのときの顔。関節もこんな感じだったなって思う。髪質もうん。体臭……までは分からないか。
「あーでも。瞳と髪の色までは変えれないのね」
それでも上々だな。
「どう、エリル。元の世界のぼくなんだけど……」
振り返ってみたら、エリルは両手で顔を隠していた。
「エリル……?」
「きゃあ……ぁ〜……」
閉じていた指を一気にパッと開けて、下の方に目を向けて、また黄色い声を出して閉ざしていた。
「きゃ……ぁ」
「えっ、なにさ。ただの裸だよ?」
「裸は”ただの”っていいませんが!? 服を着てください! 服を!」
「見慣れたもんでしょ。お風呂に入ってるときによく勉強の復習とかしてるじゃん」
「子どものお◯ん◯んなんてっ!──」
「──ち◯ち◯言うな!」
「かわいいゾウさんじゃないですか! 今のますたーはっ! おとなっ! 大人のぞうさんなんですッ!!」
「はあああ……」
なに言ってんだか。
「神様って裸体のイメージあるけど?」
「服着てますよ! なに言ってんですか!」
──ガラッ。
「さっきからなに叫んでんだ! 人の家でッ──」
リリーさんが扉を開けて中に入ると、エリルと同じように両手で顔を覆った。
「なんっ……うぇ……部屋間違えた……? こわいよぉ……」
「クラディスですよ。身体変化を使ってて……」
「えぇ……? クラディス少年?……」
指の感覚を開け、赤色の瞳がぼくの目とあった。
愛想笑いを浮かべると目線は段々と下がっていき、ピタと止まるとまた顔まで視線が上がって耳まで真っ赤になっていた。
「ご立派で……」
「あぁ、どうも……」
リリーさんに言われるとなんか恥ずかしいな。
脱いでいた服を持ち上げて、陰部を隠しておいた。




