230 依頼の引き継ぎ
アルマさんのことをムロさん達に伝えると、エルシアさんは泣きながら喜んでくれて、レヴィさんは不思議そうな顔をしていた。
だけど、すぐに訳アリなんだと分かってくれたようで話を合わせてくれた。
で、ムロさん達のクエストはまだまだ時間がかかるので、もうしばらくは始まりの地の街に滞在することにしたらしい。
あの日のことも伝えておいた。すると、半信半疑。
信じたいけど、魔族がそんな友好的な態度を示すのかというものだった。火傷痕の話をしたら、少し信憑性が増したのを感じたけど、それでも完全に信じきれてはいないみたいだ。
魔族がいる確率が増したのはそう。で、魔族が居るということは、討伐もしなければならない。
ぼくの話が何かの役に立てばいいけどなぁ〜……何も役に立って無い気がする。
それで、なんだけど。
僕たちだけで先に帰るのも忍びないので、街にいることにしたんだけど……前の話。アルマさんを連れている以上、野宿の方がいいだろうということで、野宿です。
「すっごーい! キャンプみたい!! わああ! ちょっとっ、ワクワクするねっ!」
初日と比べ、アルマ姉さんはハキハキと喋ってくれるようになったし、いろんな話をしたら、へへへとよく笑ってくれるようになった。
とてもいい顔で笑ってくれる……けど、この世界の話をする際にちょっと疎い部分があるし、やっぱり魔族なんだなぁって感じる。
特に強めのスキルを使わなければ黒い魔素が出てこないみたいだから、魔族だと知られることはないかな?
(色々と考えることが山積みだな……)
そうしていると、カチャと黒い手が行く手を阻み、曲がり角を剣で指した。
「お、探知もできるの? ボルル君は」
コクリと頷かれ「は〜、すっげぇ」と感嘆の言葉を向けた。
「優秀な使い魔だ」
「ね。すごいや」
「で、ぼるる君っていうのは……?」
「この子の名前。名前つけないと可哀想かなって思って。なんか、ボルルッって感じしない? 偉大なる黒炎骸骨騎士……っていうのも面倒だし。ねぇ?」
コツと隣を歩いてる骸骨騎士の胸をノックすると、反応に困ってる様子。
「わ、わたしもっ、ぼるるって名前が気に入りましたので!」
「ほら。アルマ姉さんもそう言ってる。決まりだ」
ちょっと骸骨騎士の肩が落ちた気がする。なんだ、気に入らなかったのか。正直に言わないとわからないぞ。
「……あるじの名前のセンスはちょっと」
「なにさ。いいのいいの。気持ちがこもってるから」
談笑をしながら歩いているのは、ダンジョンの中。
始まりの地でムロさん達を待つのが暇だったから適当にクエストをして待つ事にしたのだ。ずっとキャンプも飽きたし、こういう隙間時間を使ってなにかするのはいいことだ。うんうん。
それこそ鉱石集めとか、魔物の討伐とか、ダンジョンに戻って五階層より下に潜ったりもしていた。万全の状態だとモンスターに苦戦することもないし。
その時に黒炎ノ骸骨騎士を出してもらって、一緒に歩いていたのだ。ちなみに、五階層のモンスターはボルル君が圧倒して終わった。強すぎな気がする。
「ンで、その感知は凄いありがたいんだけども……」
ダンジョン六階層の天井に当たりそうなボルル君を見上げた。
「もっと小さくなれたりしないの?」
『……』
「喋れないの? ぼく、言葉分かるかもよ?」
『……』
「あ、喉がそうか。骨だから……ごめんよ。アルマ姉さん。ボルル君の体ってもう少し小さくできない? ダンジョン内が歩きにくそうだからさ」
「や、やってみます……!」
目を瞑ってボルル君に触ると、萎むような形でムロさんくらいのサイズになった。
「おお……召喚魔法ってそんなことも出来るんだ……」
『おぉ……』
「え、ボルル君。今、喋ったでしょ」
『……しゃべ、った、かも、しれない』
「うわあ、喋ってる。え、すご。意思の疎通が取れる。聞いて二人とも、ボルルくんが」
「「え、聞こえ(ませんが)ないけど」」
「あれぇ……? ボルルくん、もっと大きな声で喋れる?」
『できる、が、いいのか?』
「あ、咆哮とかじゃなくてね。……まぁ、やめとこうか」
そもそも、この声量で聞こえない訳がないもんな。2人には聞こえていないのか。
魔物の言葉が分かるということは、『言語理解』もレベルアップをしているのかもしれないのかな。
地道に成長していってる!! よっし。
魔素に関しての理解が深まってきたから、そのうちそこらへんにいる魔物と話せるようになって……そしたら平和的解決ができようになるかもしれない。
全部が全部平和的解決ができるとは思わないけど、無意味な争いは少しだけ減るかもしれないな。
(そう思うと、ワクワクしてきたな)
その後も、ボルル君と僕とアンが先頭を歩いて、アルマさんが一歩後ろを歩いてダンジョンの中を進んで行っていった。
僕達のことを無害だと理解してくれた後は、ボルル君も全く敵意を向けてこなくなった。そうであるなら頼もしい味方だ。
結局、最終階層の手前まで行った。ボス部屋は攻略は辞めておこうという話になって、引き換えした。
一杯魔石を取れたぞ。やったぜ。
◇◇◇
「え、追加滞在ですか……?」
約束の日に再び三人が宿泊しているところに行くと、三人から話があると言われた。そしたら、そう言われた。追加滞在っていうのに聞き覚えはないけど……意味は分かる。
「あぁ、すまない。近くでクエストをしていたアサルトリアの冒険者が応援で駆けつけるとの連絡が入ってな。調査範囲を拡大することにしたのだ」
どうやら調査を進めていく中で、魔族の情報の信憑性が増してきたらしい。ぼくの話も込みでの話だろうけど、仲間を応援に駆けつけて、実際に討伐の流れに移行するのだろう。
話の節々から緊張感が感じられた。
当然だけど、魔族は強い存在だ。命がけの調査になるのは必須。
(多分、というか絶対あの魔族なんだろうけど……)
複雑な感情だ。あんなヤツでも人を襲うのだろうか。ヘラヘラして、会話ができて……。いや、こんな思考回路じゃダメだ。
──魔族と会話はしてはならない。
うん。それを徹底していかないと……。
「それで、なんだが、引き継ぎをしたい」
「引き継ぎ……?」
警護のクエストも受けていたレヴィさん達は期日超過をしないために僕達に引き継ぎをするのだと言ってきた。
「引き継ぎって、そんなことしてもいいんですか?」
「調査や探索ではよくあることだ。既にハンスさんやギルドには通達している」
「まぁ、お前らがやるかどうかは別だけどな〜」
「……一応聞きますけど、僕らが引き受けなかったらどうするつもりだったんですか」
僕の質問にレヴィさんは少し悩む様子を見せた。
「クラディスなら受けてくれると思っていたのだが……ダメか?」
「ダメ……じゃないですけども」
そんな小悪魔みたいな頼み方、どこで身につけたんですかレヴィさん。
この三人に信頼されてるって考えたら悪くは無いけど、ちょっと複雑ではある。
警護クエストを引き継ぐということは、この街を離れるということ。
「まぁまぁ〜クラちゃんもアンちゃんもアルマちゃんも気負わなくていいって! ムロやレヴィが引き継ぎするってそうそうないからさ」
「そうだな」
「それに、依頼主さんも気に入ってたみたいだし!」
「見た目によらず強いって評価だけどな〜」
「そろそろ冬季に本格にはいるから先に帰ってた方がいいかなぁーって。ほら! 準備も色々あるだろうからって話!」
「それは確かにな」
「ってことで! あとは任せました!!」
エルシアさんとムロさんの言葉に流され、渋々と承諾をして三人の宿舎を出ていった。
一緒に帰れると思ってたのになぁ……。
少し残念だけど切り替えるしかないか。
この世界の冬季……まぁ冬だな、それがどんなものかって分からないし。実際準備もそんなにやってない。




