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137 中位部門 大博打

評価と!!!! ブックマークしてくださりありがとうございます!!!!!!!!!



 少ししかない休憩中に会話を楽しんでいると実況の人の声が聞こえてきて休憩が終わることを伝えられた。それと同時に下位部門より少ない人数の参加者がゾロゾロと出てきて、修繕された場内に散らばった。

 集まった参加者の見た目はそこまで変わらないけど、やはり一皮むけているというか、そういった雰囲気が感じられるような気がする。


『戦士達が全員出揃いました!! 今回は誰が勝利をつかむのでしょうか!? 私にもわかりません!』


「ほんとかー!!? 分かってんじゃねぇのかぁー!」


「そうだそうだ!!」


『おぉっと!? ははは、分かっていたら私はこの席から出て、賭ける側に回ってるでしょう!!』


 常連客との会話が拡声器を通じて闘技場中に響いた。

 みんなは笑っていたが僕はそれどころではなく、参加者一人一人を真剣に見つめて手元の端末の情報を確認していた。


『今回は前回参加し、1位だったペリカが参加しているぞぉー! それに下位部門で計3回上位に入っていたヴェルクが中位部門へと上がってきました!!』


「ヴェルクー! 俺はお前に賭けるからなぁ!!」


「優勝はしなくてもいいから三位には入ってくれぇ!!」


『そしてそして! コイツも目が離せない! 下位部門で経験を積んで中位へと上がってきたこの奴隷! 奴隷番号1003番だ!!! 出場回数は5度目ではありますが、上位三位へは最後の一度だけ! しかし、生きてここまで上がってきた!! 何かする予感が有ります!!』


「他の奴隷の紹介はしねぇのかー!! 他のやつの紹介をしろよー!!」


「1003番が勝てる訳ないだろ! いい加減にしろよ!!」


 独自のノリというか、内輪ノリというか……だけど、勝手に盛り上がって優勝候補に近い参加者の名前を言ってくれるのはとてもありがたい。

 その人らには多くの人が賭けると思うから……それ以外の人で勝てそうな人を探せば……。と、そんな都合よくいないよなぁ。


(『魔素感知』に意識を向けても分からないし……ええい! 『神運』任せで目をつむって賭けてみるか!?)


「クラディス君、ねぇねぇ見て見て」


「……? どうしました?」


 目を瞑って『魔素感知』に集中していると、ペルシェトさんが肩をポンポンと叩いてきた。


「あそこ、右奥のとこ。端に立ってる参加者の人」


「端に立ってる……? んー……? なんです? あの人」


 言われたところを見てみるとキュートなクマの大きな被り物を付けて、緑のマントのようなものを羽織っている明らかに目立っている人が立っていた。

 本当なら真っ先に脱落しそうな被り物をしている人なんか放っておいた方がいいけど……どうしてか、僕はあのクマに興味がわいた。

 なんだあのクマさん。


(……前に会ったことがあるか?)


 目を凝らしてよく見ていくと、その人の左腕に目が止まった。


「左腕……」


「開催されるたびに何人か出場する盛り上げ役の人ですかね? 中には売名行為をする人もいますからね」


「可愛いけど、目立っちゃうから直ぐに倒されちゃいそうですね」


「観戦している私達の目が留まるってことは、中にいる人の目にも留まってしまいますから」


「――いや。僕、多分……あの人知ってます」


 あの手首から腕までの包帯……背丈、雰囲気……。

 多分そうだ。確証はない、包帯なんてしてる人は多いだろう。でも、直感的なところで感じるモノがあった。

 僕は残り時間が10秒を切ったところで、端末に自分が持っているお金の全てを賭けるように設定した。


「あのクマの被り物の人と知り合いなんですか?」


「クラディスくん顔が広いね〜、知り合いにあんな人いないよ」


「僕なんかより、お二人の方がよく知ってると思いますよ」


「私達も……」


「知っている?」


 自分の端末に表示された“マーシー”と言う名前の戦士に“賭け方上位1人”で全額を投じた。

 闘技台に立って観客席を見渡しているようなマーシーを見て、祈るように手を組んだ。



      ◇◇◇



 多くの投票が終わり、締め切られたことで中位部門が開始された。


 下位部門と同様に開始早々は中央が乱戦状態となり、技と技のぶつかり合いが始まった。


 だが、下位にはあまり見られない光景が見えた。それは、中央から多く外れて場外スレスレで中央の戦いに混じらずにいる参加者達だ。彼らは最初の当たりあいこそ一番脱落する危険が高いと判断している。


 レベル450以上の部門ではレベル上限はなく、言ってしまえばこの世界の最大のレベルと言われているレベル999の者が参加することもあるし、魔導皇、教皇、皇や王国元帥らも参加することもできる。


 それほどまでに力量が顕著に表れることがある部門だ。


 参加番号113番:登録名:マーシー

 職業:冒険者――狙撃手(ガンナー)重装槍士(アーマード・ランサー)重装剣士アーマード・フェンサー


 その中でもこの参加者は、戦いを静観するわけでもなく、戦っているわけでもない。ただただ観客席の方を見て何かを探しているようだった。


「いねぇなぁ。ほんとにあいつら来てんのか? 私が勝たねぇと損しかねぇもんなぁ。んぁー……それにしても、クマの被り物(コレ)いいなぁ。予想より可愛い」


 自分が付けている被り物をペタペタと触りながら少しずつ回転しながら観客席を見つめていると、探していた人達より先にどこかで見た顔を見つけて体を止めた。


「おっ……あいつって確か、クラ……クラなんとか、デスだっけ。クラデス? そんな名前だったな。へぇ、若いのに闘技場(こんなところ)に来るのか」


 見つけた白髪の少年に向かって手を振ると、こちらを見て体を強張らせているのが見えて「あぁ?」と声を出した。


「なんだあいつ、私のこと覚えてねぇのか? 失礼な奴だな。こっちだけ覚えてるのは違うだろ……。ん、そうか、今の私は可愛いクマか。なら仕方ねぇか……」


「まずはてめぇだ!! クマァッ!!!」


 もう一度少年に向かって手を大きく振っていると、背後から小柄な男性が切りかかってきた。それを手に持っていた剣でいなして、地面に突き刺すように軌道を変え、その上から足の底で自重をかけた。


「いきなり攻撃とかやる気満々かよ」


「なっんだおめぇ!! クソっ!! 退け!」


「なんだおめぇって、口悪すぎだろてめぇ」


 レベル450オーバーの者しか集わない部門なのだが、切りかかってきた戦士とマーシーでは明らかな実力差が見える。

 被り物の下ではどのような顔をしているのかわからないが、傍から見たら目がくりくりしている可愛らしいクマさんが男の剣を抜かせないように体重をかけ続けている。


「あーっと……これ……えーと、何したら勝ちだっけ」


「あぁ!!?」


「これって何したら勝つんだっけ。お前知ってるか?」


「なに、ふざけたこと……言ってんだ……!!」


「相手を殺さないとダメなんだっけか? んぁ……説明聞いた気がするけどよく覚えてねぇなぁ……」


 悩んでいる様子のマーシーは男の背後の戦闘の方にちらっと確認して、小さく「あぁ」と呟いた。


 その様子に苛立ちが限界を迎えた男は剣を手放し、そのまま殴りかかってきた。

 それをサッと完璧に避けたつもりが被り物の端に当たってしまい、被り物がグルグルと回転してしまう。


「うぉぉぉ……! なんだっ! 目がぁぁっ……」


 回転するクマの被り物をパシッと捕まえて顔部分を前面にしようと移動させようとしたのだが、男がすぐに切りかかってきたのを感じ、剣が届くの寸前で体勢を屈めて避けた。


 ――スパンッ。

 

「はっ、えっ!!? なんか切れた音したぞ!!」 


 焦ってクマを触ると右耳が切断されていた。

 もちろん痛覚はないし、マーシー自身の耳が傷ついたわけではない。

 だが、耳が切れたことを確認したマーシーは腕を下げて闘技場から借りていた小刀を離し、腰の収納袋から右手に槍を召喚した。


「クマ野郎!! おとなしく死にやがれ!!」


 再度切りかかってくる男を被り物の中から視認した。

 その男が持っている剣は闘技場が支給したようなチープな物ではなく、一級品ではないが、それなりの業物のように思えた。しかし……。


 ――チリッ。

 

「えっ」


「お前、終わりな」


 男の振りかぶっていた剣が消え、下にあったハズの槍の矛先が上へと向いていた。


「なっ――うぉっ!!?」


「安心しろ、耳の修理費は請求しねぇから」


 マーシーの振り上げは男の剣を大壊させ、男の手から消し飛ばしていたのだ。

 そのまま自然落下する男を石突きで軽々しく持ち上げて場外に投げ飛ばした。


『おおっと!!!? マーシーが、掛け金8位のギュードをぶん投げたぁ!!?』


「はぁっ!? あいつが掛け金8位だぁ? マジか。うちのやつらの方が強いだろ」


 実況の男の言葉を疑ったが、改めてクマの耳が切られたことを確認して肩を落とした。それほどまでにお気に入りだったのだろう。

 場外に飛ばした男をすごい形相睨み付けたが、クマの被り物で遮られている。クリクリで可愛らしい目ではイマイチ迫力がない。


「……あーあ、腹立つ。せっかくあいつらが選んでくれたやつなのにさー……。まぁ、一位になりゃ喜んでくれるか」


 片手に持っていた槍を収納袋に収納して近接用の剣を召喚し、向かい側の集団の中に入っていった。

このペリカって名前、結構好きなんです。

2016年の下書きの時にも出てきていた人なんですよね!(余談)

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