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118 お揃いの首飾り


 イブと話した『お別れ会』の内容を果たすために、僕達は血盟ティータに戻りケトスの確保に成功した。

 前回たくさんのおまけをくれた商店街方面へと歩いて行った。

 

「さぁさぁ何を企んでるのかな? クラディス少年は」


「明日はイブのパパ――」


「ふぁざー!」


「……が来るから、この前のオークの時にやった競争のアレをね」


「オーク……。もしかしてクラディスのご飯!?」


「そう! ボクとケトスさんが勝ったからね~。ちゃんと覚えててくれたみたい」


 二人して両手を上げて喜んでいるのを見て、僕も笑いが零れた。


「忘れてていいなら、今日はお開きにしてもいいけど」


「「えー」」


「ははは、うそうそ。何作ろうかなぁ。何か作ってほしい料理とかってある?」


「な、なんでもいいの?」


「できる限り頑張らせてもらうよ」


「食事処のカリーなんとかってやつ!」


「いつものスープ! オムライス!」


「多い多い。……カリーとスープは合わない気がするけど、あうかな、あうように作ればいいか」


 カリーというのはカレーのことで、この世界にきた【転生者】の人が作った料理の名前が若干違って伝わったのだろうと思う。それとも日本人とは限らないから、発音とかの問題かな。


 カレー、カリー……。ジャガイモ、玉ねぎ、ニンジン、油は家にあるとして……あまり変なの入れてもダメかな。


 肉は豚……鶏……せっかくだから牛の方がいいか、ケトスが払ってくれるし。カレーの元とかはあるのか? カレーペーストを作る……? したことはないから失敗する気しかしないが、やろうと思ったらやれるか。

 ふむ、だったらまずは、野菜から買って行こうかな。


「じゃあ、それを作るようにしようか。先に野菜を買いたいからあっち行っていい?」


「――ね、クラディスクラディス。なんかたくさんあるお店がある」


 イブが袖を引っ張って指をさしていたのは雑貨屋さんだった。武器とか刃物が少し、あとは装飾品のような小さいモノが多い。

 この世界にもこんなのがあったのか。


「……時間もあるし、気になるなら寄ってみる?」


「うんっ!」


「せっかくだからお揃いのを買ったりしてみてもいいしなぁ」


「「お揃い……!!」」


 僕がボソッと言った言葉に目を輝かせる二人を見て、また笑いが込み上げてきた。

 僕もこういうのは慣れないけど、二人もそういう反応をしてくれてありがたいな。


 ケトスは少し奥まで入って行き、色々なモノに目移りをしている。見るのが初めてなのだろうか、商品を手に取って見つめているから楽しんでるみたいだ。イブは首飾りや腕輪、イヤリング、指輪などを順番に店主と話をしながら見て行っていた。


 こういうお店ってあまり来たことが無いからな……修学旅行で川沿いを歩いていた時に、川を背に小さな黒い板に装飾品を並べている出店は見たことがあるけど、それとはまた違う感じだ。

 僕も商品を手に取りながら見ていくとイブが決めたようで僕とケトスを呼んだ。 


「これにしよ! これにしよ!!」


 手に持っているのは三種類の首飾り。

 店主との「冒険者が色付きのプレートを首から下げるから、それと一緒に下げれるんじゃないか?」「なるほど、分かった!」って話が聞こえてきてたけど、それで決めたんだろう。

 イブの顔はニコニコして、自信をもって決めたんだと分かる。その手にあるのは銀色に縁どられた黒色の太陽、月、星の形を模したモノだった。


「どう! ボク的にはお気に入りだけど!」


「……うん、イブが気に入ってるならこれにしようか。何ウォル?」


「3つで9000ウォル!」


「う゛ぇっ……マジ……? おじさん、ぼったくりじゃないの? この値段」


「なーに言ってんだ。真っ当な商売をするのが俺の信条よ! ちゃんとした理由があんのさ! 嫌だったら帰んな!」


 腕を組み鼻を鳴らす店主は鉱人(ドワーフ)の一族のような見た目だ。

 そもそも精巧な技術が限られているから価値が違うか……。それに、素材は普通に丈夫そうだから……すぐ壊れたりする心配はなさそう。

 ちゃんとした理由ってなんだ? 買ってからのお楽しみって奴か?

 

「ははは、ついでに僕が払うから心配しないで」


 奥から二つのお面を片手に持って、遅れて出てきたケトス。

 手に持っている二つのお面は一瞬デザインが一緒のように思えたが、一つは少し厳つく思えるデザインで、もう一つはお淑やかに思えるデザインだった。

 二つとも白地に特殊な模様が描かれていて、左右対称(シンメトリー)。あまりごちゃごちゃとしていなくシンプル。目が惹かれるというか、どことなく綺麗に思えた。

 その二つのお面と首飾りの代金を払ってくれて、首飾りの袋をイブに渡し、自分の買ったお面の袋は刻印魔法の袋に収納していった。


「ケトスごめんね、払ってもらって」


「いいよ、そんなにお金使う方じゃないし。こういう時に使っておかないとね」


「さっき買ってた二つのお面ってどうするの? 被ったら目とか見えなさそうだけど」


「デザインが気に入っただけー、それに……この先にちょっと必要になると思ってさ」


「……? 贈り物?」


「ふふんー。そのうち分かるよ」

 

 ケトスが全額を払ってくれて店の外に出ると、イブが袋に入れられた首飾りを配り始めた。


「太陽は……ケトスさんっぽいからケトスさんね」


「りょーかいっ」


「星はクラディス!」


「僕が星ね」


「ボクは三日月!――うん、思ってた通りぴったりだ!」


 首飾りを首から下げて、お互いの顔を見ると自然と笑いが生まれた。

 友達とお揃いのモノを買うのはちょっと照れくさいけど、プレートと一緒に首から下げるから全然大丈夫だし、そこまで大きくないモノだから全然いい。


 ケトスもイブも気に入ってるみたいだし、僕も全然好きだから何も問題は無い。


 その後は今日の目的の夕食のカリーとスープの食材を探して、商店街を日が暮れ始める時間まで三人で行動していった。




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