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ある令嬢の呟き

最後までお付き合い、ありがとうございます。これで完了になります。


 やった!

 わたし、もしかしたらヒロインじゃない?

 

 だって、この名前知っている。

 攻略対象だって覚えている。

 第一王子ルーカス、第二王子のアベル、次期侯爵のギルバート。

 後は誰だったかな?あと数人いたはずなんだけどな。


 あれ?あまり覚えていないや。

 でも、大丈夫。逆ハーレムを狙う転生女も多いけど、あれは失敗することも多いからね。そんなことはしない。

 だってわたし、第二王子押しだもん。黒髪碧眼の第一王子でもいいんだけど、アベルの方が金髪碧眼で顔が好きなの。ギルバートもなかなかの美形だけど、年がね、かなり離れているのよね。やっぱり近い方がいい。

 本当に、本当にアベルはこれこそ理想の王子さまっていう感じなのよ。

 無茶苦茶、大好き。あの顔で見つめられたら蕩けちゃう。


 やばい、顔がにやけてきた。

 でも出会うのは、最終学年だった気が。

 それまでわたしってお父さまの男爵の仕事の都合で国外で過ごしているんだよね。

 はあ、あと3年か。


 長い。



******


 何あれ、何あれ、何あれ!


 ついつい我慢できずにお父さまにわがままを言ってお祭りの日に王都に来たの。そしたら、楽しそうにほほ笑み合うアベルとその婚約者に出会った。王都の人もアベルとその婚約者だってわかっていて、見て見ぬふりをしている。二人とも存在が派手すぎて、庶民の恰好が浮きまくっているから誰であるかなんて丸わかりよ。


 やだ、そんな風に頬にキスしないで!

 親し気に腰なんて抱かないで!

 愛おしそうに髪を指に絡ませないで!


 こんなの、おかしい。アベルは婚約者のことをすっごく嫌っていたはずなのに。あんな風に頬を寄せあったり、キスし合ったりしないはず。


 あ、もしかして。


 あの女も転生者なの?


******


 やっぱり、わたしはヒロインだわ。


 だって、あんなに仲の良かった婚約者を放っておいて、わたしにずっと愛を囁いてくれている。時々、学園内で見かける婚約者には笑顔も見せないし、何か言いたそうな彼女をとても冷たい目で見返すから、すっごく泣きそうな顔していた。


 あはは、ごめんなさいね~。

 でも、アベルの気持ちを引き付けておけなかったのだから、仕方ないよね?

 わたしの方が可愛いもの!


 もう、アベル大好き!

 ちょっと早いけど、そういう関係になりたいな?

 ダメ?

 純潔を貰うのは結婚してから?

 きゃ~!そうよね、ここは中世っぽいところだもんね。自分の価値を下げる必要ないよね。

 じゃあ、キスくらいは?


 え、ほっぺ?


 蕩けた顔を他の奴らに見せたくないからだなんて……もう素敵すぎる!


 でも、早くアベルのものになりたいから、今夜あたり、薬盛っちゃおうかな?

 確か、お父さまの扱っている商品の中にあったよね?

 気分が盛り上がっちゃう薬。二人で飲めば、もうやめられないんだって。

 その上、初めてでも全然痛くなくて、すっごく気持ちよくなるんだって、メイドが言っていた。どんどん癖になっちゃうって。



 あれ、どの薬かな?



******


 あの女、転生者だ。


 だって、ヒロインを苛めてこない。

 誰も何もしてこないのよ。障害なくアベルとイチャイチャしていられるから別にいいんだけど。

 でも、そこそこ嫌がらせとかがないと、断罪に持っていけないよね?

 うーん、どうしようかな?

 自作自演って結構バレるよね。だったらこのままでもいいかな?

 あ、ダメだ。断罪しないと婚約破棄できないし、わたしもアベルにとっていい思い出になっちゃう。


 それは嫌。


 やっぱり王子妃になってちやほやされたい!

 だって、乙女ゲームの醍醐味だもん。本命にドロドロに愛されて、目の保養になる美形達に囲まれて幸せに暮らすの。


 はあ、あと少し。


******


 お父さまに相談したら、わたしに嫌がらせしてくれる人を雇ってくれるって。

 わたしがケガをしたりするのは嫌だから、どんなものがいいか、なんて相談されちゃった。お父さま、真面目だもんね。あまり女の子のドロドロしたところ、知らないから。


 水をかけられたり、ノート破かれたり、ドレスにシミを作られたり……。

 最後は階段から突き落とすのがいいよね。

 ケガしないのか、って?

 一歩間違えば命が危なかった、というのがいいのよ。そうじゃないと断罪できないでしょう?

 王道が一番成功率が高いわよ。


 よろしくね?


******

 

 ようやく、卒業パーティー。

 あの女、アベルに責め立てられて、泣きそう。

 お父さまの雇った人はいい仕事をしたわね!

 こんなにもあっさり進むなんて。


 やった!アベルがとうとう婚約破棄を突き付けたわ。あの女、真っ青じゃない。今にも倒れそう。

 そうよね、何もしていないのに断罪されて、その上、婚約破棄だなんて。

 侯爵令嬢としても終わったわ~。社交界にも出られなくなるなんて、ちょっとカワイソウ。

 え、顔が笑っているって?

 しょうがないじゃない、この時を待ち望んでいたんだから。


 そうそう、こういう時にはこのセリフを言わないとね。


 悪役令嬢、ざまぁ。



******


 どういうこと、どういうこと、どういうこと?!

 なんで、わたしが罪人なの!

 わたしはアベルの恋人よ!婚約者よ!

 放しなさいよ!!


 は?

 お父さまの扱っている薬が違法?

 人格を破壊する可能性がある薬?

 国を内部崩壊させるために広めた?


 そんなの、知らない。わたしは関係ない。お父さまが悪いんじゃない。


 え?

 アベルにも使おうとした?

 そんなこと……。


 あ、もしかして。


 気持ちよくなっちゃう薬、あれがそうなの?


 違う、違う、違う!!!

 そんなつもりはなかったの。ただ、アベルと一緒に幸せになりたかっただけなのに……。



******



 あれ?


 また戻っている。

 今度は、男爵令嬢じゃなくて子爵令嬢なの?


 やった!ラッキー!


 記憶があるなら、今度こそ上手くやるわ!

 アベル、待っていてね、愛している!!


Fin.


 

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