Ep.2 「防衛開始」
是非最後まで見てくれると嬉しいです。乱文、誤字脱字注意
「アズカ5に着艦確認。物資搬入を開始します」
「了解。全艦に通達、これより補給と輸送物資の搬入に入る。乗員の皆はしばしの休息を満喫してくれ。以上だ」
帝国軍所属アジア級戦闘母艦。アジア。ブリッジに座る艦長のイジュン・パクはため息を漏らす。
「お疲れですね。艦長」
マヤ・イブキはパックコーヒーをイジュンへ差し出す。
喉の渇いていたイジュンは一礼し受け取り、半量を一気に喉へ通す。
「誰だって疲れるだろう。マヤ少佐。ただでさえ、この辺りは帝国と民主の境なのだ。こんな主力艦を瀬戸際外交のつけのような宙域に送られるなんて、命令でなければ拒否しているところだ。それも、物資の輸送だけで」
マヤは思考を巡らせる。本来主力艦をたった一隻で輸送任務に使うというのはあり得ない。基本は輸送艦に護衛として複数のフリゲート、もしくは駆逐艦をあてがうのが当たり前だ。運用コストはバカにならないし、何より、単艦でできることには限界がある。
「折り返し地点まで来てそれをいうんですか?...確かに奇妙です。この船は単艦でも一個戦隊規模の攻撃力を誇るんですよね?そんな大食漢を輸送だけに使う理由が思い当たりません。大規模な宙域戦闘ならともかく...」
「全くだ。だが、我々は軍事人だ。上からの命令には従わねばならん。とはいえ、刺激を与えることには変わらんだろう。なにも起きなければいいのだが...」
アズカはデリケートだ。帝国の支配地域にあるコロニーで、民主陣営は目と鼻の先にある。そして、アズカの資源埋蔵量は近辺の資源地帯と比べ頭一つ飛び抜けていた。
その資源に目をつけた帝国と対立する民主連合が領有を主張している。資源地帯を巡る問題は、4000年の歴史を経験していても、世の常であるわけだ。
現在はまだ、両陣営の直接戦闘は起きていない。しかし。いつ火を噴いてもおかしくないほど着火寸前なのも事実であった。
「マヤ少佐。一友人として聞きたい。この作戦をどう見る?」
「いくら少佐でも、私は現場上がりですよ?数合わせに出世した少佐に意見を求めるんですか?」
「なに、本当に、雑談だよ。それに今は誰も聞いていない。真面目に任務について話しているのは私たちぐらいのものだ。」
イジュンが周りを見渡す。パックコーヒーを飲む者。音楽を聴く者。今では珍しい紙の本を読む者。家族の画像を眺める者。睡眠を取る者。ブリッジにいる乗組員はそれぞれ自分の休憩をとっていた。
「...なんだか気が抜けてしまいますね」
「そうだろう?これがこの船の空気だ。他人に迷惑をかけなければ、なにをしてたって構わないさ。...それで、改めて聞こう。この作戦を輸送任務以外の何かがあると思うか?」
マヤは少し思考する。ただの物資補給ではないことぐらい、乗船している者なら察しがつく。
「...単艦でのアズカ防衛、もしくは囮か挑発。それか、本当にただの輸送任務。しかし、最後以外はどれも確証には欠けます」
「その心は?」
「アズカの防衛は、言わずもがな。無理です。いくら戦闘力があっても、単艦では守れる範囲に限界があります。コロニー一個なら100歩譲って理解できますが、アズカは14のコロニー群です。タイタンを使っても全域のカバーはまず無理です」
タイタンは軍用四肢駆動機とも呼ばれ、火星オーパーツによる実用品の一つである。戦車よりも速く手数があり、戦闘機の機動力、そしてヘリコプター並みの運動性を兼ね備えた汎用兵器である。愛称としてはロボやモビルと呼ばれることもある。
人体を模して作られ、直感的な操縦性と未知領域の多い宇宙でさまざまな自称に対応できる汎用性から、国から一傭兵まで、ほぼ全勢力で運用されている兵種である。
「となると、目立つ船体に知名性から、囮か挑発が候補にあがります。しかし、わざわざ単艦でやるのはリスクです。帝国は民主を脅威と認識してはいますが、自分から脅威を排除する口実を、わざわざコスパの悪い方法でするでしょうか?今の状況なら、フリゲートどころか民間船でも大義名分を作れそうですが」
「まぁ、最もだな。」
「やはり、本当にただの輸送任務では?どれも必要になる軍需品ですし」
「......」
イジュンは輸送品リストを確認する。主にタイタン用の備品ばかりだ。必要になる武器弾薬からタイタン本機まで、規模こそ大きいが、別にこれといって不思議なところはない。
「しかし、どうも引っかかる。」
「気持ちはわかりますが...」
マヤは呆れ、イジュンは繰り返しリストを確認していく。イジュンは不安要素を取り除かないと気が済まない性格なのだ。食い入ったようにリストを恥から恥まで見つめていく。
「...?」
「どうかしましたか?」
「ん?ああいや。どうも見落としがあったようだ。タイタンを一機少なく見ていたらしい。我ながら、仕事が雑だな」
「艦長にしては珍しいこともあるものですね。昨夜はお楽しみでも?」
「...君は女性だろう?もう少し品を持ってはどうだね?」
「今は{一友人}として話していますので。おほほ」
イジュンはため息をつき、眉間にシワを寄せる。
マヤは少し驚いたように、イジュンをイジる。
10年来の友情だ。常に戦場へ立ち続けた戦友達のコントを、ブリッジにいる乗組員は密かに楽しみにしていた。
そこに、補給要員から内線が入ってくる。
「ブリッジ。イジュン大佐だ。要件は?」
『こちら格納庫。整備班のキム伍長であります。搬入物資のリストなのですが...』
「...配られたリストにタイタン一機分の誤差?」
内線先はちょうど物資の搬入を行なっている格納庫かただった。曰く、タイタンの搬入を最優先で行っていたところ一機足りないとのこと。アズカの補給所兼物資置き場のリストとアジア内のリストにズレがあるようだった。
『それで、改めてよく確認してみたんですが、それがどうもおかしいのです。一機だけ型番が見たことないタイタンがあります。民主側の機体じゃ見られない型番形式です。もちろん、帝国のものとも違います。ただのエラーだとは思うのですが...そっちで何かわかりませんか?』
「...どういうことだ?」
イジュンはリストを改めて確認してみた。すると、イジュンは訝しむ。先ほどにはなかった情報が追記されていた。型番は0000。名称は全て伏せ字。見覚えのない、明らかについさっき表示された情報だ。
「艦長?」
「キム伍長。報告ありがとう。現場では混乱しているかもしれないが、他の物資の搬入を一時中断。検品を行なってくれ。どうも何か裏がありそうだ」
『了解いたしました。各班にそう伝えます。ご休憩中のところ、失礼しました。』
イジュンは内線をしまい、目を瞑り思考に集中する。急に表示されたエラーと思しき情報。足りない備品。アジアがこの任務にあてがれた訳。
「...何かある。確実に。マヤ少佐。悪いが休息取り消しだ。部隊に出撃の準備をさせろ。準備出来次第、コックピットで即応待機」
イジュンはこれが罠であると仮定。
「了解。部隊にそう伝えます」
「全艦に通達。3種警戒体制。即応待機。整備班は検品を取りやめ、本艦で待機を...」
イジュンが命令を飛ばす中、腰を折るようにサイレンが鳴り響く。サイレンが鳴る理由はただ一つ、敵襲だ。
「艦長!アズカ5内部より急報!すでにコロニー内に敵タイタンが侵入しています!」
「な!?どうして気が付かなかった!マヤ隊をコロニー内に発艦させろ!所属を確認次第、無力化だ!発砲厳禁!本艦は補給任務を直ちに中断!抜錨する!全艦第一種戦闘体制!対空警戒を厳となせ!」
捲し立てるように命令を発する。アジア内ではサイレント怒号が鳴り響き、乗組員が戦闘体制に移行する。
「アジアを使ったのはこのためか...!市街地で戦闘など、10年前と同じじゃないか!」
イジュンは怒りをあらわにし、肘掛けに拳を叩きつける。10年前、世界を4分し、混乱させた最悪のテロ。それと、全く状況が同じであった。
「マヤ、急がないと間に合わなくなるぞ...」
アジアは程なくし、アズカ5から離れていく。レーダーには民主軍の識別を発する軍艦が3隻写っていた。
「アズカを防衛せよ!帝国市民に指一本触れさせるな!」
防衛戦の開始である。
読んでいただいてありがとうございました。専門用語についてはおいおい説明を入れていく予定です。次回はユメノパートです。




