39. ガスパル — だれも くちに しなかった こと
いつも読んでくださってありがとうございます。
これまでのお話の文章を見直す作業がまだ終わっていません。仕事などでなかなか時間が取れず、ここまでの分をすべて終わらせることができませんでした。すみません。
文章の見直しは、時間ができたときに少しずつ進めていく予定です。ただ、内容を変えたり、削ったり、つけ加えたりすることはありません。あくまで文章の質を整えるためのものです。
そのため、今後の更新を止めることはせず、新しい話はこれまでどおり書いていきます。後から文章を見直したとしても、最初から読み直す必要はありませんので、そのまま新しい話から読んでいただければ大丈夫です。
これからも読んでいただけるとうれしいです。よろしくお願いします。
家に戻るころには、黒い車の列はかなり長くなっていた。シニョーラ・バルディーニの車列に、ボリス・イワノフの車も加わったからだ。
ステファノのゴッドファーザーであるボリス・イワノフは、お祝いの食事のためにバルディーニ家へ向かっていた。
帰りはロザリアのいる車に乗るため、ヴィトーさんに自分が何者なのかを思い出させるように、少し冷たく、そしてきつい態度を取っていた。とりあえず今は自分の場所に収まり、ロザリアと同じ車にいた。
マッテオはまたロザリアの隣に座っていた。残念ながら、ぼくはロッコと隣同士に座らなければならなかった。ときどきロッコがぼくに向ける、疑うような、苛立った目つきが、ぼくを落ち着かなくさせた。
マッテオが道と後ろの車たちに気を配っているあいだ、ロザリアは微笑みながら赤ん坊と遊んでいた。
ステファノが気にしていたのは、小さな手首だった。
式のあと、ボリス・イワノフが赤ん坊の腕に、小さな十字架のついた金のブレスレットをつけていた。もちろん、それは彼からのしるしのような贈り物だった。本当の贈り物は、ルカ・バルディーニに贈られることになっていた。
その場の雰囲気は、妙なほどいつもどおりだった。ときどきロッコがマッテオと話し、ロザリアはぼくにあれこれ指示を出していた。
けれど、誰もジョルダーノの息子のことには、一言も触れなかった。
まるで式にそんな人間が来なかったかのように。
まるで、あの場で誰もが骨の髄まで感じていた、あの緊張など最初から存在しなかったかのように。
ぼくには、それについて一つだけもっともらしい理由が思いついた。
誰も今日のお祝いを台無しにしたくなかったのだ。
家に帰るあいだ、ジョヴァンニが隣にいなかったおかげで、道のりは短く、そして静かに感じられた。
車たちが前の庭に停まると、子どもたちは車から飛び出して、家へ駆けていった。
ロザリアは車から降りると、客を待っているように後ろを振り返った。
ボリス・イワノフはシニョーラをそれほど待たせることなく、彼女のほうへ歩いていった。二人は話しながら家の中へ入っていった。
二人が何を話しているのか聞き逃さないように、ぼくは、もともとぼくのことをよく思っていないロッコの前へ、わざと彼を苛立たせるように出ていった。
サロンに入ると、何に驚けばいいのか分からなかった。
護衛の責任者であるバトゥがサロンの真ん中にいることにか。
それとも、ドン・バルディーニが彼に小さなノートを渡していることにか。
「おめでとう」
ボリス・イワノフは微笑みながらドンのほうへ歩いていき、彼を抱きしめた。
「ご苦労さま」
ドン・バルディーニは笑った。
「もう、うちの家族の一人だな」
ドンの冗談は、あながち間違いでもなかったので、ボリスを笑わせた。
バトゥは小さなノートをジャケットのポケットにねじ込むと、裏庭へ出ていった。
裏庭では、ぶどうのつるのあいだに、長く伸びたテーブルが用意され、白いクロスがかけられていた。テーブルの上は白い花で飾られていた。
テーブルの上は、細かなところまで白で統一されていた。けれど、きれいな食器に盛られた料理は色とりどりだった。
今日は大きなお祝いがあった。それだけでも、たくさんの料理を作るには十分な理由だった。
けれど、今日は特別な客がいる。それも、外国から来た客だ。
だから今日は、ボリスにイタリア料理のいちばん美味しいものを味わってもらわなければならなかった。
フェリシアはきれいな服を着て、おしゃれをしていたけれど、娘を抱き上げたまま、なかなか離そうとはしなかった。
客も皆もテーブルにつく前に、最後にもう一度、テーブルの様子を確かめていた。
テーブルに近づくたびに、赤ん坊が手を伸ばして、料理の乗った皿に触ろうとしていた。
テーブルの料理があまりにも美味しそうだったので、護衛たちの存在に気づいたのは、少しあとになってからだった。
高台の家の護衛たちの多くは家の中にいた。何人かはぶどう畑を歩きながら周囲を見張り、ほかの者たちは家の周りを警戒していた。
皆、お祝いの席に合わせて黒いスーツを着ていた。
周囲を注意深く見回していたが、銃を見せないように、ジャケットでしっかり隠そうとしているのは明らかだった。
ぼくたちは皆、テーブルについた。
ドン・バルディーニはもちろん上座に座り、特別な客であるボリスはその左に座った。
ロザリアは子どもたちをテーブルに集めることができず、あきらめて自分も席についた。シニョーラの席は、もちろんドンの隣だった。
小さなバルディーニ家の子どもたちは、テーブルの周りを走り回りながら、笑ったり遊んだりしていた。
けれど、しばらくすると、その声が聞こえなくなった。
小さな子どもは、お祝いのケーキの端を手でちょこちょことつまんでは、小さくちぎっていたのだ。
ドン・バルディーニは息子を抱きながらも、客のことを気にかけ、自ら皿に料理を取り分けていた。
ぼくは食事をしながらも、耳も意識も二人のあいだの会話にすべて向けていた。
けれど、残念ながら、今日はお祝いのこと以外、何も話されることはなかった。




