三夜城家 夢の巣 9話 ~残骸
▶神託・布屋
香の宮の奥の間、戸を開けて、縁側に席を用意する。
庭は、どんどん広くなって、
屋敷も何軒か建っていた。
大きな池もできている。
川から水を引いて、敷地内をめぐって、外の川へ流れ出る仕組みになっていて、
池の水は、いつでも”新鮮”なのだそうだ。
流れがあるのに、
不思議と池に動きはない。池の中の方で、水草が揺れている。
ゆらりゆらり。ぐにゃりぐにゃり。
”くすくす。しゃらしゃら。”
屋敷の中が、今日は、騒がしい。
宮入りした娘達が、前の広間で沸き立っている。
静かな奥の間にも聞こえてくる。
・・・今日は、仕立屋が来ている。
次の宴の着物を見立てているのだろう。
「この着物は、どなたのでしょう??」
「それは?」
”くすくす。しゃらしゃら。”
たいわいもない、娘達の戯れだ。
ゆらり。ゆらり。ぐにゃり。池は静かだ。
また、いつもの通りに宴が始まった。
ぐにゃり。ぐにゃり。
香の宮の奥で。朝を迎える。
まだ宴は、鳴り止まない。
朝餉の用意を、家人が整え。
さっさと下がった。
軽く身支度を整え膳の前へ座る。
娘はまだ眠っているのだろぉか?
しばらく、庭を眺めて待つ。
・・・
美しい布が、ふわふわと 水色の空に揺れている。
水面は、揺れていないのに、布はふわりふわりと風になびいている。
・・・。
池の中に東屋がぽつんとできている。
・・・もしかすると夢なのかもしれない。
どちらでもよい。
視線を手前の膳に移す。
娘はまだ床から出て来ない。
先に頂くのは、礼を欠くのかもしれないので。
ぼーと待つ。
娘の寝ている方をちらりと見る。
?娘は起き上がって散らばった布にくるまり座っている。
?何故か、娘は怯えている。
「どおした?」建前上聞いてみる。まだ、月が満ちるまでは、時がある。
ひと時だけども、共に過ごす娘だ。
もめ事は、嫌だ。 娘の隣に静かに寄り添う。
娘は布にくるまり
小さな声で、ぶつぶつ 独り言を繰り返す。
?
あぁ。
この娘も東屋が突然現れた事に驚いているのか?
それはそうだ。
少し前まで、なかった、池すらなかった。 無理もない。
背中をさすってやり、顔を覗き込む。
「三夜様は、本物なのですね。」 ”は?”
「神託です、」「三夜様の神託を伝えます。」唐突に、語り出す。
忘れてしまわぬようにと、慌てて話し出した。
”月は満ち、下弦の次の朝、
陽、天頂過ぎる頃、羽衣の元へ。
羽衣統べる者あり“
“水の中、羽衣の館へ、その娘はある”
”求める答えそこにあり“
すー。はー。すー。
「三夜様に、伝えないといけない気がしました。」
一気にしゃべって息が持たなかったのか、呼吸を整えている。
どくどく。
耳に心音が聞こえる。それとも耳が脈打っている。
急に生き生きと、世界が揺れ始める。
・・・。
「その話は、他言するな。」思わず手を握り、
娘を抱きしめた。
手の温度が上がる。
他言するな。と、言っても、
老人達は、聞いているのかもしれない。
いや、もうすでに神託があったのかもしれない。
”水の中、羽衣の館”っ!
まさに、突然現れた東屋だ。
手を握ったまま、庭に目をやる。
娘は驚いて怯えて?いたが、
すぐ身支度を整え朝餉の席に着いた。




