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にゃん鬼行  作者: てふ
三夜の夢
15/34

三夜城家 夢の余韻 14話

▶ゆき。

川の流れがきらきら音を立てる。

風が池へ流れる、さらさら布を撫ぜる。

赤子の小さな、小さな声、絹が赤子をあやす音。

本当の事なのだろうか?


絹が赤子を連れて戻ってから、世が動き出した。

絹は、少しやつれた。

絹が本当の事だと確かめたくて、用もないのに話をたくさんした。

音のない老人の話、庭の東屋に絹を見つけた日、初めて土を踏んだ話。

絹が入内した日の話、絹と奥の宮へ移った日の話。


絹は、いつも、笑って話を聞く。

うんうんと頷く。

妹の話も少し。・・・

絹は、頷く。

絹は、神託を聞いた事があるのだろうか?

宮入りの娘で神託を聞いた者が居た。

その神託で、絹と逢えた。


弓張の月が上がると、香の焚きしめられた宮へ入る。

月が満ちるまで、絹とは、逢えなくなる。

絹は、まだ、身体も気も戻らない様で、

赤子と奥の宮で待っている。


宴はつづく。

月が満ちて、奥の宮へ戻ると、すこし顔色がよくなった絹が赤子と待っていた。

次の宴には、絹を香の宮へ上げると老人に行ってみたが、まだ駄目なようだ。

離れていたくない。

絹は、

”心配しなくても、早く宴へあがれるよう養生します”と笑った。

なんとなし、

なんとなしに、絹に神託を聞いた事があるか訪ねてみた。

絹は、不思議そうに首をかしげる。

まだ、聞いた事はないようだ。

しかし、絹が入内してから、夢の中でよく自分と逢う。

はっきりとは知らないが、夢で自分と逢うと、神託が出ていると感じる。


絹に、神託は、自分とは別の誰かで、・・・

今、目の前の自分だけが本当だ。

・・・と、

言ってみたが、うまく伝わっているのかわからない。

・・・。

絹は、首を傾げた。

絹と、赤子を抱きしめる。

こわい。

涙が零れる。

離れていたくない。


もう月が半分まで明るい。宴がはじまる。

酒をたくさん飲む。息ができない。

月が満ちて、絹の顔を見た途端に涙が止まらなくなった。

ずっと体が震えて止まらない。

こわい。離れていたくない。


次の宴からは、絹と香の宮へ入った。赤子は絹の世話をする女中に預けている。

赤子が心配で、夜中何度か起きてしまう。

絹は、良く眠れるのか、隣で寝息をたてている。

絹の顔に落ちた髪をそっと上げてみる。

・・・涙があふれた。

絹が気づいて目を覚ました。

「赤子が気がかりで眠れない」と、笑って、絹の顔を撫ぜる。

絹は、

“赤子”ではなく”ゆき”と名付けたでしょと言った。

そうだ、”ゆき“と名付けた。

そうだ、「ゆき」だ。


絹と居る時だけが生きている時だ。

この時だけ生きている。

この世に居るとわかる。


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