歌うジズ
「ケージドーシャだっけ?クモでもカブト虫でもあのくらいのサイズくらいまで大丈夫ね。」
「軽自動車な。」
ヒルダのイントネーションはまだちょっと違うけどな。
「そのよくわかんない表現も慣れたよね~」
ユイは相変わらずかわいい。
「ああ、歌うジズだけの言葉が増えてしまったからうっかりほかでも使いそうだ。」
アレンが周囲を確認しながら剣を拭いている。
このくらいの雑談ができるほどには6階層も慣れてきた。
今倒したのは、軽自動車サイズの大グモだ。歌うジズが結成されてもう1年近く立つが、俺たちはまだ6階層だ。
この階層は大グモと大カブトムシの縄張り争いが続いていて、殺しあっているからか、とても強い個体が常にいる。やはり経験値システムなんだろう。正直深さも問題で、今の半日だけのダンジョン探索では時間が足りない。
だが、この一年でだいぶ強くなった。
名前:ソラ
種族:エルフ
年齢:14歳
HP:700/700
MP:1000/1000
攻撃力:250
防御力:200
魔法力:1000
素早さ:200
スキル:聴力強化、方向感覚強化、魔力操作
ギフト:ステータス、継承、転生
成長期というのもあるが、やはりダンジョンのおかげで相当強くなった。
しかし、このステータスの数字はやっぱり適当だ。現実と正比例していないし、たぶん体調なども含んだ中央値とかそういう感じだろう。同じ魔法使っても減りが違う。このステータスってギフトを持っているのも俺だけみたいだし、その辺は適当なんだろう。あくまで参考程度にしたい。
「でも困ったわね。やっぱり大グモのボスと大カブト虫のボスって正反対に陣取ってるよね。」
ヒルダが言うように、この6階層はただただ広く、ボスといえる巣の主が2匹いる。6階層の入り口、それぞれの巣で正三角形ができるような位置関係だ。とてもじゃないが日帰りが基本の俺たちは同じ日に2匹討伐はできない。
「やっぱり、まずはどちらかを倒そうよ。」
ユイはこう言うが、俺たちが懸念しているのは、片方倒したらもう片方の縄張りが広がって勢力が増すことだ。
「リスクはあるが現状ではそれしかないか…」
「そうだな、アレン。二人ずつ分かれてそれぞれ討伐ができればいいけど、そこまで甘い相手じゃないしな。」
「4人一緒じゃなきゃだめよ!私たち連携もすっごくよくなってるし、二人だとあんまり合体技使えないじゃない。」
「ユイ、本当に合体技好きよね。」
あきれ顔でヒルダがつぶやいているが、俺はヒルダも大概合体技好きだと思っている。
「良いじゃない、合体技。私好きよ。」
ユイは本当に楽しそうだ。この1年ユイの笑顔で頑張れたといっても過言ではない。
「で、どっちを狙う?」
「断然、クモね。気持ち悪いからさっさとやっつけたい。」
「ええ~、クモもかわいいじゃない。」
「駄目よ!ユイ!この前も子グモ持ち帰ろうとしたでしょ?魔物はペットになんかできないのよ!」
そう、この1年ユイのことをたくさん知ることができた。そして知らなきゃよかったユイのことも知ってしまった。
ユイは生き物好きだ。犬やら猫やらが好きなのはわかるが、6階層のクモやカブト虫みたいな気持ち悪い系も全然OKらしい。実際、この間は子グモを持ち帰ろうとしてヒルダにコテンパンに怒られていた。
さすがにあの時は俺でも擁護はできなかったな。魔物として倒すことも抵抗なさそうなので全く基準がわからないが、本人にはなにか基準があるんだろう。
「人族には鳥や飛竜を卵から育てて使役するものもいるらしいが、さすがに子グモはだめだ。」
「そっか!卵ならいいのね!」
「駄目よ!クモなんて卵もダメ!!アレンも変なことユイに言わないで!」
「じゃあ、クモ退治で決まりだな。子グモも卵も持って帰っちゃダメ。ってことで。」
怒るヒルダと、うなだれるアレンとユイを見まわしたが、反対意見は出なかった。
さあ、修業の成果を見せる時だ。




