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アレンとダンジョン

「ソラ!」

「おう!」

「竜巻!」「業火!」

火をまとった竜巻が無数のコウモリを舞い上げ焼き尽くす。


「やったな。」

「…ああ。」

少し不満げに返事をする。

「なんだ、不満そうだな。コウモリの巣のせいで先に進めなかったんだからよかっただろう?」

「もちろん結果は最高だ。しかし過程が最悪だ。なんでお前と合体技なんか…」

「お前、結構ノリノリで合わせてたじゃないか。それに、ちまちまと昆虫やら火トカゲと戦っててもしょうがないだろ?」

「ああ、癪だが俺だけじゃこのコウモリの巣は超えられなかった。」

ダンジョンの地下三階の奥には大きな空洞があって、そこに数えきれないコウモリが巣を作っている。長距離で広範囲の攻撃手段がない俺には安全に進むことはできなかった。

このアレンとダンジョンにもぐり始めて3日、お互いの技や能力はわかってきて、もはや火トカゲ師匠も俺たちの敵ではなく、さらに奥に進むべく、コウモリの巣を退治しようという話になったことが、悪夢の合体技の始まりだ。

結果はうまくいった。最高だ。火では威力は十分だが範囲も距離も足りない。風の魔法では範囲は十分だが威力が足りない。どこかの忍者漫画で風は火を助けて燃え上がらせるものだというし、いっちょ同時にやってみるかと言ってしまったのがこの悲劇を招いてしまった。試しにやってみたらかなり手ごたえがあった。つい楽しくてその日から何日も合わせる練習をしてしまった。おかげで正真正銘の必殺技と言っていいレベルだ。しかし俺の真の必殺技一号がよりによってアレンとの合体技だなんて…

「おい、何ぶつぶつ言ってるんだ。行くぞソラ!」

「ああ、行くってどこに?」

「ちょっと狭いが、この先から奥に行けそうだ。」

アレンの指さすほうを見ると、コウモリの巣のあった大広間の奥に狭くて下に降りる穴が開いていた。

「おお!次の階層か?」

「階層?まあ、もっと深くなるな。しかしソラ、お前時々変な表現するよな。」

「草原と森だと出てくる魔物が違うだろ?ダンジョンもそうだと思ったほうがいい。」

「警戒しろってことか、それはそうだな。今日は少し覗くだけにしておくか」

「そうだな、さっさと行こう、アレン。なによりここは臭い。」

「ああ、このコウモリの巣、やたらと臭いし、今は焼けててさらに臭い。」

臭い臭い言いながら慎重に穴を降りていく。

チョロチョロと水が流れる音が聞こえる。

臭さがなくなり、少し広いところに出た。今までと違い、壁がほんのり青白く光って明るい。

あと地下水が流れる小さな川が1本あり、それに沿って奥に進めそうだ。

「ヒカリゴケってやつか」

「知っているのか、ソラ」

「おい、俺の額に大往生とは書いてないぞ?」

「何を言ってる?壁が光っている原因を知っているのかと聞いたんだ。」

「これが異世界のさみしさか。ああ、知っている。壁に生えている苔が光ったりするらしい」

「そうか。ソラ、それとあまりぶつぶつ言うのはよくないぞ。」

うるさい奴だ。何か言い返そうとしたとき、川のほうから歩く音が複数聞こえてきた。

「まて、アレン、敵だ。」

「ああ、歩く音だな。人型の魔物か」

広間にあるくぼみに隠れ、音のする方に注意を向ける。

ガウガウ!ガウ!

犬が二足歩行したような魔物が3匹、俺たちのほうへ一直線にすごい速さで向かってくる!

「やばい見つかってる!やるぞ、ソラ!」

「なんでわかったんだ!?つか速えぇ!!」

犬の魔物は手にした石斧を俺に向かって振り下ろす!

とっさに魔法を込めて盾で受ける!

「カウンターファイア!」

ガキンッ!ゴオゥ!

「ギャイン!」

炎が犬の魔物(コボルトと命名)を包み燃えあがり、あたりを転げまわる。

「毛が良く燃えるな」

転がるコボルトに慎重に近づき、鉈で止めをさす。

振り返ると、2匹のコボルトが血を流して倒れていた。

「アレン無事か!?」

「いや、足首をかじられた。そっちはどうだ?」

「こっちは無傷だ。カウンターファイアがえらく効いた。」

「全身毛むくじゃらだからな。こいつら素早いし連携してくるぞ」

「どういうことだ?」

「俺のほうに来た二匹は一匹が石斧でかかってきて、もう一匹は横に回り込んで斧捨てて足にかみついてきた。牙も鋭い。常時展開している風の鎧では防ぎきれなかった。」

「でも瞬殺してるじゃねえかよ」

「いや、横に回った奴の攻撃は風の鎧で防げると思って、石斧持った奴に集中したのが良かっただけだ。見込みが甘かった。」

「それによ、結構遠くから確信もって俺らのほうに来たよな。こいつら。」

「ああ、匂いだろうな。犬だし。」

アレンの言う通りにおいだろうな。

「ところでアレン、お前常に風の鎧まとってるのか?」

「できるだけな。風の鎧を常に纏うことで魔力操作と身体能力の訓練になる。」

「身体能力も?」

「ああ、風の鎧は自分の周りの空気を固くする魔法だ。だから動きにくい。特に関節部分はよく動くからどうしても薄くなるがな。」

「ひょっとして俺と勝負した時も動きにくかったのか?」

「修行だ。」

なんてこった。アレンの動きに制限ある状態と俺のブースト状態が同じ素早さなのかよ…

「俺も常にブーストすっかな」

「そうだな。俺も常に風の身体強化はしている」

「なにお前、身体強化と風の鎧の二つも常時やってんの?」

「できるだけな。ずっとは難しい。魔力も持たないしな。」

こいつ改めて思うけどすげぇ。どんだけ強くなろうとしてんだ。

「ソラ、今のお前なら風の身体強化もできるんじゃないのか?少しは風の魔法使えるんだろ?」

「お前らほどじゃないけどな。相手の得意分野で勝負しても意味ないだろ?」

「何の勝負かわからないが、使えるなら使った方がいいだろうに。それよりも今日はもう戻ろう。」

「そうだな。さすがにコボルト対策しないと難しそうだ。」

「コボルト?」

「さっきの犬人間のことだ。名付けた。」

「知ってるのかと思った。」

「だから俺は額に大往生とは書いてないし、泥鰌髭も生えてない。」

「さっきから何言ってるんだ。」

「まあいいよ。戻ろう。」

「ああ。…痛っ!」

アレンが噛まれた足を抱えてうずくまる。

「そっか、お前足やられてたな。これ使えよ。」

おれはポーチから傷薬を取り出して、アレンに渡した。

「悪いな。」

「そういう時はありがとうだ。」

「ああ、ありがとう。助かった。」

こいつのこういうところ素直なんだよな。

「俺が後ろで警戒するから、お前先いけ」

「悪い、いや、ありがとう。」



ダンジョンから出ると外はもう夕方になっていた。

「じゃあ、ソラまた明日。」

「良いのか?足は。」

「ああ、傷薬のおかげでだいぶ良い。明日には治るだろう。今夜はコボルト対策を考える」

「そうか。じゃあまた明日。」

そういって俺たちは別れて帰った。

コボルト対策と、ブーストの常時展開か。俺もちょっと考えよう。


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