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巡る季節は、美しく。 秋の風に
秋。この季節は嫌いだ。
美しいから。何もかもが、あまりに美しく見えてしまうから、嫌いだ。
春のように、優しい美しさに包まれ、幸せな気持ちになれる方がわたしは良い。
だから秋のこの美しさは、この淋しくて切なくて、愛の終わりを示すかのような……この季節は嫌いだ。
山は鮮やかに美しく染まり、見るものを虜にする。
月は淡く美しく昇り、愛も戸惑いも勇気も、何もかもを持ち去ってしまうようだった。
もう、やめて。
吹き抜ける冷たい風に、わたしは呟いてしまっていた。
冬の北風にも寒さなんて感じないはずなのに、どうしてだろうか。
何もないまっすぐな風に、吹き抜けていく爽やかな音に、寒さを感じてしまっているわたしがいた。
この美しさに惚れながらも、何も手に入らない何にも手を伸ばせない。絶えず鳴り響いていたセミの煩さはなくて、代わりに響いている虫の音までが美しい。
美の虜になりながらも、これから手放さなければならないという、なんとも言えない虚無感が、わたしを淋しさへと落とした。
人々を淋しさで満たした。
温もりをも遠ざけてしまうほど、淋しく冷たく。