推しが自殺した
推しが自殺した。
推しはアイドルだった、だったって言い方がもう嫌だ。
毎日早起きしてSNS確認。
配信はグループのものも個人のものも、勿論リアタイ。
曲はまずCDを買えるだけ買う。
それからサブスクやYouTubeの再生回数を回すことも忘れない。
寝ている間も小さな音で聴いて再生回数を伸ばしつつ、歌声を聞きながら眠れる幸せを、堪能することができる。
ライブは仕事があるから全通はできなかったけど。
地元のライブは必ず当選できるように願った。
まだそんなに認知度がないグループだけど、他のファンの子たちと交流したりして必死で追いかけていた。
旺太郎が自殺したと最初のニュースで見たのは、会社のお昼休み。
いつものようにSNSの更新がないかとチェックしていた時だった。
思わず立ち上がり、もう一度スマホを見た私は。
「嘘だっ」と言ったままその場に突っ伏した。
それからの私の生活は変わった。
もう更新されないとわかっているのに、旺太郎のSNSを何回も見に行ったり。
最後の投稿を何度も見直す。
私なんかに何かできたとは思えないが、それでもあの時止められたんじゃないかとか。
だんだん楽しそうにしていた記憶が全部怖くなってくる。
『人は急に死ぬ』って感覚が頭から離れない。
ライブでフロートに乗っていた時の、きらきらした笑顔が忘れられない。
旺太郎は死んでしまったのに、世の中は普通に回っている。
最初の数週間はニュースで流れていたけれど、それを過ぎたら何もなかったかのように、日常に戻って行ってしまった。
私だけが世間から取り残されたようになる。
旺太郎会いたいよ……。
そんなことばかり考えていたある日、KSLから招待状が届いた。
本当に嬉しかった、他の人に伝えたら二度と招待状が届かなくなるのと、この招待状が無効になると書いていなかったら、旺太郎を同じ熱量で応援していたみんなに、少し誇らしい気持ちでKSLから招待状が届いたよ!と触れ回っていたところだ。
当日は早めに到着するように、調整した。
どのアトラクションに乗ろうか迷っていたら、ティーカップ列車を見つけた。
これにしよう!フロートに乗っていた旺太郎のようにきらきらできる気がする。
ティーカップ列車は子供連れの家族も多かった、子供たちが怖がらないようにだろうか。
案外スムーズに乗れた。
最初はゆっくりと園内を走る。
ドームがあるので外は見えないが、見えている気がしてくる。
ステージから見える観客が。
私は大きく手を振った。
ティーカップ列車は途中から速度が上がり始めた、それと同時にレールの幅が徐々に狭くなっていく。
最後は車輪同士が擦れながら火花を散らし、急カーブで横転する。
私の意識はそこで暗転した。
最期の瞬間は旺太郎のように輝けていただろうか。




