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シル・ストア~来訪者(旧サブタイトル:風の通り道)  作者:
最終章 来訪者

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3-12.怒れるものに安らぎを

早朝、ジーンと佳澄は手合わせをしている。

昨日、アモンが返してきたジーンの体、そちらに意識を向けるとあっさり戻ることが出来た。

2年振りの自分の体・・・違和感を確かめ、力を流して馴染ませていく。

この状態でマリオネットを動かせることを確認。

その後、軽い運動、食事、風呂に入って寝る。

2年間まともに動いていない体は筋力が衰えている。

それで寝ている間に気を循環させて元の状態に近づける。


「勝負あり」

佳澄の突きがジーンに決まった。

「大丈夫?」

「ああ、問題ない、大分勘が戻ってきた。」

吹き飛ばされた状態から起き上がってジーンが言う。

食事に排泄、睡眠、人として生き物として当たり前のことが再び出来ることに感謝する。

それからしばらくアモンも巻き込んで体の慣らしを続けた。


軽く汗を流して3人で朝ご飯を食べているところでシル・ヤーレの新入りが呼びに来た。

家出して山をさ迷っているところを拾われた二人組である。

現在は時々ヤーレの依頼をこなしながらシル・ヤーレで過ごしている。

ゼン曰く中々筋が良いらしい。

シル・ストアに参入するのはもう少しかかりそうだ。

「連れの人が意識が戻ったのでゼンさんが呼んでます。」

「分かった今行く。」


ジルフォードが休んでいた部屋に3人で移動する。

「起きたか?」

アモンの言葉にびっくりしたように顔を見るジルフォード

「仮面無しで会うのは最初の時以来か。」

「ずっとあの仮面を付けていたのか・・・」

「まあね。あの後またお腹も空かなくなったし、汗もかかないから仮面を付けていても不自由は無かったよ。」

「逆に何で今は着けてないんだ?」

「こいつを助ける時に壊れた。」

「・・・」

「いい機会だよ。これでやっと決着をつけにいける。」


ジルフォードから話を聞いた二日後、ジーン、佳澄、アモン、人形師はクィーグ村に向かった。

ジルフォードも来たがったが体力が回復しないので留守番ではなく正面から法王国に向かうことにする。

護衛としてリオンとマリス。

ルーやモロゾフも来たがったが場所は地下墓地。1頭と1羽には不利な戦場なので留守番兼人形師本人の護衛。

人形師はカミラの依頼で同行。

まだ人形の整備が終わっていないのにとぶつくさ言いながらシル・ヤーレにやってきた。

「今回のお前の役目は立ち合いだ。前に出るなよ。」

「分かってますよ。人外相手にどうこう出来るとは思ってません。」


そんなこんなでクィーグ村から聖都の地下墓地への入り口にやってきた。

今までアモンが使っていない入り口だ。

「誘われているな。」

「誘われていますね。」

4人揃って首を振る。

人形師は掌に乗るサイズの小人で佳澄の肩に乗っている。

「ここまであからさまなのも凄いですね。余程自信があるんでしょうか?」

「どうだが?向こうもこちらに会いたいらしい。」

「ジルフォードも壁画の間まで全く見張りに会わなかったって言っていたな。」

「地下への入り口を開けて、壁画の間から出ようとしたところで影の攻撃を受けたという話でしたね。」

「ここ、多分、壁画の間の地下以外気配がないね。」

地下墓地への入り口は入ったところ以外に10か所程ある。

管理人のいる入り口もあった筈だがその全てに人の生き物の気配がない。

「こういうところって鼠とか蜘蛛とか居そうなのに。」

暫く見回してアモンが言った。

「そういやパブロやハナも同じことを言っていたな。」

「ジルフォードも地下墓地の聖騎士他の巡回は殆どないって言っていたな。」

「例外は誰かが参拝する時でそういう時だけ詰め所に籠るって。」

久しく使わていない通路の様でほこりが結構溜まっている。

そこに足跡はない。

そして掃除をされているとは思えないのに蜘蛛の巣はない。

佳澄は人形師をジーンに渡すと地面に手を着いた。

少しして体を起こす。

「さっき感じた場所以外何かの術と言うか計器というかそういうものは感じない。」

「こっちもだ。多分壁画の間なんだろけど複数の人と良く分からん複数の気配、それに何か陣が張られているな。」

「こっちがバレていると思う?」

「わからん。わからんから試してみよう。」

「試す?」

「ここともう2か所程、入って少し進んで戻るを繰り返す。」

「で、壁画の間に居る存在の気配に変化があるか探るって訳ね。」

「誘っていて、なおかつバレているなら、こっちが出ていけば何か動きがあるだろ。」


「早速お出ましですか。」

最初の通路で入って出ようとしたところで影がこちらにやってきた。

纏を囮に通路の影に隠れる。

纏を追って目の前を通り過ぎようとしたところで用意していた捕縛用の網を投げかけた。

アナ・ヤーレとアナ・セドンに頼んで光・破邪・遮断の属性を付けた特製品だ。

「ぐっ」

網に捕らわれた影がうごめく。

出てきたのは少女とも老婆とも思える何かだった。

「サーシャ?なのか?」

疑問形のアモン。

「これで一人確保。」

「効果があると分かっただけ良しと思おう。」

こそこそジーンと人形師が会話する。

「次が来たよ。それも2体。」

佳澄の声に人形師が人形を出して影の入った網を引き摺っていく。

先程と同じように気配を消して待機。


「アモン、この3人エルダの民だよな?」

「そうだけど・・・」

エルダやディア、ナタリの民は、生まれついての狩人であり、戦士。

まともにやりあえば強敵なのだろうが・・・あっさり網に捕まった3体の影。

「学習機能が無いのか?」

「狩人ならもう少し用心するだろ?」

「闇に食われたのかな?」

佳澄の言葉に顔を見合わせる。

「有り得るな。」

「並の人間ならあっさり死ぬんだろうが、こいつらは魔王。」

「少しずつ闇に食われているのか。」

もはや人としての気配のない3体の影に結界を施し、人形に引き摺らせて奥に向かう。


少年はずっと待っていた。

自分達の望みを叶えるものが現れることを。

それは来訪者、二柱の神々の申し子。

待ち望んだものを呼び出す術を邪魔された少年は怒って相手に呪いを掛けた。

その呪いは夢の神、導きの神の祝福をもつものによって反転する。

届かぬ祈りは初めて二柱の神々に届いた。

始まりの神、ショウとエンマの申し子が定まり夢の神によって結びつけられる。

後は待つだけだ。

二人が自分の前に姿を現すその時を。


最奥の壁画の間。

生気のない目をした法王に、枢機卿達、そして干からびたミイラの様な少年。

対するはジーン、佳澄、アモン

人形師は影を連れた人形は中に入れ、壁画の間の外で待機している。

彼等の中心に一つの棺が置かれている。

「ようこそ、来訪者。」

少年の言葉にジーンが答える。

「お出迎え有難う。トリム、いやセルロー、何でこんなことをしたのか教えて貰えるかな。」

「その名で呼ぶな僕はトリムだ!」

少年が激高して叫ぶ。

荒い呼吸を整え、トリムが聞いた。

「何故知っている。どこまで分かっている。」

「バーンの神殿に記録が残っていたよ。トリスタンが何かの時の為に残しておいたようだ。」

リ・バーンが意図して調べないと出てこない隠された記憶。

「嘘だ。ワイズマンシステムが出来てまた400年程、そこに残っている訳がない。」

「ワイズマンシステムじゃない、バーンの記憶だよ、残っていたのは。」

「バーンはずっとトリスタンのことを気に掛けていた。」

「嘘だ。なら何故父は帰れなかった。」

「アナ・ハルナの神は万能じゃない。偶然やってきたものの故郷など分かる訳がない。」

「まして帰りたいと本気で思っていなかったものの故郷なんてわざわざ探したりしない。」

「嘘だ嘘だ嘘だ。」

トリムはいやいやをするように首を横に振る。

周囲から闇が湧いて出た。


「癇癪を起こせば何とかしてもらえると思っているのか、なんてとんだお子様だな。」

幽鬼の様な法王や枢機卿の攻撃を躱し、トリムに呪符の様なものを張り付けた。

トリムを包む闇が呪符に吸い込まれ、操られた法王達が糸の切れた人形の様に倒れる。

「どうして・・・どうして・・・」

壊れたレコードの様に言葉を繰り返すトリム。

「こいつもある意味時を止めたままだったんだな。」


「さて話して貰おうか。何でこんなことをしたのか。」

トリムが少し落ち着いたのを見計らって声を掛ける。

「最初は知りたかった。父のこと、母のこと、自分のこと、実の父親のこと。」

ぽつぽつと話すトリム。

「父は何も話さなかった。色んな事を教えてくれたけど、レナ・カサルのことだけは何も言わなかった。」

「だから一人で調べた。行ってみた。」

「向こうで自分の親戚らしき人にあった。僕のことは子供か何かと思ったらしい。」

「あることないこと色々教えてくれたよ。母が何故、放浪することになったのか。僕が何故殺されそうになったのか。」

「父が何故、レナ・カサルのことを教えようとしなかったのか。」


段々様子がおかしくなってアモンが言った。

「おい、ちょっと不味くないか?」

トリムの声が熱を帯び、呪符が吸い込む闇の量がどんどん増えていく。

もう一つの呪符を張り付けようとしたタイミングで呪符の限界を超えた。

「許さない、あいつら、許さない、あんなのが生きて良い筈がない。」

闇が弾けて法王達を飲み込んだ。

同じように拘束する人形ごと影を飲み込む。

「許さない、私達が何をしたっていうの。」

「許さない、なんであの子たちがきえなきゃいけないの。」

「許さない、あいつさえいなければ」

「許さない。許さない。許さない。許さない。」


「予測が甘かったか・・・」

「200万人分のリアナ、そして蟲毒の闇を吸い込んだな。」

声の中にレナ・マーデで聞いた声が混じる。

『何呑気に会話しているんですか!』

危険を感じて壁画の間の扉を閉めて地下墓地から逃げ出した人形師の声が頭に響く。

ジーン、佳澄、アモンは背中合わせで呪符を使い結界を張っていた。

「一旦全部吐き出させないと次に進めないと思ったんだが・・・」

『それで?何とかなりそうなんでか?』

「ちょっと待て今考えている。」

『急いでくださいよ。外にも影響出始めてますから。』


「色んなもんが混じっているな。」

奪われた恨みに、富める者欲しいものも得たものへの妬みが、失われた悲しみに後悔

様々な感情が剥き出しになって暴れている。

「いた。」

佳澄の声に泣いている少年の姿が見えた。

安らぎを得るのエピローグ

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