断章11.ジルフォード
今回の断章は長いです・・・
ジルフォードは監視を振り切って地下墓地、カタコンペの中を歩く。
38年前、自分が連れ込まれた場所を探した。
赤い服を着た偉そうな人に連れられて暗い地下を歩いた。
やがて見慣れぬ壁画の前で偉そうな人が何かに手を触れると床がずれて道が現れる。
暗い階段を降りると狭い部屋に辿り着いた。
「ここでお祈りをすれば神様が迎えに来るよ」
自分の他に5人の子供が入れると部屋の扉が閉じられる。
6人の子供達は暗い明かりの無い部屋に閉じ込めらた。
他の子供達は言われた通り、お祈りを始めたがジルフォードはそうする気になれず、扉付近を調べていた。
普通の人間なら真っ暗で何も見えないが彼には薄っすらと周りが見える。
「なんとかしてここを出てやる。」
そう心に誓い、扉を調べるのに夢中で背後の異変に気付くのが遅れた。
気付いてもどうにも出来なかっただろう。
祈りに惹かれるように現れた煙の様な闇は子供達にまとわりついた。
闇に絡まれた子供達は声も立てずに生気を失い倒れていく。
「おい。そこに誰かいるのか?」
叩いた扉の向こうから声が聞こえた。
「誰、助けて。」
「分かった、今助けるから扉から離れていろ。」
その言葉に扉を離れ背後を見る。
「ひっつ」
そこには自分を襲い掛かろうとする闇があった。
その後のことはよく覚えていない。
扉を吹き飛ばして入ってきた二人は闇を追い払い外に連れ出してくれた。
そこで影の様な人と争いになり、騒ぎを聞きつけた聖騎士に助けられたらしい。
目が覚めるといつもの部屋に居た。一緒にいた子供達は誰もいない・・・
地下での出来事は何も覚えてないでで押し通す。
背後に居た闇、あれが迎えに来た神だなんて認めない。
聖典に記された言葉が間違いだとは思わない。
それを捻じ曲げる偉い人達に無性に腹が立った。
孤児となった自分を拾い上げてくれた教会、私腹を肥やした腐った教会。
どっちも同じ教会・・・それなら教会を変えてやる。
腐った奴らを追い出してあるべき姿に戻す。
それが自分の進む道だ。
その後、修行を重ねて巡回牧師になった。
外に出て街をめぐるうち、祭りの舞台に現れた道化師に会った。
懐かしい気になる気配を感じて探っていたら相手にばれた。
追い詰められ殺させると思ったら意外そうな声が降ってくる。
「お前、ジルか?」
地下から逃れる時に名前を聞かれて名乗った名前、もうその名前で呼ぶ相手はいない。
ギルドで覚えた高速言語で近況を語り合う。
話せることは少ないけれどお互い目的の為に協力することになった。
道化師は教会での立ち回りについて色々教えてくれる。
それらを使いこなして仲間を増やしていく。
そうやって司祭となった時、一人の何でも屋に会った。
見た目は10代後半の少年だが既に10年の経歴を持ち最速でBランクに上がっている。
彼については道化師が楽しいそうに話してくれた。
彼の仕掛けを見破ってやり返す強者だそうだ。
再会してから一番楽しそうにしている。
道化師は言った。
「今お前が抱えている問題の解決を手伝ってもらえ。」
口ごもると続けて言う。
「何、こちらの手の内を明かす必要はない。協力することで相手にも利があると思わせろ。」
中々ひどいことを言うが、確かに協力者は欲しい。
今の手札では下っ端の尻尾切で終わる。
その結果は大きく、想定より数段上の相手を引っ張り出して排除することに成功した。
当時のマーデ正教会の枢機卿一人のその配下、癒着していたマーデの上級市民の一族を失脚させる。
自分一人では手の届かなった成果に歓喜した。
それから何度か依頼をする内に、道化師から会って話をする場を作って欲しいと頼まれた。
ついでに、彼らを囮に法王国内の断罪派を追い出そうしたら予想外の邪魔が入る。
38年前に出会った影だ。
奴ら居なくなった訳じゃないのか。
やっと出会えた敵を追い詰めるべく行動を始めた。
アナ・エルダの復活後、トリスタン教最大の信者数を誇るマーデ正教会の様子がおかしい。
大災害について幾つか分かった情報を元にマーデに乗り込んだ。
調べれば調べるほど大災害を引き起こしたのがレア・マーデであり当時の正教会の人間だったという証拠が出てくる。
何故、今まで分からなかったのか?そして何故、今こうまでも情報が出てくるのか?
誰かの意思を感じつつも調査で分かった内容をギルドや神聖帝国に流す。
それと並行して廃都フィリス近郊で開墾中の村に真っ当な信者達を逃がした。
時を同じくして腐った連中が次々とマーデにやってくる。
正体不明の何かはマーデで何かする積りだ。
そうこうする内に法王国への帰還指令が届いた。
法王国に戻って暫くした頃、アナ・ヤーレが復活した。
それを引き金としてマーデの崩壊。
ギルドから様々な情報と問い合わせが届く。
法王庁は沈黙したまま、各地の司祭や牧師を呼び戻し始めた。
そんなある日、自分に対する監視の目が緩む。
罠だ・・・そう理性は警告している。
虎穴に入らずんば虎子を得ず。
罠と承知で地下墓地に入った。
一応直前に道化師に連絡は入れてます。




