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モノクロームの花  作者: 水無月波瑠
色のない少女と記憶がない少年
10/12

 教室に入ってきたその女の子は下を向いていて顔こそはちゃんと見れなかったがなんというか凛々しいたたずまいだった。黒板の前にたつと顔をあげ、

 「大日向朱莉です。よろしくお願いします」と言った。

 クラス中が拍手であふれた。特に男子の拍手が。それもそのはず、大日向は成瀬がそしてみんなが想像した以上に美人だったからだ。

 「あ、大日向さん。黒板に名前書いてくれるかしら」先生がそう促すと、大日向はチョークを一本取ってコツコツと書き始めた。


 大日向朱莉(おおひなたあかり)


 「じゃあ席はどうしようかな。桜木さん少し横にずれてくれる?そこに3人で並んで授業受けようか。もちろん大日向さんが真ん中でね」

 後ろの席だからスペースを有効活用しようと思ったのだろう。

 「はーい」そう言って桜木は机を横にずらした。大日向は指示された場所に歩いていった。

 「よろしくね。桜木さん?」

 「あ!佐奈でいいよ!よろしくね」

 大日向は笑顔で会釈すると席に着いて横を見てきた。そうもともと桜木の横の席だったのは成瀬だったのだ。

 「成瀬だ。よろしく」

 「よろしくね。成瀬くん」彼女はまた微笑んで会釈した。

 前にもこの笑顔を見たことがあったような。ううん勘違いか。




 昼休み

 大勢の女子が大日向の席を囲っていた。男子は大日向さんがビビってしまうからと言う理由で女子に除外されてしまった。俺は席がここってことで除外はされなかったけど、男子からの視線が怖い。

 女子はいろいろなことについて聞いていた。どこから来た、とか何故こんな時期に来たのかとか、かわいいけど彼氏はいたのかとか・・・・・・。転校生の宿命なのか大日向は一つ一つにちゃんと答えていた。詳しくはここに来る前は東京から来て、親の仕事の都合で来て、それと彼氏はいたことがないと。


 昼休みの終わりのチャイムがなり次の授業が始まる数分前、大日向は迷った表情でキョロキョロしていた。

 「どうしたんだ。具合でも悪いのか。保健室なら_________」

 「違います。ただ次の授業の用意が・・・・・・」

 「ああそれなら桜木に見してもら________」

 「すみません。それも違うんです。その・・・次の授業がわからなくて」

 二度も否定されるとなにかくるものがある。ん?次の授業がわからない?

 「ああそれなら前の黒板に書いてあるよ。地理だって。今日だけ授業変更があったんだ」

 「あ、ありがとうございます」

 「というか、大日向さん今日地理持ってきてないんじゃ」

 大日向はがーんとした表情になった。そしてこっちに助けを求める顔で見てくる。すると後ろから

 「ん?どうかしたの?成瀬にいじめられた?」と桜木が笑いながら声をかけてきた。おそらく部活の昼練に行っていたのだろう。その帰りか。

 「なわけないだろ。大日向さんが地理の用意がないからそれでどうしようかってなってたところだよ」

 「知ってる。聞こえてたもん。ひなちゃん、教科書なら見せてあげれるよノートはある?」

 聞こえてたならなぜそんな冗談を言うのか。幼馴染のノリってやつなのか。ともあれ大日向は無事授業を受けることができたようだ。

「ところで、そのひなちゃんっていうのは大日向のことか?」

「うんそうだけど。大日向さんってちょっと呼びにくかったから本人に許可もらったの」

大日向を見ると笑顔でそう頷いていた。というかあだ名って許可をもらうものなのか。まあ本名とだいぶ違うし許可というよりは本人が気になるからそう呼んでもいいか確認したんだろう。


 放課後

 俺はそのままバイトに向かうことにした。近くのファミレスなので学校から向かった方が早い。帰る時、菊池に昼休みのことをいろいろ聞かれ結局遅くなってしまったが、シフトにはまだ間に合う。

 「あっちぃ〜」思わず気の抜けた声が出る。夕方といえども日差しはまだ強く熱気がすごかった。

 ファミレスに向かっている最中、大日向の姿が見えた。

 まだ転校初日だからなのか一人だった。相変わらずキョロキョロしている。この町いろいろと複雑だから一人で帰るの大丈夫なのか?と思ったその時、成瀬は息が止まった。

 大日向が交差点を無視し横断歩道を渡ろうとしていた。父が交通事故を起こしたあの交差点で。

 車は通らなかったものの大日向がそんなやつだとは思ってなかったので少し見損なった。

 

翌日、成瀬は大日向のことを観察していた。観察といってもたいしたものではない。1日見ていた限り、大日向が昨日のようなことをするようなやつだとは思えなかった。しかし信号無視をするやつなんてこの世にいっぱいいるだろう。しかも東京からきたのだ。そう一人で納得していたとき成瀬はあることに気づいた。

 大日向の取っているノート、所々抜けているし赤い字で書かれているところが黒板と少しずれている。そこで成瀬はあることを思い出していた。

『色盲』

 それは、一種の視覚障害なのだが、健全な人と比べて目に見える色が変わったりするらしい。父も事故前その病気にかかっていた。

 成瀬は考えた。昨日黒板に書いてあった時間割変更、あれは『赤色』のチョークで書かれていた。昨日、大日向は『赤信号』を無視していた。色盲の人にとって症状は様々だが特に赤色が見えづらくなってしまうことが多いらしい。

もしかしたら大日向も?

 成瀬は一か八か聞いてみることにした。


放課後

大日向はまたあの交差点に来ていた。成瀬は声をかける。

「大日向!」

 大日向は振り返り疑問の目でこちらを見て来た。

「今帰りか?」

「うん。どうして?」

「いや、大日向に聞きたいことがあって」

「なに?」

学校とは違い大日向は、なにか関わっって欲しく無さそうなオーラがすごかった。だがここで引き返す訳にもいかないので単刀直入に答える。

「あの、さ・・・。大日向ってもしかして________」


 



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